企業超分析
【企業超分析:ニトリ】模倣イノベーション/ビジネスモデルと競争戦略
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2024年12月8日

人気の企業をよく知る専門家が、元社員と共に徹底分析していく「企業超分析」。就活に、転職に、さらに投資に役立つ情報をお届けする。「ニトリ」後編では、ビジネスモデルと競争戦略を解説。 <ゲスト> 永島寛之 ニトリ出身 / トイトイ合同会社 代表 井上達彦 早稲田大学商学学術院 教授 大澤陽樹 Open...
ニトリが"模倣の達人"である秘密 - 飽くなき改善への情熱が生み出す独自のビジネスモデル
模倣することで他社が真似できない仕組みを構築する—これがニトリの強さの源泉だ。「お、値段以上。」のキャッチフレーズで知られる企業は、どのようにして日本最大の家具チェーンへと成長したのか。その独自のビジネスモデルと模倣イノベーションの真髄に迫る。


Q. ニトリは一言で言うとどのような会社?
ニトリは「模倣の達人」である。これは一見するとビジネスモデルに関係ないように思えるかもしれないが、世界レベルでもトップクラスの模倣力を持つ企業だ。創業者自身が「模倣はいいだろ、最高だろ」と誇らしげに語るほど、模倣を積極的に取り入れている。多くの経営者が自社のオリジナリティを強調する中、ニトリは「イノベーションで模倣でないものはない」「発明は模倣の集積だ」という哲学を持っている。

Q. ニトリが模倣したビジネスモデルの原型は何?
ニトリのビジネスモデルの原型は主に3つある。まず「ペガサスクラブ」というチェーンストアオペレーションを学ぶ研究会からの学び。日本の小売り流通業界の巨人たちが数店舗しかない時代から通っていた「塾」のような存在だ。次に品質管理の手法。そして最も重要なのが、アメリカで見た「トータルコーディネート」というコンセプト。これらがニトリのビジネスモデルの基礎となっている。
Q. トータルコーディネートとは具体的にどのようなもの?
トータルコーディネートとは、家具や雑貨など様々な商品の色やデザインを統一感を持たせて提案する方法だ。ニトリは世界中から商品を集めていても、色彩やデザインに一貫性を持たせることで顧客に部屋全体の豊かさを視覚的に伝えている。例えばバングラデシュからコップを、インドからタオルを調達しても、色が整っていることで統一感が生まれる。これにより顧客は「買うつもりがなかった商品も買ってしまう」という購買行動を示すことになる。
この概念は日本ではまだ浸透していなかった1973年、創業者が危機的状況の中でアメリカを訪れた際に出会ったものだ。多くの日本人が「日本の住宅事情では無理」と思う中、創業者はその裏側にある仕組みを必死に研究した。
Q. ニトリの競争力を支えるビジネスモデルの特徴は?
ニトリのビジネスモデルは多くの要素が組み合わさっている。商品のトータルコーディネート、チェーンストアオペレーション、品質管理、IT、物流など多方面にわたる。特筆すべきは、これらが単体で強いだけでなく、「掛け算」「シナジー」として機能していることだ。この複合的な強さは「システム優位」と呼ばれ、一部分だけを真似ることはできても全体を真似ることは極めて困難である。
例えば物流においては、ユニクロなどと違い家具は大きいため、SPAモデル(製造小売業)を実践する上で「分解設計」などの工夫が必要となる。これらの個別の強みが全て調和して機能しているのがニトリの特徴だ。
Q. なぜニトリは全ての機能を自社で行うのか?
多くのビジネス理論では「コアコンピタンス(中核能力)」に集中し、非コア業務は外部にアウトソースすべきとされる。しかしニトリはほぼ全ての機能を垂直統合している。これは戦略的な選択だ。
集中特化型の戦略には、市場変動時に外部に委託した機能を変動費として調整できるメリットがある。一方、垂直統合型には異なる強みがある。コンビニチェーンのセイコーマートも農園まで管理する垂直統合を行っている例がある。
重要なのは、コアコンピタンスのみで戦うと、そこで負ければ全面敗北になること。異なる領域でも強みを持つことで、リスク分散になるのだ。ただしこの戦略は豊富なリソースがなければ実行できない。また、現在の労働力不足という時代背景も考慮すると、今から同様のモデルを構築することは難しいだろう。
Q. ニトリの出店戦略に特徴はある?
ニトリの出店戦略はウォルマートから大きなインスピレーションを受けている。ウォルマートのビジネスモデル自体はGMS(総合スーパー)として一般的だが、その出店戦略に独自性があった。それは「限られた小さな商圏に大型店を出して地域住民を囲い込む」というものだ。これにより2番手、3番手が参入するメリットがなくなり、参入障壁を築ける。
ニトリもこの戦略を応用し、沖縄や北海道東部などの小商圏を押さえつつ、大きな商圏では中心に拠点を置いて周辺を素早く固めるアプローチを取っている。「繁盛店ができてはいけない」という考え方で、繁盛店ができると顧客も買いづらく、店舗運営も大変になるため、周辺に分店を出して少しずつ商圏を小さくしていく。結果として、「生活圏内のどこを通ってもニトリがある」状態を作り出し、競合他社の立ち位置を奪っている。
Q. ニトリの商品管理はどのような特徴がある?
ニトリは「単品荒利管理」という手法で全ての商品に対して一律45%の粗利益率を設定している。一般的には商品企画から始まり、徐々に利益率が下がっていくが、ニトリでは品質と単価を先に決め、「980円ならこのレベルのものを作りたい」と決めてから世界中でそれを実現できるパートナーを探す。
また「定番にあぐらをかくな」という方針がある。定番商品こそ競合他社に狙われやすいため、常に進化させ続ける必要がある。そのため約1万種類の商品があり、毎年その半分が入れ替わる。これは商品部門の担当者にとって非常に忙しい業務サイクルとなるが、顧客の期待を上回り続けるために必要な取り組みである。

Q. 模倣イノベーションとは具体的に何か?
模倣イノベーションとは「遠い世界からの模倣」だ。同業他社の模倣では同質化し、追いつくことしかできない。しかし海外、異業種、過去のビジネスからヒントを得て、自分の業界で独自に再現することで新たな価値が生まれる。トヨタ自動車、任天堂、セブンイレブンといった革新的企業も必ずこのプロセスを経ている。
ニトリもまさにその典型だ。例えば自動車の品質管理手法を家具に応用している。家具は木材が伸縮するため品質管理が難しいが、自動車業界から人材を招き入れ、その手法を家具に適用した。
また模倣にも順序があるという。「山があって森があって木や枝や葉っぱがある」というように、表面的な製品やサービスではなく、まず経営理念やビジネスの根幹部分から学ぶべきだ。これはサムスンの会長も同様の考えを持っていたという。
Q. ニトリのビジネスモデルの継続性はあるか?
ニトリのビジネスモデルは創業者がいなくなっても継続すると考えられる。なぜなら「ビジョナリーカンパニー」の特徴を備えているからだ。ビジョナリーカンパニーとは、単に「正確な時間を言い当てる」(ヒット商品を生み出す)のではなく、「時計を作る」(仕組みを構築する)能力を持つ企業を指す。
ニトリには7年ルールなど様々な仕組みがあり、若手社員に聞いても同じ理念や考え方が浸透している。このような組織文化が構築されていることから、永続する仕掛けが整っていると言える。
Q. 模倣の積み重ねが生み出したものとは?
ニトリの独自のポジションは「圧倒的なコストパフォーマンスでホームファニシングを提供する」ことだ。これを「お、値段以上。」というバリュープロポジションで表現し、家具SPAという垂直統合型ビジネスモデルで実現している。
このシステムは1000店舗を超えるチェーンストア、自動車業界から学んだ品質管理、独自のIT資源、物流システムなど、多くの要素で支えられている。
最も興味深いのは、これらの「模倣困難な仕組み」自体が「模倣」から生まれたということだ。これを「模倣のパラドックス」と呼ぶ。同業他社からは模倣できない仕組みが、異業種の模倣によって構築された。つまり、模倣を積み重ねることで、逆に模倣できない独自の価値を生み出したのだ。