PIVOT TALK BUSINESS
日産の救世主はホンダか?ファンドか?
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2024年12月14日

経営危機に陥っている日産。ゴーンの責任はどの程度大きいのか?現在の経営陣に改革はできるのか?今後、ホンダは日産を救済するのか?日産取材歴26年のジャーナリスト、井上久男氏に聞いた。
日産の厳しい現状と再生への道筋|再建には「外部からの力」が不可欠か
日産自動車が厳しい経営状況に直面している。主要市場である日本、北米、中国で販売が落ち込み、9,000人規模のリストラ計画も発表された。この状況を打破するためには何が必要なのか。業界に精通する井上久男氏に聞いた。

Q. 日産の現在の経営状況はどうなっていますか?
日産は「日産アーク」という中期計画で日本、北米、中国を主要市場と位置づけていますが、これらの市場で軒並み販売が落ち込んでいます。2026年度までの3年間で100万台の販売増加計画も取り下げる状況です。北米ではインセンティブをつけた安売りでブランド価値が低下し、中国でも外資メーカー全体の苦戦の中で特に販売が落ちています。
Q. 今回発表された9,000人規模のリストラや生産・開発日数短縮などの改革で回復は可能ですか?
実行可能性自体が疑わしいと言わざるを得ません。生産能力削減について、「工場閉鎖はしない」と説明していますが、ラインスピードの変更や2ラインを1ラインにするだけで本当に能力縮小とコスト削減ができるのか疑問です。
過去の「23ネクスト」という構造改革ではスペイン工場やインドネシア工場を閉鎖しましたが、今回はそこまでの踏み込みがありません。2000億円から3000億円の固定費削減も計画していますが、販売台数が落ちている状況では台数あたりの固定費削減は非常に厳しいでしょう。
Q. 本格的な再生のためには何が必要だと考えますか?
国内外で工場閉鎖も含めた大胆なリストラが必要です。国内で1つ、アメリカでも1つ程度の工場閉鎖を行い、グループ全体に危機感を醸成し、痛みを乗り越えて反転する意識を作らなければ本当の反転は難しいでしょう。
また、経営体制の刷新も重要です。社長以下の経営陣を変えて、ドラスティックな改革ができる体制にする必要があります。最近の人事変更はCFOやアメリカ責任者の交代程度で、あまり大きな変化とは言えません。
Q. 内田社長体制での改革断行と復活は可能でしょうか?
現状では難しいと見ています。日産の最高意思決定機関である経営会議(12人のメンバー)を入れ替え、40代の若手で能力の高い人材を積極的に登用すべきです。
ゴーン氏が実施したリヴァイバルプランでは、クロスファンクショナルチームの責任者に40代の若手を抜擢し、従来のやり方にこだわっていた幹部や部長クラスを一掃しました。自分の人生と日産を重ねられるような人材に改革チームのパイロットを任せる手法は今でも学ぶべき点があります。
Q. 日産の再建に向けた今後のシナリオはどう考えられますか?
まず、指名委員会が現状の再生計画の進捗を見て、「これでは無理だ」と判断した場合、社長交代の議論が起こる可能性があります。今年12月から来年2月の第3四半期決算が出る頃に、この議論が活発化し、4月以降に新体制へ移行する可能性が高まっています。
手元のキャッシュは半年で約4000億円のフリーキャッシュフローのマイナスとなっており、ネットキャッシュが1兆数千億円あるとはいえ、このままでは長くは持ちません。
Q. ホンダとの協業はどのような意味を持つのでしょうか?
8月に日産とホンダがEVに関する協同開発・生産を発表しましたが、これは非常に重要な意味を持っています。取材によると、ホンダは将来的に日産へ出資し、日産が保有する三菱自動車の株も取得して、日産・三菱・ホンダの連合を形成する構想もあったとされています。
この3社が連携すれば年間600〜700万台規模の生産となり、次世代車のソフトウェア開発コストや部品の共同生産・開発面でも大きなメリットがあります。製品ポートフォリオでも補完関係があり、三菱のプラグインハイブリッド技術や日産・三菱のピックアップトラックなどをホンダが活用できる可能性もあります。
Q. なぜホンダは日産への出資に躊躇しているのでしょうか?
日産の業績悪化と内田体制への不安から、ホンダとしてはさらに踏み込んだ関係に進むことに躊躇しています。ホンダ自身が大規模なリストラの経験がなく、そのような厳しい構造改革を行った経験値がないため、現状の日産をうまくコントロールできるか不安があると考えられます。
Q. 日産再建のベストシナリオはどのようなものでしょうか?
4月頃までに新経営陣が就任し、実行力が認められた上で、ホンダが出資に参加するというシナリオが日本経済にとっても最善でしょう。
しかし、それ以外にも経済安全保障の観点から問題のない第三の外資が現れ、かつてのルノーとゴーン氏のような役割を果たし、ある程度立て直した後に日産・ホンダ・三菱の連合に参加するというシナリオも考えられます。
また、アクティビストファンドが日産株を取得し始めており、PE(プライベートエクイティ)ファンドによる買収の可能性も出てきています。日産の時価総額は1兆5000億円を切っており、51%の株式を取得するのに7000数百億円程度で可能なため、PE目線では「美味しい存在」と見られている可能性があります。
Q. 日本企業の再建に「外部からの力」が必要な理由は何でしょうか?
日本は歴史的に見ても外からの力がないと変わりにくい傾向があります。これは令和の時代になっても引きずっている国民性と言えるでしょう。
1999年にルノーから派遣されたカルロス・ゴーン氏は「マッカーサー」に例えられることもあり、外部からの改革者として大きな役割を果たしました。今後も日産のような事例が増え、アメリカのファンドが入って改革し、その後日本企業に戻すというモデルが広がる可能性があります。