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日産は生き残れるのか?衰退の本質と今後の2つのシナリオ
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2024年11月30日

業績を大幅下方修正し、9000人のリストラも発表した日産。なぜ日産は経営危機に陥ったのか?ゴーン前とゴーン後で何が変わったのか?今後、日産は生き残れるのか?自動車ジャーナリストの川端由美氏に聞いた。 <ゲスト> 川端由美|自動車ジャーナリスト 住友電工にてエンジニアとして務めた後、二玄社『NAVI...
「日産は生き残れるか」自動車ジャーナリストに聞く厳しい現状と復活の可能性
日産自動車が大規模なリストラを発表し、9,000人の人員削減や生産能力の縮小など厳しい再建策に踏み切った。かつてカルロス・ゴーン氏のもとで復活を遂げた日産だが、今回の危機はどこまで深刻なのか。自動車ジャーナリストの川端由美氏に、日産の現状と再生の見通しについて聞いた。

Q. 日産の経営危機は予測できたものだったのか?
5年ほど前から、このまま進めば日産は厳しい状況になると考えていた。特に北米市場では、カルロス・ゴーン時代に台数を追うあまり、大幅な販売奨励金(実質的な値引き)に頼った販売戦略を続けていた。その金額は北米メーカー並みに大きかった。
米国ではリース契約が多く、3〜5年後に車が返却されると中古車価格が下落し、その後のリセールバリューも下がる。これがブランド力低下につながり、経営的に厳しい時期が来ることは予想できた。

Q. 今回の業績悪化の直接的な原因は何か?
直近の業績悪化の最大の原因は中国市場での販売不振だ。対前年比で13.1%減少しており、以前の予想(10.4%減)よりも状況は悪化している。
中国では国産EVの品質向上により、高級車市場でも国産車が受け入れられるようになった。その結果、外資系乗用車ブランドの販売が全体で20%も落ち込んでいる。日産はもともと中国で好調だったため、その反動も大きい。
Q. 日産が他の日本メーカーより中国市場で打撃を受けている理由は?
日産は中国市場で元々非常に好調だった。デザインが受け入れられ、中国向けの製品開発にも力を入れていた。中国の消費者に受ける技術も提供できていた。そのため、中国市場の変化の影響をより強く受けている。
一方で、ハイブリッド技術では遅れをとっていた。日産はEパワーのような簡便なハイブリッド化に特化していたが、2020年以降は環境規制が厳しくなり、強力なハイブリッド(ストロングハイブリッド)かEVでないと対応が難しくなった。
Q. 日産の経営状況はどれほど深刻か?
固定費、特に従業員数と生産設備の負担が大きい。自動車メーカーは生産設備を自社で持つ比率が高く、特に日産は自社工場の比率が高いため、固定費削減が容易ではない。
工場の稼働率が下がると利益が急激に落ち込む構造になっている。地域によってはブランド力が低下している市場もあり、収益確保が難しい状況だ。
Q. 日産固有の問題点は何か?
最大の問題は、適切なタイミングで市場のニーズに合った商品を投入できなかったことだ。ルノーとの複雑な関係の中で、意思決定が遅れるという問題があった。
技術力自体は高く、EVやコネクティッド技術など先進的な開発も行ってきたが、それを継続的に商品化し、ブランド力向上につなげることができなかった。
Q. 組織的な問題点はあるのか?
日産は縦割り組織が強いと言われるが、問題はそれだけではない。ルノーの組織構造が、休暇を前提とした横の連携システムを持っていたのに対し、日産はその仕組みなしに縦割りが導入された。
また、ゴーン体制後の組織再編も容易ではなかった。リーダーシップの移行期間に意思決定の疎通が難しくなり、部署間の連携が十分に機能しなかった。
さらに、外国人幹部の増加により、英語ができる人だけが出世するという状況も生まれ、日本語しかできなくても仕事ができる人材のモチベーション低下につながった。

Q. 日産の改革プランはどう評価できるか?
生産能力20%削減や固定費3,000億円削減などの改革案は、製造業として「身を切る」厳しい措置だ。単なる健康増進策のレベルを超え、手術に近い応急処置と言える。
特に生産設備縮小は製造業の利益源を削ることになるため大きな痛手だが、現状では避けられない選択だろう。ただし、商品ポートフォリオの見直しやホンダとのパートナーシップ活用など、攻めの改革も併せて必要だ。
Q. 開発期間の短縮はなぜ重要か?
日産は開発期間を30ヶ月短縮する計画だが、これは現状の開発期間が異常に長いことを示している。かつて自動車開発は5〜6年かかっていたが、現在は多くのメーカーが18ヶ月程度に短縮している。
中国のBYDグループなどは日本メーカーよりも短期間で開発しており、競争力維持のためにも開発期間短縮は不可欠だ。デジタル化の導入やAIの活用も含め、開発プロセスの抜本的改革が必要になる。
Q. ホンダとのパートナーシップにはどのような可能性があるか?
現段階では覚書(MOU)を締結したばかりで、具体的な協力関係はこれからだ。両社の社風は異なるものの、要素技術の交換などから始められる可能性がある。
例えば、日産がホンダからストロングハイブリッド技術を取り入れ、逆に日産のEV技術をホンダに提供するなど、双方の強みを活かした協力関係が考えられる。規模の経済を生かした共同開発も視野に入る。
Q. ルノーとの関係はどうあるべきか?
現状では、ルノーとのシナジー効果は限定的だ。技術面でも、ルノーは独自にストロングハイブリッドを開発しているし、ブランド面での相乗効果もあまりない。
意思決定をシンプルにするという観点からも、ルノーとの関係を見直し、日産の独自性を高める選択肢を検討すべき時期かもしれない。
Q. 日産が生き残るためのシナリオは?
最善のシナリオは、金融機関からの支援を受けながら財務基盤を安定させ、必要なリストラを実行しつつ、ハイブリッド車の開発やホンダとのパートナーシップを活かして新たな成長戦略を打ち出すことだ。
最悪のシナリオを避けるためには、キャッシュフロー管理を徹底し、在庫の適正化や生産設備の見直しなど、短期的な資金繰り対策が必要になる。自動車メーカーは一度立ち直れば急速に回復する可能性もある。GMは政府支援後わずか13ヶ月で借金を返済した例もある。
Q. 日産の再生を見極めるポイントは?
最も重要なのは「売れる車を出せるか」という点だ。単に車が売れるという結果だけでなく、売れる車を出せるような意思決定が経営陣を含めてできているかどうかが鍵となる。
また、日産のサプライヤーの動向も重要な指標となる。日産のサプライヤーがどのような技術や製品を展示会などで発表しているかは、1〜2年後の商品力に直結する。自動車メーカーにとって、最終的に商品力が全てを決める。