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製品責任者は「人柄」「ロジック」「情熱」で信頼を勝ち取れ
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2024年12月11日

米マイクロソフトやGoogleで活躍した及川卓也氏。経営者の伴走をしていく中で日本の経営者が持つべき視点を具体的な打ち手とともに解説する。
経営者に信頼されるプロダクトマネージャーになるには?- 及川卓也氏が語る成功の鍵
プロダクトマネージャーが経営者から信頼を得るために必要なものは何か?米マイクロソフトやGoogleで活躍した及川卓也氏が、日本のプロダクトマネージャーに向けて「乱暴さ」の重要性や信頼構築の方法について語りました。

Q. プロダクトマネージャーに最も必要なものは何ですか?
信頼です。プロダクトマネージャーはプロダクトを作り育てる役割を担いますが、これは一人ではできません。必然的にプロダクトチームという組織を率いることになります。しかし、プロダクトマネージャーはチームの各メンバー(エンジニア、デザイナー、マーケティング担当者など)の上司ではないのです。人事上の上下関係がない状態で人を引き入れていく必要があります。
また、プロダクトチームだけでなく社内外のステークホルダーも巻き込む必要があります。そこで必要になるのが「信頼」です。プロダクトマネージャー界では「信頼貯金」や「信頼残高」という言葉があり、いかに自分が信頼を勝ち得ておくかが重要です。
この信頼の構築方法はいくつかあります。例えば、前職での実績によるクレディビリティがある場合もあれば、新しい環境で徐々に信頼を築いていく場合もあります。会議での発言一つや、誰もやれない仕事をしっかりと見つけてこなすことでも信頼は得られます。
Q. 信頼以外に必要なスキルはありますか?
アリストテレスが説得に必要な要素として挙げた「エトス」「ロゴス」「パトス」が参考になります。「エトス」は信頼、「ロゴス」はロジック、「パトス」はパッションです。
ロジックについては、例えば「このプロダクトはこれだけのマーケット価値がある」「現状マーケットはこのサイズだが、将来はここまで拡大する可能性がある」「市場占有率をこれだけ取れれば、最終的にはこれだけの売上が見込める」といった論理的な説明ができることが重要です。
もう一つのパッションは、自分たちが社会に対して何をしたいのか、人々の生活や働き方をどう変えたいのかを自分事として語れることです。それを人を巻き込むだけの力があるかどうかが大切です。
経営者との関係においては、時に「親分たらし」のような能力も必要です。つまり、相手に「この人の話を聞いてみよう」と思わせ、惹きつける能力です。これはソフトスキルの一部で、いかに自分の意思を相手に伝え、説得するかという能力が必要です。
Q. プロダクトマネージャーのスタイルには決まったものがあるのでしょうか?
一概には言えません。優秀なプロダクトマネージャーでも、ある企業ではうまくいっても別の企業ではうまくいかないことはあります。企業によって必要とされるプロダクトマネージャー像は異なるので、相性が重要です。本人の努力よりも、元々合っている会社に入ることが大切な場合もあります。
例えば、私が経験したマイクロソフトとGoogleは全く異なる文化を持っていました。当時のマイクロソフトは極めてトップダウンの会社で、戦略などは決まっていて、それをいかに実行するかが重視されていました。一方、Googleは当時まだカオス的な環境で、その中で物事をまとめていく能力が必要でした。
マイクロソフトでは指示に対して最大の成果を出せば評価されましたが、Googleでは「何をやればいいか」を誰も教えてくれません。ですから、会社の文化や段階によって求められるプロダクトマネージャー像は変わってきます。
Q. 日本のプロダクトマネージャーに特に必要なものはありますか?
プロダクトマネージャーとしてのスキル面では、日本人は非常に勉強家なので海外に引けを取ることはほとんどありません。書籍も読み、様々なオンラインコンテンツやビデオも見て学習しています。
一方で、まだ足りないと感じるのは「乱暴さ」です。もっと「はちゃめちゃ」にやってもいいのです。失敗してもたいしたことはないので、どんどん失敗してもいいし、少し壊すくらいのことをやってもいい。しかし、日本のプロダクトマネージャーは「お行儀がいい」傾向があります。
また、大企業でプロダクトマネージャーという形で配置されている人の多くは、実際には「プロジェクトマネージャー」的な役割をしています。プロジェクトマネージャーとプロダクトマネージャーの大きな違いは、プロジェクトマネージャーはやることが決まっていて、それをしっかりとやり遂げることが仕事である点です。予算内で、一定の品質で、決められたスケジュールで作ることが求められます。
大企業のプロダクトマネージャーに「何が忙しいですか?」と聞くと「調整です」と答えることが多いのですが、これは問題です。スケジュール調整は「調整」かもしれませんが、本来は「説得」であり「交渉」であり「提案」です。「調整」という言葉を使った瞬間に、そこに意思が感じられなくなります。

プロダクトマネージャーはプロダクトに対する意思決定をする際、それは自分の意思になっていなければなりません。会社や上司の事情で決めることはあっても、「上司が言ったから」ではなく、「自分がプロダクトマネージャーとしてこの条件・制約においてこれをするべきだと思った」という自分の意思であるべきです。
Q. プロダクトマネージャーは「ミニCEO」と言われることがありますが、本当にそうなのでしょうか?
ミニCEOという表現はよく使われますが、厳密には違います。CEOは全ての社員のトップで、人事権を握り、組織構成も自分で決められ、予算も最終的に決定します。プロダクトマネージャーにはそのような権限がありません。
ただ、私はあえて「ミニCEO的」であって欲しいと思います。特に、大企業のCEOではなく、創業間もないスタートアップの創業者のようであって欲しい。スタートアップの創業者は、最初は自己資金や友人からの出資で運転資金を確保し、うまくいけばシードラウンドでファンディングを受けます。これは他人のお金を使うという大きな責任と覚悟が必要です。
サラリーマンのプロダクトマネージャーには、このような「お金を使う覚悟」が足りないことがあります。「これに対していくらの予算をつけてください。もしかしたら大損害を与えるかもしれませんが、うまくいったらこうなります」と掛け合えるような人が少ない。与えられたコストの中でどうにかしようとしがちです。
また、創業者は人の命(キャリア)を左右します。「一緒にやろう」と誘って3年後に失敗したら、その人の3年間を無駄にしてしまうことになります。そういう覚悟を持って進めていくのです。プロダクトチームを率いる場合も同じことが言えます。
これからのプロダクトマネージャーには、スタートアップの創業者のような、自分の人生をかけてでもやり遂げようという気概を持って欲しいと思います。
Q. リモートワークとリアルな対面、どちらがプロダクトマネージャーには適していますか?
フルリモートに振り切っている会社は日本でも海外でもありますが、それらの会社は徹底した文書化やテキストコミュニケーションを行い、定期的な対面ミーティングも取り入れています。
プロダクトマネージャーとしては、対面で会う機会は絶対にあった方がいいです。人と人が知り合う時に、ビデオだけでは十分ではありません。商談でも、可能ならば直接会った方が、自分のことを知ってもらえますし、相手のことも理解できます。
例えばGoogle時代、ビデオ会議では「絶対にカメラをオフにするな」と言われていました。顔を出して自分がそこにいることを示し、発言することが求められました。自分の存在を理解してもらうには、顔を見せて記憶してもらい、自分がどんな人間かを分かってもらう必要があります。これはビデオ越しでは限界があります。
チームビルディングもオンラインでできないとは言いませんが、対面の方が効果的だと思います。