PIVOT TALK TECH
自社製品のデモができない経営者は勝てない
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2024年12月11日

米マイクロソフトやGoogleで活躍した及川卓也氏。経営者の伴走をしていく中で日本の経営者が持つべき視点を具体的な打ち手とともに解説する。 <ゲスト> 及川卓也|プロダクトマネージャー マイクロソフトやグーグルでさまざまなプロダクト開発を指揮。 その後、スタートアップを経て独立。2019年1月、T...
プロダクト開発で経営者はどのように関わるべきか?及川卓也氏が語る成功の秘訣
全ての企業はテクノロジー企業になるべき時代に、経営者はプロダクト開発にどう関わるべきか。プロダクトマネジメントの第一人者が語る、デジタル時代の経営者の役割とは。

Q. なぜ今、経営者のプロダクト開発への関与が重要なのでしょうか?
今や全ての企業がテクノロジー企業になるべき時代です。テクノロジーはただ活用するだけでなく、社会に貢献し企業に利益をもたらす形で使われるべきで、それがプロダクトという形になるべきです。
経営者は何よりもまず、自社がプロダクトカンパニーであり、DXが事業推進の核であることを理解する必要があります。また、デジタルに関わるコストは単なる出費ではなく投資だという認識を持つことが重要です。

Q. 日本企業の経営者に足りていない点は何でしょうか?
日本の経営者で自社のデジタルプロダクトについて適切な説明とデモができる人はほとんどいません。海外の経営者、例えばマイクロソフトのサティア・ナデラCEOなどは自社のプロダクトを完璧に語れますが、日本ではそのレベルに達している経営者が非常に少ないのが現状です。
食品メーカーなら新商品の試食会に経営者が参加するのは当たり前なのに、なぜかデジタルプロダクトになると自分事として扱わなくなる傾向があります。この姿勢は改める必要があります。
Q. 経営者はどこまでプロダクト開発に関わるべきですか?
規模や業種にかかわらず、経営者は自社のプロダクトをデモできるレベルになるべきです。これは自分でプロダクトを使っているかどうかという点に関わります。自分で使ったこともない、触ったこともないものを顧客に売るのは避けるべきです。
プロダクトへの理解と愛着がないと、部下に全て任せてしまい、プロダクトの本質的な価値を見失う可能性があります。トップが踏み込まないと組織文化も変わりません。

Q. デジタル人材の配置について、どのような構造が効果的ですか?
CDO(Chief Digital Officer)やCTO(Chief Technology Officer)といった役職を設けている企業が増えていますが、単に配置するだけでは不十分です。成功している企業は、経営者自身がデジタルの重要性を理解した上で人材を招き、適切な組織体制を構築しています。
理想的にはプロダクトのトップであるCPO(Chief Product Officer)相当の人材が役員に入ることで、プロダクト視点での経営判断が可能になります。ただし、CPOという名称よりもCDOの方が日本企業では受け入れられやすい場合もあります。
Q. 社内のデジタル人材と外部コンサルタントの使い分けはどうすべきですか?
基本的には内製化率を上げていくべきですが、全てを内製化する必要はありません。やるべきところとやらないべきところを見極めることが重要です。
例えば銀行のコアシステムのように一度作ったら簡単に変える必要がない部分は外部に任せても構いませんが、スマホアプリなど顧客体験に直結する部分は自社で作っていくべきでしょう。この判断は、デジタルリテラシーのある経営者やCDO/CTOが行う必要があります。
Q. 日本のSIer業界はどのように変わるべきでしょうか?
SIer業界の問題点は、単に受注金額を増やすことだけを考える傾向があることです。クライアントが素人だからといって不要な機能を提案して売り上げを増やすのではなく、クライアントが本当に成功するためのパートナーになるべきです。
さらに、日本国内での競争だけでなく、グローバルレベルの高品質なソリューションを提供し、日本全体のITリテラシーを高める役割を担うべきです。また、地球温暖化などの社会課題解決にも目を向けた高い志を持つことが必要です。
Q. 日本企業がDXを成功させるために何が必要ですか?
DXの本質は自走する組織を目指すことです。従来型のSIerモデル(作って納めて終わり)ではなく、レベニューシェアモデルなど、プロダクトが成功するまで伴走する新しいビジネスモデルへの転換が必要です。
日立製作所やパナソニックなど、プラットフォーム化を進めている企業もありますが、まだまだ少数派です。単に売り切って終わりではなく、売った後も責任を持って育てていくビジネスモデルへの転換が求められています。
Q. プロダクトマネジメントの役割が日本でうまく理解されていない理由は?
日本では「プロダクト」という言葉自体が誤解を生んでいます。「プロダクト」というと物理的な製品と考えられがちで、「うちの会社には関係ない」と思われることがあります。
そのため、IPAでは「ビジネスアーキテクト」という名称を使用しています。最初は馴染みのある言葉で入り口を広げ、その後プロダクトマネジメントの本質を理解してもらうアプローチが有効です。
Q. 経営者に欠けている「挑戦する精神」をどう取り戻せばよいでしょうか?
多くの経営者、特に大企業のトップは挑戦する精神を失っているように見えます。これは単にオーナー企業かサラリーマン社長かの違いではなく、「人間として何を成し遂げたいか」という志の問題です。
ソニーのように、オーナー企業でなくても業態を変えながら進化し続けている企業もあります。重要なのは、挑戦して成功したときの個人的な喜びや達成感を思い出すことです。多くの経営者はそうした成功体験が薄れ、挑戦することの楽しさを忘れています。

Q. プロダクト開発で心理的安全性はなぜ重要ですか?
心理的安全性が高い組織は表面的には喧嘩しているように見えることもありますが、それは本音で議論できている証拠です。自分の弱みをさらけ出してでも議論できる環境があってこそ、最高のプロダクトが生まれます。
フラストレーションを感じることもありますが、その結果素晴らしいものを作り出し、世の中から認められたときの喜びは大きいものです。こうした経験を組織全体で共有することで、真のイノベーションが生まれます。