医師が解説!あなたの寿命を伸ばす健康の真実「朝食を抜くと心血管疾患リスクが40%上昇」
健康に関する情報は日々更新され、何が正しいのか判断するのは難しい。医学博士の柳澤綾子先生に、最新の科学的エビデンスに基づいた健康情報について聞いた。「1時間ランニングすると7時間長く生きられる」というコスパの良い健康法から、「朝食を抜くと心血管疾患リスクが40%上昇」という驚きの事実まで、あなたの寿命を延ばす正しい知識をQ&A形式でまとめた。

Q. 体に良い理想的な生活習慣を簡潔にまとめると?
健康情報は日々更新されていくが、現時点で科学的に証明されている理想的な生活習慣は以下のとおり:
- 適切な睡眠(7〜8時間が理想的)
- バランスの良い食事(特にナッツ、魚、オリーブオイル、野菜、果物)
- 適度な運動(ウォーキング、軽いランニングなど)
- ストレスを溜めない生活
画期的な方法を期待されるかもしれないが、実はこれらの基本的な習慣が最も効果的である。
Q. 健康情報が正しいかどうかをどう見極めればいい?
情報が溢れる現代では、すべての情報を自分で検証する時間はない。大切なのは:
1. 一つの情報だけを鵜呑みにせず、背景や成り立ちを考える
2. 様々な側面から自分で考えてみる姿勢を持つ
3. 科学は常に新しい発見によって塗り替えられていくことを理解する
4. 自分の生活スタイルにとってどうかを判断する
すべての健康情報が全ての人に当てはまるわけではないので、自分に合った情報を選ぶことが重要。
Q. 加工肉は体に悪いと聞きますが、肉全般は良いのか悪いのか?
2015年にWHOが加工肉(ベーコンなど)に発がん性があると発表し、大きな話題となった。赤身肉(牛肉、豚肉など見た目が赤い肉)にも同様に発がん性があるという発表がされている。一方、白身肉(鶏肉など見た目が白い肉)については、そのような指摘は少ない。
ただし、これらは量や食べ方によって影響が変わってくるため、完全に避けるべきというわけではなく、バランスを考えて摂取することが大切。
Q. 牛乳は体に良いか悪いか?
牛乳は単一成分ではなく、水分、タンパク質、カルシウム、脂肪など多くの成分からなる混合体。研究では、牛乳摂取と特定の疾患リスクとの関連が指摘される一方で、成長期の子供には栄養摂取の面でメリットがあるという説もある。
個人的には、メリットがあると判断した人は飲んでよいが、乳糖不耐症で飲むとお腹を壊す人が無理して飲む必要はないと考える。健康のために絶対に必要というものではない。
Q. 糖質制限は体に良いか?
短期間で体重を一気に落としたい目的なら、一時的な体重減少には効果がある。しかし、2011年の研究では、重要なのは糖質の量ではなく種類であることが示されている。
茶色い炭水化物(玄米、全粒粉、そば粉など)を選ぶことが効果的だという結論が出ている。糖質の量を気にするよりも、質を考えることが大切かもしれない。
Q. 糖質と脂質、どちらが体に悪い?
どちらか一方が特に悪いというわけではない。糖質も脂質も体内での使われ方や果たす役割、代謝経路が異なる。単純に比較することは難しい。
糖質の中では茶色い炭水化物、脂質の中ではオメガ3を含むアマニ油やオリーブオイルなどを選ぶことが科学的に良さそうだという方向性が見えている。
Q. 肥満は体に悪い?
高度の肥満が健康に良くないことは、科学的に明確なエビデンスがある。ただし、痩せすぎも栄養状態や骨の状態に悪影響を及ぼすことがある。
脂肪組織自体も体内で重要な役割を果たしており、適度なバランスが体に良いというのが科学的な答え。
Q. タンパク質はどれだけ取っても良い?
タンパク質はアミノ酸の結合から成り立っており、20種類ほどのアミノ酸をバランスよく摂取することが理想的。タンパク質は「取りだめ」ができないため、定期的に摂取し続けることが大切。
必要量以上に摂取しても体外に排出されるだけでなく、代謝するために腎臓や肝臓に負担をかけることになる。必要な量を必要なだけ取るのが理想的。
Q. 魚は体に良い?
魚が体に良いというエビデンスは多数ある。2016年の大規模研究では、魚の摂取量が多い人ほど死亡リスクが低いことが明らかになっている。時間(寿命)を増やすという意味でも魚を摂取することにはメリットがある。
ただし、一部の魚に含まれる重金属については注意が必要。
Q. お酒は少量でも体に悪い?
2018年の研究結果では、健康への悪影響を最小化したいのであれば飲酒量は0が最適という結論が出ている。「少しなら良い」という考えを否定する結論だ。
ただし、人は健康面だけで生きているわけではない。美味しさや楽しい時間、ストレス軽減などの側面もある。それらを考慮した上で個々が判断すべきだろう。
Q. 果物は体に良い?
果物には果糖という糖の一種が多く含まれているため、太ることを心配する声もあるが、研究では果物の摂取により全死亡率が約6%低下することが示されている。
ただし、フルーツジュースは生の果物と同等の効果があるとは言えない。できれば自分で皮をむいたり切ったりして食べる方が良い。
Q. オーガニック食品は体に良い?
オーガニック食品について、明確で強いエビデンスを持った研究結果はまだ出ていない。定義も難しい面がある。
残留農薬や添加物が気になる方は、自分の経済的に許容できる範囲で取り入れるのも良いだろう。過剰に気にする必要はない。
Q. 卵は1日何個まで食べても良い?
以前は「1日2個まで」と言われていたが、最近の研究では卵の摂取量と血中コレステロール値は直接関係しないことがわかってきた。コレステロールが高いからといって卵を制限する必要性は低い。
ただし、過剰な摂取は疾患リスクを上げる可能性も示唆されているので、他の食品と同様、食べ過ぎには注意が必要。
Q. ナッツは体に良い?
2013年の研究では、ナッツの摂取は心臓血管疾患や脳血管疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)のリスクを大きく下げることが示されている。現時点ではナッツ摂取にはメリットがあるとされている。
Q. 朝食は食べた方が良い?
現代の生活スタイルでは朝食を抜く人も多い。断食的な効果を期待して意図的に朝食を抜く方法もある。
しかし、2022年の研究では、朝食を食べない人は心臓血管疾患のリスクが約40%上昇するという結果が出ている。全死亡率には大きな差がなくても、特定の疾患リスクには影響があるようだ。
健康の定義は人それぞれで、死亡率、特定疾患の予防、体重減少など、何を重視するかによって選ぶべき生活習慣も変わってくる。
Q. 朝食を食べないと心臓血管疾患リスクが40%も上がるのはなぜ?
研究では統計的な相関関係は示されるが、なぜそうなるかの解釈は専門家によって行われる。朝食を食べない人は水分も摂らないことが多く、脱水状態になりやすいことが一因かもしれない。
ただし、大規模研究では年齢や生活習慣の差を調整した上でもこの差が出ているため、朝食摂取自体に何らかのメリットがあると考えられる。
Q. サプリメントは有効?
サプリメントの定義は広く、一概に良い悪いは言えない。巨大産業であることは間違いなく、多くの人が健康改善のために手を出したくなる分野だ。
血液検査で特定の成分が不足していることが明確な場合、その成分を補うためのサプリメントは有効な場合がある。成分含有量や吸収率を知った上で取り入れるとよい。
Q. ビタミンCは体に良い?
ビタミン全般は、それ自体が栄養素になるわけではなく、体内の代謝をサポートする潤滑油のような役割をする。原則として体内では合成できないものが多い。
ビタミンCに限らず、ビタミン類は体に必要なものだ。
Q. 睡眠時間は7〜8時間がベスト?
大規模調査では7〜8時間の睡眠が健康アウトカムに大きく関連しているという結果が多い。具体的には、7,500歩〜12,000歩歩く人は死亡率が低下するが、それ以上では大差がないという研究結果がある。
ただし、個体差はあるので、自分に合ったスタイルを探すことが大切。最近はウェアラブルデバイスなども発達しているので、自分の体調と睡眠の関係を調べるのも良いだろう。
なお、睡眠不足は体重増加と関連があるという研究もあるので、痩せたい人は十分な睡眠を取ったほうが良い。
Q. シャワーよりお風呂に入った方が体に良い?
バスタブに入る場合のメリットとしては:
1. 水圧効果(体を締め付ける効果)
2. 温熱効果(体温より高いお湯に包まれる効果)
3. 浮力効果(筋肉が緩む効果)
シャワーでは水圧や浮力の効果は少ないが、温熱効果はある。
バスタブに入ると水圧で血管内の血液やリンパ液が上手に戻ってくる効果があるが、同時に心臓や肺に負担がかかることもある。そのような場合は半身浴が良いだろう。
Q. 長時間座っているのは体に悪い?
WHOのガイドラインでも明確に、座りっぱなしは心臓疾患、がん、2型糖尿病のリスクを高めると勧告している。できるだけ座りっぱなしの時間を減らし、身体活動を行うことが推奨されている。
Q. サウナは体に良い?
2017年の北欧の研究では、サウナに入る回数が多い人は心血管疾患リスクが低く、認知症やアルツハイマーなどの認知機能障害の発症リスクも低いという結果が出ている。
ただし、高温から急激に低温に移行するなど、体への負担も大きい。自律神経への影響を考慮する必要がある。
Q. 紫外線は体に悪い?
皮膚がんとの関連性は明確だが、太陽光を浴びることによるメリットもある。ビタミンDは日光を浴びることで体内で合成される。また、最近の研究では太陽光を適度に浴びることで近視の進行を抑制する効果があるという指摘もある。
過剰な紫外線摂取は避けつつ、日常生活で適度に日光を浴びることは有効と考えられる。
Q. 癌を予防する方法はある?
「がん」は非常に多様で、発生臓器、細胞の種類、遺伝子タイプによって細かく分類される。予防できるタイプのがんもあれば、ワクチンが存在するものもある。
予防可能ながんの例:
- ウイルス感染が原因のがん(子
宮頸がんなど)はワクチンで予防可能
- リスク要因が明確ながん(タバコが原因の肺がん、強いアルコールが原因の食道がんなど)は生活習慣の改善で発症リスクを下げられる
自分の意思でリスクを下げることができるものは、可能な限り対策すべきだ。
