PIVOT TALK BUSINESS
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2024年12月3日

労働人口の減少もあり、市場が急成長している採用ビジネス。今後、AIの進化などにより、業界の競争構図はどう変わるのか?勝者と敗者は誰か?『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』の著者である黒田真行氏に、2030年までの採用ビジネスを予測してもらった。 <ゲスト> 黒田真行|転職コンサルタン...
人材業界が大きく変わりつつある。かつては企業が人を選ぶ時代だったが、今後は「人に選ばれる企業」だけが採用できる時代に移行する。この大きな変化の中で、人材ビジネスの生態系はどう変わり、個人のキャリア選択はどう影響を受けるのか。人材業界に精通する黒田真行氏に聞いた。

1990年代までは紙媒体の求人広告が中心でした。新聞の折り込み広告や求人情報誌など、いわゆる「紙メディア」が主流でした。90年代後半からインターネットの普及により、大きな変化が起きました。最も重要だったのは、求職者のキャ
リア情報や行動履歴がデジタル化され可視化されたことです。
紙の時代には誰が情報を見ているのか分からず、応募があって初めて「こんな人が見ていたのか」と分かる状態でした。それが、どんな求人を閲覧しているか、どんな求人に応募したかという行動履歴まで分かるようになりました。水中が見えない状態で漁をしていた時代から、完全に水中が可視化された時代へと変わったのです。
また1999年には人材派遣や人材紹介業界の規制緩和が行われ、マーケットが一気に拡大しました。それまでは求人広告一択だったものが、人材紹介や人材派遣など選択肢が増え、業界の多様化と市場規模の拡大が進みました。

2010年代からはビズリーチに代表されるような、求職者データベースをベースにしたスカウト型のプラットフォームビジネスが、特に正社員領域で伸びてきました。また2010年代前半はビッグデータという言葉が登場し、データサイエンスを活用したマッチングが徐々に出始めました。
そして直近では生成AIの登場により、マッチングのスピードと質と量が一気に加速し始めています。テクノロジーの進化により、求人広告と人材紹介の境界線がどんどん曖昧になってきています。
また、テクノロジーの潮流は基本的にアメリカから日本に入ってきますが、以前は10年遅れだったものが今は2〜3年遅れまで短縮されています。マーケティング領域の技術がどんどん求人領域に入り込んできており、HRを支えるテクノロジーの進化が急速に進んでいます。
2030年に向けて、いくつかの大きな変化が予測されます。まず、検索エンジンとATS(応募者管理システム)の組み合わせがさらに発展します。ATSは企業側の求人発信装置であり、候補者を一括管理するシステムです。これまで各求人サイトごとに管理画面があり、企業の人事担当者は大変でしたが、ATSによって一括管理できるようになってきています。
また、従来の掲載課金型の求人広告メディアは2030年にはほぼなくなり、クリック課金型のモデルに移行すると考えられます。アルバイト・パート領域では、タイミーのようなスポットワークマッチングサービスがさらに拡大するでしょう。タイミーの革新的な点は、履歴書や面接なしで、労働力を即座に換金できるシステムを構築したことです。
正社員領域では、ダイレクトリクルーティングの領域が拡大します。ただし、このモデルも2030年頃には限界が見えてくるでしょう。なぜなら、現在のスカウトモデルは企業側目線で送りたい人に連絡するというものですが、労働力が減少し売り手市場になると、企業が人を選ぶサービスは適さなくなるからです。

はい、企業が人を選ぶ時代から、人に選ばれる企業だけが人を採用できる時代に変わっていきます。これは全てがひっくり返る大きな変化です。
将来的には、個人が望む仕事や企業をAIがレコメンドするようなサービスが増えていくでしょう。ただし、個人の希望と能力にはギャップがあることも多いため、AIは応募したい求人から徐々に決まりやすい求人へと調整していく役割を担うようになります。つまり、自分が納得した形で自然に現実的な選択肢に導かれるようなプロセスです。
これまでのスカウトモデルでは、企業側が候補者にメッセージを送る形でしたが、これが個人主導型に変わっていきます。このような変化により、マッチングの精度が上がり、無駄なやり取りが減少すると期待されます。

40代になると、マーケットからの見られ方が大きく変わります。30代までは即戦力のプレイヤーとして見られますが、40代になると「やがて経営を任せられる人なのか」という視点で見られるようになります。
理想的には35歳くらいで全員が一度キャリアの棚卸しをして、その後の方向性を決めるのが良いでしょう。今後はホワイトカラーの淘汰がさらに進み、一方でエッセンシャルワーカー(必要不可欠な現場労働者)の需要と報酬が上がっていく可能性があります。
日本には約150万社の企業(個人事業主を除く)があり、そのうち約半分は黒字企業と考えられますが、人材サービスを利用している企業は10万社にも満たないと推測されます。つまり、潜在的な求人需要はまだまだあるのです。
今後は単に顕在化した求人ニーズに対応するだけでなく、潜在的な雇用創出にどう貢献できるかが重要になります。また、就業可能人口と実際の就業人口にはまだ差があり、この差を埋めることも人材サービス業界の使命です。
新しいモデルとしては、企業が人を選ぶのではなく、「人に選ばれる企業になるためのサービス」が登場する可能性があります。これは単なる企業ブランディングではなく、企業の根本的な体質改善を支援するものです。
このような変化により、貴重な労働力が最も活かせる会社に送り込まれれば、労働力が減少する中でも生産性向上につながり、日本経済にとってもプラスになるでしょう。