業界超分析
【中央省庁】コンサル・商社より面白い「ネオ官僚」の仕事
(65)
7,147回視聴
2024年11月17日

人気業界と、そのトップ企業をよく知る専門家が、元社員と共に徹底分析していく。今回は「中央省庁」。後編では働き方改革の現状と産業政策の大転換時代を解説する。 <ゲスト> 朝比奈一郎 経済産業省出身 / 青山社中 筆頭代表CEO 末政憲司 経済産業省 大臣官房 秘書課 課長補佐(採用班長) 大澤陽樹 ...
w中央省庁の現実と魅力 - 「ネオ官僚」が語る意外なキャリアパス
「計算省の人が農水省に行って輸出担当をするなど、省庁を超えた人材交流が進んでいる。霞が関はそういう意味でダイナミックで面白くなっている」という声が聞こえてきた。かつての中央省庁のイメージとは異なり、働き方や産業政策にも大きな変化が起きているようだ。


Q. 霞が関の残業実態はどうなっていますか?
霞が関と言えば、夜中でも電気がついていて、タクシーが何台も待っているイメージがあるかもしれない。しかし実際はそんなことはない。残業100時間を超えるような人は全体でも2〜3%程度だ。この10年ほどで総残業時間は約2割減少している。
男性の育休取得率は100%で、その9割が1ヶ月以上取得している。これは民間企業の平均3割程度と比べても高い水準だ。経営幹部からの意識改革が進み、結果として表れ始めている。
Q. 「甘い下り」と言われる天下りの現状はどうなっていますか?
かつては「給料が低いからこそ天下りで稼ごう」というインセンティブがあったが、現在は退職後の再就職は法的に禁止されている。しかし実際には存在しており、特定の省庁から特定の業界への再就職ルートが確立されている組織もある。
再就職先でいきなり給料が上がるケースもあり、「天下り先をたくさん持っているところ」と「そうでないところ」の差は大きい。このような状況を改善するためにも、公務員の給料を上げて優秀な人材を確保する必要があるという意見が強い。
Q. 経済産業省の魅力や特徴は何ですか?
経済産業省の魅力は、挑戦できる環境と自分のポテンシャルを最大限引き出してくれる環境にある。政策領域・分野が非常に幅広く、関わる人・アクターの数が多いことも魅力的だ。
霞が関の中でも経済産業省は特殊な立ち位置で、パブリックセクターとプライベートセクターの交差点のような位置づけにある。そのため、就職先として「経産省か民間企業か」で迷う学生も多い。最近は市場状況もあり、コンサルティングファームや商社と比較検討する学生が増えている。
Q. 中央省庁と民間企業の採用競争はどうなっていますか?
かつては財務省との競争が多かったが、最近は霞が関内での比較検討をする学生が増えている。その中でも経済産業省は特殊で、民間企業と比較されることが多い。
経産省の採用では、自分の意見をはっきり持ち、強いパッションを持っている人材を求めている。「この人は何をやりたいのか」「どんな熱意を持っているか」を重視している。組織の評価基準の一つに「自分の力」という項目があり、チームワークだけでなく個人の能力開発も重視している点が特徴だ。
Q. 産業政策はどのように変化していますか?
産業政策は大きな転換期を迎えている。戦後から高度経済成長期には政府が前面に出ていたが、その後は新自由主義・市場主義の時代となり、小さな政府の役割が強調された。しかし現在は再び揺り戻しが起きている。
2000年代以降、資源価格の上昇や中国などの新興国の台頭により、国が前面に出る必要性が高まった。オイルやガスの確保は、民間企業だけでは中国国営企業などに太刀打ちできない。また、半導体分野でもTSMCやラピダスへの大規模な補助金など、国が関与する産業政策が復活している。
一方で、経済産業省が主導してきた産業と農水省が管轄する農業分野の立場も変化している。かつては経産省管轄の製造業が強く、農水省は補助金頼みのイメージだったが、最近は日本の農産物の競争力が見直されている。若手官僚の間では「日本のイチゴや米は世界で最も競争力がある」という認識が広がっている。
Q. 中央省庁が今後勝ち残るために必要な改革は何ですか?
中央省庁が優秀な人材を確保するためには、中途採用の拡大が鍵となる。新卒採用では条件面で民間に劣るため、やりがいだけで勝負するのは難しくなっている。一方、民間で経験を積んだ後にやりがいを求めて転職する層を取り込むことが重要だ。
近年は中央省庁への中途採用のハードルが下がっており、試験を受けなくても採用される道が開かれている。例えば神戸市では採用の半分を中途採用に切り替え、東京で働いた経験のある人材を積極的に呼び戻す取り組みを行っている。
給与水準の向上も不可欠だ。中途採用で実績のある人材を確保するためには、年収差を許容できる範囲に抑える必要がある。「日本という国の国力を上げていくために、政策に携わる人は最も優秀な人が集まるべきであり、そのための報酬水準にすべき」という意見もある。
また、PRの強化も課題だ。霞が関の内情は外部から見えにくく、「広報や人事をずっとやります」という専門職がいないのも民間との違いだ。魅力を適切に伝える努力をしなければ、人材獲得競争で勝てない時代になっている。
Q. 政治家になるためのルートとして官僚は有効ですか?
政治家になるだけなら、知名度が重要なので芸能人やスポーツ選手の方が有利だ。官僚は匿名性が高く、国民からの人気も高いとは言えない。
しかし、政治家として必要な政策立案力や実行力は官僚経験で大きく成長する。小林鷹之氏のような官僚出身の政治家も活躍しており、政策の専門性を持った政治家を目指すなら、官僚経験は大きな武器になる。