PIVOT TALK BUSINESS
電動キックボードをどうPRすべきか?
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2024年12月4日

PRの仕事とは何か?PRの5原則とは何か?ダメPRパーソンとイケてるPRパーソンの違いは何か?ケーススタディと合わせ、新しいPRの技術を、博報堂執行役員で博報堂ケトル創業者の嶋浩一郎氏に語ってもらった。
PRの本質は「共通点の探索」と「多様性の尊重」——嶋浩一郎が語る新しい当たり前の作り方
Q. SNSで極論や分断が増えている現状をどう考えますか?
昨今のSNSでは極論が増え、分断も進んでいます。コメント欄では罵り合いも多く見られます。このような状況の中、直接対話することで妥協点や理解が生まれやすくなります。PRパーソンの役割は、「ここに共通点がありますね」という発想で入ることです。
全ての分断が解決するわけではありませんが、この差別化の視点が重要です。例えば新商品の発表では「今までにない体験です」という差別化も大切ですが、同時に「社会にこう役立ちます」というPR的発想も必要です。複数の回路を回していくことが求められています。

Q. 日本のスタートアップのPR状況についてどう思いますか?
メジャーになったスタートアップの経営者たちはセルフプロデュースが上手で、メディアに取り上げられたり様々なコラボレーションパートナーを見つけたりするPRセンスを持っています。しかし、多くの企業は自社商品やサービスの特徴だけを語りがちです。
私が新著の帯に「市場の私を語るより社会の私を語る」と書いたのは、多くの企業が市場内での差別化ばかりに注力しているからです。最終的には誰かに選ばれる必要があるため、商品スペックの違いを伝えることは重要ですが、それだけでは不十分です。
Q. PRと広告マーケティングの違いは何ですか?
例えばサイボウズのサービスを「便利です」と言うだけでは広く知られません。しかし「働き方改革に寄与します」と社会視点で説明すると、応援する人が増えます。働く人も労働時間が減るなら導入を望み、労働組合も応援し、メディアも取り上げたくなります。
企業がどんなシステムを使っているかは記事になりにくいですが、働き方改革のための取り組みは記事になりやすいのです。行政も応援してくれるなど、社会視点で説明すると応援者が増えます。スタートアップの経営者が市場での差別化と社会的役割の両方を語れると、大きな力になります。

Q. ニュースピックスの立ち上げではどのような視点があったのでしょうか?
ニュースピックスは単なる「新しいニュースサイト」という市場における差別化だけでなく、「日本のビジネスマンをアップデートする」という社会における役割も語りました。これにより応援者が増えたのです。日本のサラリーマンや経営者を、ダボス会議に参加するような海外の経営者のように格好良くしたい—そういう思いに共感する人が増えました。

Q. 攻撃的なマーケティングと共感を得るPRのバランスはどうあるべきですか?
新しい当たり前は既存の当たり前を破壊していくので、「ここが新しい」と言うことも大切です。しかし同時に「ここで皆さん共通の利害関係が結べますよね」と手を握る作業も進める必要があります。
良い経営者は、この相反する両方のアプローチを同時に実行できます。尖りを完全になくす必要はなく、尖りを持ちつつ手を握る大人の部分も持つ「二刀流」になることが重要です。
Q. イーロン・マスクのPRについてどう評価しますか?
イーロン・マスクはマーケティングをしないことで有名ですが、ソーシャルメディアを活用して多くの人を味方につけています。一方で敵も多いですが、PRにおいては全員が味方になることはありえません。PRはロンパのようなものではなく、反対派の存在を前提とした考え方です。
アメリカでPRが発展したのは、異なる背景を持つ人々が合意形成する必要があったからです。「ここなら一緒にできる」という共通点を見つける文化がPRを育てました。現在、ソーシャルメディアで価値観の分断が進む中、PRパーソンの役割が増しています。全員が同じになる必要はなく、部分的に手が握れる点を探すのがPRパーソンの仕事です。
Q. 電動キックボードのような賛否が分かれるサービスはどうPRすべきですか?
全ての新技術に最初は反対する人が現れます。大切なのは対話を続け、改善策を実行し続けることです。「やりました、終わり」ということはなく、常に新しい問題が起き、価値観やテクノロジーも進化していきます。賛成だった人が反対に回る可能性もあるため、関係性は常に流動的です。
反対派との対話を続け、対応を考え続け、できる限りの最善を尽くすことが大切です。例えば公共交通機関のない地域での観光促進や駅前の駐輪問題解決など、サービスが社会にもたらす可能性を考え、伝えていくことがPRの役割です。

Q. 社会視点を持ち続けるために心がけるべきことは何ですか?
日々のビジネスでは市場のことばかり考えがちですが、毎日見るニュースと自社商品の関係を考える習慣をつけると良いでしょう。例えば「京都がオーバーツーリズムで大変」というニュースを見たら、地方自治体の職員として「修学旅行は我が地域に来てほしい」と考えるなど、ニュースと自社商品を結びつける思考訓練が有効です。
自分のアルゴリズムで紐付けられていない、少し遠い分野のニュースにも目を向けることも大切です。また、本を読んだり本屋に通ったりすることも視野を広げるのに役立ちます。日々トレーニングすることで、社会視点を持ち続けることができるでしょう。