ECONOMICS101
後編:エブリシング・バブルはすでに崩壊した
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2024年11月2日

世界情勢が大きく動く中、日本経済はどのようなリスクに直面する可能性があるのか。エコノミストのエミン・ユルマズ氏と永濱利廣氏に、日本経済の展望を聞いた。 <ゲスト> エミン・ユルマズ|エコノミスト トルコ・イスタンブール出身。16歳で国際生物学オリンピックの世界チャンピオンに。1997年に日本に留学...
エコノミストが警鐘!AIバブル崩壊と世界秩序の行方
経済評論家のエミン・ユルマズ氏と永濱利廣氏が、世界経済が直面する3つの大きなリスク—中国経済、AIバブル、そして新たな世界秩序の形成—について鋭い分析を展開。バブルの正体から台湾有事の可能性まで、私たちの未来に影響を与える重要なトピックを解説します。

Q. 「エブリシングバブル」とは何ですか?その現状は?
2022年に私が提唱した概念で、あらゆる資産クラスがバブル化した状況を指します。株式だけでなく、不動産、暗号資産、コレクターズアイテム(高級時計、ウィスキー、骨董品など)、テーマ銘柄(パンデミック関連、リモートワーク関連)など、様々な資産が同時に価格高騰しました。
現在では、このバブルの7〜8割は崩壊しています。中国の不動産バブル、EV関連銘柄、リモートワーク関連銘柄、暗号資産、コレクターズアイテムなどは価格が半分以下になっています。私の定義では、高値から50%以上下落するとバブル崩壊と見なしています。
一方で、今は「エブリシングバブル」ではなく「AIバブル」の状況です。全ての資産クラスが膨らんでいるわけではなく、NVIDIA(エヌビディア)を中心とした特定のAI関連銘柄に資金が集中しています。
Q. AIバブルはいつ崩壊するのでしょうか?
半導体セクター全体では、7月に株価は天井を打ったと考えています。フィラデルフィア半導体指数(SOX)を見れば明らかです。ただし、NVIDIAのような代表的な銘柄はまだ高値圏にあります。
問題は、NVIDIAがアメリカ株式市場において非常に重要な銘柄になっていることです。この銘柄が崩れると、アメリカ株全体が総崩れするリスクがあります。
バブルの終焉時期を正確に予測することは困難です。PSR(株価売上高比率)などの指標で歴史的に高いレベルにあることは分かりますが、バブルがどこまで膨らむかは予測できません。例えば、チューリップバブルの時代、1つのチューリップの球根で車が買える価格になった時点でもバブルでしたが、その後さらに価格が上昇し、家が買えるほどになりました。
NVIDIAの株価が崩れるきっかけとしては、四半期決算で期待を下回る業績が発表されるケースや、競合他社が追いつく・凌駕する技術を開発するケースが考えられます。また、生成AIに関する規制強化なども影響する可能性があります。
Q. AIは本当に産業革命のような変革をもたらしますか?
AIが私たちの生活を根本的に変える可能性はありますが、そのためにはまだ時間が必要です。歴史的に見ても、技術の発明から実用化、普及までには長い時間がかかっています。
産業革命の例を挙げると、蒸気機関の原型が完成したのは1730年頃、ジェームズ・ワットが特許を取得したのは1780年頃、そしてそれが鉄道などに実用化され始めたのは1830年頃でした。人類が石炭をうまく使いこなせるようになるまで約100年かかったのです。
その後の技術革新サイクルは短くなってきていますが、それでも時間はかかります。ラジオは原理が発明されてから商業化まで約20年、コンピュータ技術も理論が確立されてから実際にパソコン革命が起きるまで20年近くかかりました。
同様に、AIが私たちの生活を大きく変えるまでには、おそらくまだ20年程度かかるのではないでしょうか。現在の盛り上がりは期待相場やハイプサイクルの一部であり、一度は調整する可能性が高いと考えています。
Q. AIの発展に伴うリスクはありますか?
AIの発展には深刻なリスクも伴います。ノーベル賞を受賞したジェフリー・ヒントン氏(AIのゴッドファーザーと呼ばれる研究者)はGoogleを退社し、AIのリスクについて警告しています。
ヒントン氏は「私たちは人間より賢いものを作ろうとしているが、自然界で自分よりバカなものに支配される存在はない」と指摘しています。AIが人間の知能を超えてしまった場合、人間がコントロールできなくなる可能性があるのです。
また、現在のドローン技術と組み合わせることで、危険な自律型兵器システムが作られる可能性もあります。ウクライナ戦争ではドローンオペレーターが人間を識別して攻撃していますが、これが自動化された場合、「人間と識別される対象を攻撃せよ」といった命令で無差別攻撃が可能になります。
AIはマネタイズの問題を超えた技術です。AI研究者の中には「これは単なるビジネスではなく、この技術を手に入れれば世界を支配できる」と考える人もいます。
Q. 台湾有事のリスクはどれほど現実的ですか?
台湾有事のリスクが最も高まる時期は2025年から2027年と言われています。中国は「アメリカが軍事的に動かない」と判断した途端に軍事行動を起こす可能性があります。
この時期が注目される理由は、2024年にアメリカ大統領選があり、新政権が2025年から本格的に動き始める一方、習近平国家主席の次の任期が2027年までであるためです。
アメリカ大統領選の結果次第では、トランプ氏が「中国が台湾封鎖をしたら中国製品に100%や200%の関税をかける」といった発言をし、中国に誤ったメッセージを与える可能性があります。しかし、中国が台湾に対して軍事行動を起こした場合、アメリカは大統領が誰であれ軍事的に介入するでしょう。日本やオーストラリアも参戦することになります。
危険なのは、中国に「アメリカは軍事介入せず、関税だけで対応する」という誤った認識を与えてしまうことです。
Q. 新しい世界秩序はどのように形成されていくのでしょうか?
現在、世界は新たな冷戦状態に向かっています。アメリカは同盟国に圧力をかけ、中国に高度な技術を提供しないよう要求しています。一方、中国は自国で技術開発を進めています。
この結果、技術の互換性が失われ、「アメリカ標準」と「中国標準」という別々のシステムが生まれ、市場もブロック化していくでしょう。かつてのアイアンカーテン(鉄のカーテン)のような分断線が形成される可能性があります。
この状況は日本にとってリスクでもありチャンスでもあります。カーテンに近い場所に位置する国として、両ブロック間の貿易の要となる可能性があります。また、サプライチェーンの日本回帰も期待できます。
Q. 米ドルの覇権は揺らぐのでしょうか?
ロシアの海外資産凍結は、ドルの覇権を揺るがす可能性のある「悪手」だったと考えています。これにより、他の国々は「アメリカと対立した場合、自国の資産も凍結されるかもしれない」という不安を抱くようになりました。
この結果、多くの新興国の中央銀行が金を買い漁るようになり、ドルへの依存度を下げようとする動きが広がっています。
現在、国際貿易では基本的にドルが介在しています。例えば日本と中国の貿易でも、直接円と人民元で決済するのではなく、ドルを介して決済しています。しかし、今後は金に連動したデジタル資産など、代替的な決済手段が模索される可能性があります。
BRICSのような新興国グループは、こうした代替的な決済システムを構築しようとしているかもしれません。ただし、完全にドルに取って代わるものを作るのは容易ではありません。