PIVOT TALK BUSINESS
ソニーとKADOKAWA。最強IP連合の誕生
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2024年11月21日

11月19日、ソニーがKADOKAWA買収に向けて協議している、と報じられた。ソニーがKADOKAWAを買収する狙いはどこにあるのか?KADOKAWAの強みと課題はどこにあるのか?ソニー側、KADOKAWA側の事情と合わせて、エンタメ社会学者の中山淳雄氏に聞いた。 <ゲスト> 中山淳雄|エンタメ社...
ソニーによる角川買収の全貌 — IPコングロマリット誕生で業界はどう変わるか
ソニーによる角川グループホールディングスの買収計画は、日本のエンターテインメント業界に大きな衝撃を与えている。角川が持つライトノベル、アニメ、ゲームといった強力なIPと、ソニーのグローバルな展開力が融合することで何が生まれるのか。エンタメ社会学者の中山淳雄氏に、この買収の意義と今後の展望について聞いた。

Q. ソニーによる角川買収は合理的な判断なのか?
グローバルな視点で見れば合理的な選択肢だと言える。ソニーにとっても角川にとってもメリットがある取引だ。しかし国内市場では、アニメ、ゲーム、出版分野で巨大な存在が生まれることになるため、業界内の警戒感は高まるだろう。見方によって評価が分かれる案件と言える。
Q. ソニーが角川を買収する意味はどこにあるのか?
この買収はソニーの戦略の延長線上にある。ソニーは約半年前にパラマウントの買収を検討していたが、それが流れた後、大規模な買収ではなくIPの獲得に方針を転換した。今後3年で約1.8兆円をかけて様々なIPを買収していく計画を発表しており、角川はその文脈で選ばれた可能性が高い。
日本の出版社で株式を公開している大手は限られており、角川は集英社、講談社、小学館に次ぐ業界4位の出版社だ。特にライトノベルやアニメ分野での強みがあり、買収可能な選択肢としては角川が最適だったと考えられる。
Q. ライトノベルはグローバル市場でも強力なIPになるのか?
近年、「異世界」などのライトノベル作品は海外でも非常に人気がある。「異世界」という言葉はオックスフォード英語辞典に収録されるほど世界的に認知されている。「リゼロ」や「このすば」などの作品は、集英社や講談社のIPとは異なる特徴を持ち、グローバル市場でも通用する強みを持っている。
また、角川グループの決算を見ると海外売上が着実に伸びており、特に北米市場で成長している。「推しの子」などの作品は半年間で80〜90億円の版権収入をもたらすなど、角川のIPは海外でも大きな価値を生み出している。
Q. 角川のどのようなIPや事業がソニーにとって魅力的なのか?
角川の魅力は主に三つある。一つ目はライトノベルを中心とした出版事業、二つ目はアニメ事業、三つ目はゲーム事業だ。特にゲーム部門では、角川傘下のフロム・ソフトウェアが「エルデンリング」や「ダークソウル」などの世界的ヒット作を生み出している。
また忘れてはならないのが映画事業だ。角川は制作部門を持ち、大映のブランドも所有している。このように角川は出版、アニメ、ゲーム、映画と多岐にわたるIPを持っており、ソニーにとって非常に魅力的な買収対象となっている。
Q. 国内市場ではこの買収にどのような懸念があるのか?
国内市場では、トップクラスの二社が合体することによる影響が懸念される。アニメを制作する際に、ソニーと角川の連合があまりにも巨大になることで、他の出版社が別のテレビ局などに制作を依頼するといった分散化が起こる可能性がある。
ただし、独占禁止法に抵触するほどの規模ではないと考えられる。アニメ産業は出版、テレビ、商品化など横断的な性質を持つため、独占禁止法の基準に抵触するかどうかの判断は難しい。
Q. グローバル競争の観点からはどう評価できるか?
クールジャパン関連の市場は国内が約1.5兆円、海外が約1.6兆円だが、日本企業が海外市場から得ている収益は全体の5〜10%程度、金額にして100〜200億円にとどまっている。このような状況で、角川とソニーの連合によって海外展開が強化されることは、日本のコンテンツ産業全体にとってポジティブな影響をもたらす可能性がある。
ソニーはクランチロールも所有しており、日本のポップカルチャーを世界に展開するための大きな日本連合が形成されると見ることもできる。
Q. ソニーと角川の企業文化に懸念点はないか?
出版業界では大規模なM&Aの経験が少なく、これは一つの課題になり得る。ソニーはアメリカの音楽レーベルや映画会社、最近ではゲーム開発会社のバンジーなど、様々な買収とPMI(買収後の統合)の経験を持っている。
しかし懸念点として、アメリカを中心とするポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)の問題がある。角川やドワンゴは比較的自由なクリエイティビティを持つ企業だが、グローバル企業の管理下に入ることでその自由が制限される可能性を心配する声もある。
Q. ニコニコ動画やN高校などの事業はソニーにとって必要なのか?
これらの事業は今回の買収では例外的な位置づけとなる可能性がある。ニコニコ動画は200〜300億円規模、N高校などの教育事業も100〜200億円規模の事業になっている。
マイクロソフトのように教育分野に進出するという選択肢もあり得るが、全ての事業を維持するか、一部を切り離すかは今後の課題だろう。
Q. 角川側の事情として、サイバー攻撃の影響はあるのか?
角川はもともと様々な会社を買収してきた歴史があり、オーナー企業から上場企業への移行も経験している。角川春樹氏の時代から角川歴彦氏の時代まで、様々な変遷を経てきた企業だ。
また近年では韓国系ファンドが株式を保有しており、その買収を防ぐ目的もあったのではないかという見方もある。このファンドにとっては、買収プレミアムがつくことで利益確定できるメリットもある。
Q. ソニー・角川連合に期待されることは何か?
最大の期待はグローバル展開の強化だ。国内市場ではすでに角川は出版業界の上位に位置し、ゲーム、アニメでも強力な存在だが、これらのIPを海外に広げる力がソニーにはある。
ソニー・ピクチャーズによるIPの映画化や、ゲームの展開など、様々な可能性が考えられる。角川のIPを世界に羽ばたかせる原動力としてのソニーの役割に期待が集まっている。
Q. この買収の影響で業界にどのような変化が起きるか?
この買収が成功すれば、他の企業にも影響を与える可能性がある。任天堂とポケモン、集英社、バンダイナムコなど、日本のコンテンツ産業がどう反応するかが注目される。
日本のコンテンツ産業は従来、ゲーム、アニメ、出版など分野ごとに分かれていたが、これらを統合する「IPプラットフォーム」や「IPコングロマリット」と呼ばれる企業形態が生まれる可能性がある。一つのIPを様々なチャネルで展開するこのような企業連合が今後増えていくかもしれない。