ECONOMICS101
後編:米国経済の強さの秘訣
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2024年11月12日

連日、アメリカ大統領選挙が報道されているが、なぜこれほどまでに注目されるのか。アメリカがくしゃみをすると、日本が風邪をひくとも言われる、米国経済の強さの秘訣をエコノミストの小野亮氏と永濱利廣氏に聞いた。 <ゲスト> 小野 亮|エコノミスト 東京大学工学部卒、現みずほリサーチ&テクノロジーズ入社。1...
アメリカ経済の実態と未来:知られざる年金問題と「強さの秘密」
アメリカ経済は表面的な強さの裏に、日本ではあまり報じられていない課題を抱えている。強いと言われるアメリカ経済の実態と、生成AIが生産性向上に与える影響とは?経済専門家が解説する、アメリカ経済の重要ポイントを分かりやすくまとめた。

Q. アメリカ経済で日本ではあまり議論されていない問題は何ですか?
アメリカでは2034年に年金制度が枯渇する危機に直面している。高齢者の増加と給与税収入の不足により、このままでは2034年時点で年金給付が約3割カットされる仕組みになっている。この年金危機はアメリカでも十分に議論されておらず、今後市場に織り込まれていく可能性がある重要な問題だ。
Q. なぜアメリカ経済は金融引き締めの中でも強さを保っているのですか?
2008年のリーマンショック後、アメリカでは低所得層への貸付規制が厳しくなり、金融機関も貸付責任を負うようになった。現在の住宅ローン借入者の94%は信用力の高い層で、コロナ禍の低金利時に多くの人がローンを借り換えている。このような金融システムの健全性がアメリカ経済の強さの基盤となっている。
Q. アメリカ経済の状況を判断するために最も重要な指標は何ですか?
雇用統計、特に非農業部門雇用者数の伸びが最も重要だ。現在、10万人から15万人の伸びがあれば底堅いと評価され、10万人を下回ると減速の兆候、20万人を超えると予想外の強さと判断される。9月の統計では予想を上回る25万人の雇用増加があったが、これは大統領選挙の年の9月には選挙関連の一時的雇用が増える傾向があるためかもしれない。
Q. FRBの金利政策について、現状と今後の見通しはどうなっていますか?
現在の政策金利(4.75~5.0%)は明らかに引き締め的だというのがFRBの認識だ。長期的には中立水準(約2.9%)に向けて引き下げていく方針だが、FRB内部でも中立金利の水準については見解が分かれている。中立金利の評価は、インフレ圧力と経済の成長力によって変わり得る。
Q. 生成AIブームはアメリカの生産性向上にどのような影響を与えますか?
1990年代後半のITブームと比較すると、AIブームによる生産性向上の効果は限定的かもしれない。ITブーム時は半導体製造、ユーザー企業の投資、新ビジネスモデルがバランスよく生産性を押し上げたが、現在はAI半導体の製造拠点が台湾にあり、データセンター機器も輸入品が多い。また、サブスクリプションモデルの普及でユーザー企業のIT投資が増えにくくなっているため、GDP成長への貢献が小さくなる可能性がある。
Q. FRBとFOMCの違いと役割は何ですか?
FRBはアメリカの中央銀行で、日本の日銀に相当する。FOMCは金融政策を決定するための委員会で、日銀の金融政策決定会合に相当する。FOMCはFRBの理事7人と12の地区連銀総裁のうち5人(ニューヨーク連銀総裁は常任、他の4人は輪番制)で構成され、年8回の会合で政策を決定する。
Q. アメリカの金融政策の目的は日本と何が違いますか?
アメリカの金融政策は「デュアルマンデート」と呼ばれる二重の使命を持ち、物価安定と雇用の最大化の両方を目標としている。これは基本的にアメリカ特有のもので、日本を含む他の多くの国では物価安定のみが金融政策の目標だ。2020年8月にはこの枠組みが拡大され、雇用の質や労働市場参加を断念した人々にも配慮するようになった。
Q. 現在のアメリカの中立金利はどのように評価されていますか?
FRBのドットチャートによると、中立金利のメディアン値は2.9%とされているが、FRB内部でも高めに見ている派と低めに見ている派に分かれている。近年中立金利が上昇している背景には、期待インフレ率の上昇が大きく影響していると考えられる。AIなどによる生産性向上の効果はまだ確認できていないため、潜在成長率上昇の影響は限定的だろう。
Q. アメリカ経済を見る上で、日本人として注意すべき点は何ですか?
アメリカ経済の動向は日本経済に大きな影響を与える。リーマンショック時にはアメリカよりも日本のGDPの落ち込みが大きかったように、「アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひく」状況だ。日本の政治経済だけでなく、アメリカの政治経済も含めて広い視野で見ることが重要となる。