PIVOT TALK BUSINESS
大統領選に見る、米国ネット広告最前線
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2024年12月2日

米国大統領選で投じられた広告費用はおよそ2兆円。中でも、ターゲットを絞ったネット広告の存在感が急拡大している。トランプはいかにネットマーケを駆使したのか?今、米国のネット広告市場で何が起きているのか?マクビーの千葉知裕社長に聞いた。
『米国大統領選に見る広告の未来』千葉智博氏に聞く
ネット広告市場が世界的に急成長を続ける中、政治の世界でもデジタルマーケティングの影響力が顕著になっている。今回は、成果報酬型広告で急成長中のマグビー社長・千葉智博氏に、米国大統領選から見えるマーケティングの最前線と、広告業界の未来について話を聞いた。

Q. トランプはマーケティングで勝ったと評価しているそうですが、その理由は?
トランプ陣営は的確なターゲティングを行い、伝えたいメッセージを明確に届けることに成功した。ハリス陣営より少ない広告費で効果的な戦略を展開した点が特筆される。トランプはSNSを活用し、これまで富裕層やホワイトワーカー向けだっ
た政策発信を、ブルーワーカーも含めた幅広い層に拡大した。彼らを保護する政策をしっかり伝えたことが勝因の一つだ。
対照的に、ハリス陣営は多くの資金を集めたものの、ターゲティングが広く浅くなり、特に低所得者層をしっかり掴みきれなかった。本来であればハリス優勢であった局面を、トランプのマーケティング戦略が覆したと言える。

Q. トランプ陣営とハリス陣営でなぜそれほどスキルに差があったのでしょうか?
トランプ陣営は前回の敗北から学び、誰にどのようなメッセージを伝えれば効果的かを熟知していた。また、トランプ自身がSNS企業を経営しており、デジタルマーケティングへの理解が深い。拮抗した世論調査の中で、メッセージングの強さが際立っていた。
構図としては、ハリス陣営が伝統的メディアやリベラル系のCNNなどに支持される一方、トランプはSNSやポッドキャストを徹底的に活用し、Xの総帥イーロン・マスクとも連携した。これは兵庫県知事選にも似た状況が見られ、従来型のメディア戦略より新しいデジタル発信が世論を動かす力を持つことを示している。
Q. アメリカでは選挙におけるマーケティング費用に規制はないのですか?
日本と比較するとはるかに緩やかで、献金額がそのまま広告費に反映される傾向がある。献金と政治、テクノロジーと政治が一体化した資本主義社会の側面がアメリカの選挙から見えてくる。このようなマーケティング戦略の重要性は今後さらに加速していくだろう。

Q. SNSの中でどのプラットフォームが最も効果的だったのでしょうか?
動画コンテンツの影響力が非常に強く、特にYouTubeやXが大きな影響力を持った。情報収集の起点がSNSになっており、ユーザーはXなどからスタートして情報を取得し、そこから他のメディアへ移動するパターンが増えている。
TikTokも使われたが、XやYouTubeの使用度合いの方がはるかに高かった。目的によって使い分けられており、短編で物事を伝えるならTikTok、政治や心情など核心に迫った内容ならYouTubeというように、プラットフォームごとの特性を活かした戦略が展開されている。
Q. 米国で起きていることは日本の何年先を行っているのでしょうか?
一般的には10年先と言われるが、XなどのSNS浸透度については日本も遅れていない分野もある。政治におけるデジタルマーケティングの活用は、今後の参院選などでさらに顕著になるだろう。候補者が街頭演説よりもSNS発信に力を入れる「ネットドブ板選挙」が主流になりつつある。
これにより、情報発信の鮮明さとターゲティングの精度が選挙の鍵となり、デジタルリテラシーの高い政治家や変化に対応できる人材が勝ち上がりやすくなる。また、情報が拡散されるスピードも格段に上がり、その場にいた人がリアルタイムでSNSに投稿することで、情報のリードタイムが極めて短くなっている。
Q. AIはこの流れをどう変えていくのでしょうか?
ジェネレーティブAIの中にマーケティング要素が含まれるようになると予測される。現在のAI検索はデータベースの情報のみを提供しているが、今後はAIが提供する情報自体にマーケティング要素が組み込まれる可能性がある。かつてのSEO(検索エンジン最適化)のように、AIの裏側にマーケティング要素が入り込む形になるだろう。
Q. 世界のネット広告市場はどのように変化していますか?
デジタル広告は2022年に3944億ドルに達し、前年比14%増加。広告費全体に占める割合も約55%となり、マス媒体からデジタルへのシフトが進んでいる。今後もデジタル広告は2桁成長を続け、世界の広告費全体も1兆ドルを超え、デジタル広告の割合は70%近くまで高まると予測される。
テレビ広告は減少せず現状維持の傾向があり、一般認知を獲得する手段として依然として重要な役割を果たしている。一方で雑誌など従来型のターゲティングメディアはデジタルに置き換わりつつある。
Q. 広告は本当に成長ビジネスなのでしょうか?
広告は継続的に成長するビジネスである。先進国だけでなく、中国を含むアジア諸国、東南アジア、アフリカなど、これまでデジタル広告があまり浸透していなかった地域でも急速に広がっている。経済発展とデジタル化の進展に伴い、自然と広告市場も拡大している。

Q. どのようなデジタル広告が今後成長するのでしょうか?
検索広告(サーチアドバタイジング)は引き続き重要だが、主要キーワードの広告単価が上昇しており、費用対効果が課題になっている。企業によっては成果報酬型広告へのシフトが進んでいる。また、AIの進化により検索の形態が変わり、Google検索からチャットGPTなどのジェネレーティブAIによる検索へと移行していく。
特に成長が著しいのが動画広告で、YouTube、TikTokなどのプラットフォームでの広告出稿が増加している。バナー広告も一定のシェアを維持する一方、インフルエンサーマーケティングが徐々に拡大している。特に、検索×インフルエンサーや動画×インフルエンサーといった掛け合わせの戦略が効果的になっている。
Q. インフルエンサーの定義も変わっていくのでしょうか?
今後のインフルエンサーは従来のYouTuberやアイドル的な存在だけでなく、権威ある専門家が自分の見解を述べる形へと変化していく。大学教授など各分野の権威が「これは優れた商品だ」と評価することで消費者の行動を促す形態が増えるだろう。
日本では芸能人=インフルエンサーというイメージがあったが、今後は専門家を含む多様な領域のインフルエンサーが広告に活用される事例が激増すると予測される。単なる認知獲得から、信頼できる人物の推薦による購買意欲喚起へとマーケティングの流れが変わっていく。
Q. 将来的に最も成長する広告形態は何でしょうか?
動画広告と成果報酬型広告の組み合わせが最も有望だ。SNSの広告の多くが動画形式に移行しており、動画コンテンツの訴求力が際立っている。同時に、明確な成果にフォーカスした広告投資がますます重要になっており、成果報酬型広告の市場は2030年に1兆円規模になる見込みがある。