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将来の収入を上げるために子どもの頃にやっておくべきことBEST3
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2024年12月4日

「子育てスキル」を鍛えるためのノウハウを各分野のプロが伝授。 教育経済学者の中室牧子氏が最新のエビデンスを基に紹介。 <ゲスト> 中室牧子/教育経済学者 慶應義塾大学教授 慶應義塾大学卒業後、日本銀行等を経て、2010年にコロンビア大学でPh.D.。 2013年から慶應義塾大学総合政策学部准教授。...
子どもの収入を上げるベスト3は「スポーツ」「リーダー経験」「非認知能力」
将来の収入に影響を与える要素は何だろうか。親として子どもに教えたい重要なスキルとは?教育経済学の最前線から、子どもの未来を明るくする具体的な方法を探る。

Q. 将来の収入を上げるために子どもの頃にやっておくべきことベスト3は?
1. スポーツをする
教育経済学の研究によると、小中高生時代にスポーツをしていた人は、していなかった人と比較して大人になった後の収入が高くなる傾向がある。特に興味深いのは、どのスポーツをするかはあまり重要ではなく、チームスポーツか個人スポーツかという区分でも大きな差は見られないということだ。ただし、軽い運動程度では効果がないという研究が多い。
採用面でも、スポーツ経験者は有利になる。実験では、スポーツ経験があることだけが異なる同一内容の履歴書を企業に送ったところ、スポーツ経験がある履歴書の方が面接に呼ばれる確率が高かった。特に体力が求められる介護や運輸業界では、その傾向が顕著だった。
一卵性双生児の研究でも、スポーツをした双子とそうでない双子を比較すると、キャリア初期には約4%の収入差が生じていた。この差の要因は非認知能力にあり、スポーツ経験者はリーダーシップやコミュニケーション能力、忍耐力があるというサインになっていると考えられる。
また、多くの親が心配する「スポーツをすると勉強時間が減るのでは?」という点については、研究ではスポーツをしても勉強時間は減らないとされている。むしろスポーツによって減るのは、スマホやテレビを見る時間だという研究結果が多い。
2. リーダーシップを発揮する経験を持つ
長期にわたる追跡調査によれば、高校時代に生徒会活動や部活動でリーダーシップを取っていた人は、高校卒業後11年経過時点で賃金が4%から33%も高くなっている。リーダーシップの強度が強いほど、賃金プレミアムも大きくなる傾向がある。
重要なのは、リーダーシップは生まれつきの才能ではなく、経験を通じて培われるスキルだということ。学校によっては、同じ生徒が常にリーダーを務めるのではなく、多くの生徒にリーダー経験の機会を与えているところもある。そういった学校では、リーダーシップの経験を積むほどスキルが上がっていることが確認されている。
また、成績が優秀でもリーダー経験がない人よりも、成績は普通でもリーダー経験がある人の方が採用面接に呼ばれる確率が高いという研究結果もある。特に女性においてこの傾向が強く、リーダーシップの賃金プレミアムが高いことから、男女の賃金格差の一因は女性がリーダーシップポジションに就かないことにあるという指摘もある。
さらに、リーダーになることで学力が下がるのではないかという懸念もあるが、実際には逆の効果が見られる。リーダー経験を持つ子どもの方が学力が高くなるという研究結果も存在する。これは、リーダーシップ活動によって自主性が育まれ、学習への姿勢にも好影響を及ぼすためと考えられる。
3. 非認知能力を高める
非認知能力とは、学力テストでは測れない能力のことで、忍耐力、勤勉性、やり抜く力などが含まれる。これらの能力は将来の収入との関連が強いことが分かっている。
興味深いことに、親の経済力が高い家庭の子どもほど、ほとんど全ての非認知能力が高い傾向にある。ただし、国際的な調査と比較すると、日本はこの格差が比較的小さい国の一つである。
非認知能力の重要性は、社会に出てから実感することが多い。多くの人は40代や50代になって初めて「勉強ができるだけでは社会で活躍できない」と気づく。しかし、これらの能力は早い段階から意識的に育むことが可能である。

Q. なぜ小中高生時代のスポーツ経験が将来の収入に良い影響を与えるのか?
スポーツが将来の収入に良い影響を与える理由はいくつか考えられる。まず、スポーツを通じて培われる非認知能力が挙げられる。チームメイトとコミュニケーションを取りながら計画を立て、成果を出すプロセスや、フィジカルトレーニングの中で自分の感情をコントロールする経験は、社会に出てからも役立つスキルとなる。
また、スポーツによって健康や体力が向上することも要因の一つだ。採用面でスポーツ経験者が優遇される背景には、企業側が「体力があり健康な人材」を求めていることがある。
音楽活動についても同様の効果が見られるという研究結果があり、音楽が幼少期の脳の発達に良い影響を与える可能性も指摘されている。音を奏でる行為や絵を描く行為は「意思決定の連続」であり、物事を考える力を養う上で非常に有効だと考えられている。
Q. 子どもにリーダーシップを身につけさせるには?
リーダーになりたいという気持ちは親からの勧めによって生まれることが多い。日本では手を挙げてリーダーになることに抵抗を感じる子どもも多いが、親や教師が「やってみたらいいじゃない」と背中を押すことで子どもの気持ちが変わることがある。
また、子どもが得意な分野でリーダーシップを発揮できるよう促すことも効果的だ。例えば、美化委員会で清掃活動を主導したり、吹奏楽部でパートリーダーを務めたりするなど、自分の興味や強みを活かせる場所を見つけることが重要である。
リーダーシップを身につける機会は学校だけでなく、地域のコミュニティ活動や子ども会など様々な場所にある。スポーツが苦手な子どもでも、自分の特性を活かしたリーダーシップの発揮方法はあるので、多様な経験の場を提供することが大切である。
Q. 大学の偏差値と将来の収入には関連があるのか?
一般的に「良い大学に行けば将来の収入が高くなる」と考えられているが、研究結果はそれを必ずしも支持していない。実際、同じ大学に合格した人と不合格になった人で、その後の進路は異なるものの、20年後の収入はほとんど同じという研究結果がある。
例えば、同程度の学力を持ち、ある大学に合格した人と不合格になった人を比較した場合、行った大学の偏差値に5ほどの差があっても、将来の収入に大きな影響は見られなかった。これは、大学入学前の能力が将来の収入をおおむね決定しており、どの大学に進学するかはあまり影響しないことを示唆している。
この結果は、高校についても同様で、名門高校に行くことで学力が向上するという証拠は少ないとされている。ギリギリ合格した生徒とギリギリ不合格だった生徒を比較しても、その後の学力に特に差は見られないという研究結果もある。

Q. 学校と社会での評価基準のギャップをどう考えるべきか?
多くの人が小中高時代に「勉強が大事」と言われ続けるにもかかわらず、社会に出ると「コミュニケーション能力」「チャレンジ精神」といった別の能力が重視される現実に矛盾を感じている。実際、就職活動や結婚相手を選ぶ際にも、学力や学歴よりも「思いやりがある」「誠実である」「勤勉である」といった特性が重視される。
このギャップの背景には、従来の教育が認知能力(学力)に偏重してきたことがある。しかし、長期的な人生の成功には非認知能力も同等以上に重要であることが、最近の研究から明らかになってきている。
これからの教育は、短期的な学業成績だけでなく、長期的に人生で役立つスキルを育成する視点が必要である。スポーツや音楽活動、リーダーシップ経験などを通じて、社会で求められる多様な能力を育むことが、子どもたちの将来の可能性を広げることにつながる。

Q. 日本の教育格差の現状はどうなっているのか?
非認知能力に関して言えば、親の経済力が高い家庭の子どもの方が、ほとんどすべての非認知能力が高い傾向にある。しかし国際的な比較では、日本はこの格差が比較的小さい国の一つとされている。
教育経済学の研究目的については、格差を作ることを肯定する研究は社会科学の中にはなく、個々人の能力を伸ばし、それぞれが望む人生のゴールを達成するための手助けをすることが目的である。人によって幸せな結婚生活や自己実現など目標は異なるが、それらの達成を支援する科学と言える。
教育の質については、高等教育よりも幼少期からの教育の質が重要であるという指摘もある。特に非認知能力の育成は、早い段階から意識的に取り組むことで、子どもたちの将来の可能性を大きく広げることができる。