PIVOT TALK BUSINESS
採用はマーケティングとオペレーションが肝心
(154)
7,882回視聴
2024年10月31日

採用活動において、マーケティングとオペレーションが成果の差を生むと説く、ワンキャリアの北野唯我氏。内定辞退を防ぐために気をつけることなど採用担当の悩みと解決方法について聞いた。
「うちに優秀な人材が来ない…」その悩み、採用戦略の3つの鍵で解決できる
新卒採用も中途採用も、多くの企業が「いい人材が来ない」という課題を抱えている。なぜ思うような採用ができないのか?採用のプロフェッショナル・北野唯我氏は「採用成功には3つの鍵がある」と指摘する。採用活動をサイエンスとして捉え、データに基づいたアプローチで成果を上げるために必要なことを解説しよう。

Q. 採用成功のための3つの鍵とは何ですか?
採用成功のための3つの鍵は「企業イメージ」「採用マーケティング」「採用オペレーション」です。これらはいずれも重要ですが、特に採用マーケティングは、年間採用人数が数十人後半から3桁、4桁になるような企業では極めて重要になります。
採用人数の規模が数十人以下の企業では、採用オペレーション(連絡や面接での会話など)の重要度が高いですが、規模が大きくなるとオペレーションだけでは永遠に忙しくなり、採用単価も上がっていくだけです。そのため、採用マーケティングの重要性が増していきます。
Q. 採用マーケティングで最も重要なことは何ですか?
採用マーケティングでは「タイミング」が最も重要です。採用活動において適切なタイミングを押さえ、オンタイムであることが成功の鍵となります。
例えば新卒採用では、10〜20年前と比べてスケジュールが前倒しになり、企業の動き出しが早くなっています。数十人や数百人を採用する企業であれば、求人公開やイベント参加のピークタイミングを押さえることが不可欠です。
中途採用でも、市場が動き出しやすいタイミングがあります。ボーナス支給後や入社3年目くらいのタイミングは転職を考える人が増えるため、そのタイミングを狙ってスカウトを出したりイベントに出たりすることが重要です。
Q. タイミングを意識した採用活動ができていない企業が多いのはなぜですか?
実は多くの企業がこのタイミングを意識できていません。「誰もいないところにボールを投げている」状態で、それでは採用が成功するはずがありません。
特に中堅中小企業や地方企業では、大企業が攻めまくっているタイミングで勝負すると負けてしまう可能性が高いです。そのため、日和見戦略的に就職・採用市場に出店したりマーケティングしたりする方法もありますが、前提としてタイミングを理解していないと戦略も打てません。
採用担当者は社内からさまざまな要望を言われ、相談できる相手もいないことが多く、孤独に戦っている状況です。しかし採用スケジュールは答えが決まっているものなので、適切な情報に触れることで解決できます。
Q. 採用ターゲットを「言語化」するとはどういうことですか?
採用活動を始める企業に「採用ターゲットは決まっていますか?」と聞くと、「地頭が良くて元気な人」「経験者がいい」といった回答が返ってくることがあります。しかし、このようなセグメントではマーケティングができません。「地頭がいい人のコミュニティ」というものは存在しないからです。
そのため、デジタルに分類できる指標で採用ターゲットを言語化することをお勧めします。新卒採用であれば、エリア、大学、部活やサークル、ゼミや研究室などのセグメントを明確にします。
これは経営層と現場のすり合わせを行う重要な機会でもあります。経営側が「東大や早慶の学生を採りたい」と言っても、現場が「それは無理です」と感じていることは多いものです。最初の段階でこのすり合わせをしておかないと、後で「経営からこう言われているけど、無理なんです」という悩みが大きくなってしまいます。
Q. 採用競合を設定する重要性について教えてください
意外と見落とされがちなのが「採用競合の設定」です。自社の採用競合がどこなのか答えられない企業は多いですが、これは必ず定義すべきです。
採用活動の最大の特徴は、基本的に1人が1社しか入社しないということです。つまり、採用に失敗したということは、どこかの競合企業に負けたということになります。
重要なのは、事業上の競合と採用上の競合は必ずしも一致しないという点です。例えばメガバンクは事業上では他のメガバンクと競合していますが、採用面ではコンサルティングファームや総合商社と競合していることがあります。
採用競合を知るには、内定者や採用したかった候補者に「他にどこを受けていましたか?」と聞くだけでも効果的です。また、「ワンKクラウド」のようなサービスを利用すれば、例えばトヨタを受けている学生が重複してどの企業を受けているかといったデータを得ることもできます。
Q. 内定辞退の主な理由と対策について教えてください
内定辞退は企業にとって大きな課題です。内定辞退には主に4つのパターンがあります:
1. 他社からより魅力的なオファーが出た
2. 企業文化やチームとのフィット感の欠如
3. オンボーディングプロセスや採用プロセスの不透明さ
4. コミュニケーションの欠如
内定辞退を防ぐためには、まず給与が重要です。しかし、給与で勝てない場合は、オファーにアサインメントを付加する、つまり候補者の状況に応じて細かいケアを具体的に提案することで、金銭的なオファーで負けても他の部分で勝てる可能性があります。
大谷翔平選手が高校卒業後に日本に残るか大リーグに行くかで迷った際、日本球団はフルカスタマイズしたプランを提示し、「あなたの人生にとってベストなのはこちら」と提案して口説き切りました。それほど徹底的なカスタマイズまでは難しくても、候補者一人ひとりに合わせたアプローチが重要です。
Q. 入社後の定着と活躍を促すためにできることはありますか?
入社することが目的ではなく、入社して定着し活躍することが本当の目的です。そのため、入社後の定着と活躍のための施策がどうなっているかを丁寧にコミュニケーションすることが重要です。
例えば、入社後1ヶ月、3ヶ月、1年といった単位で、どのように活躍してもらう予定なのかというプランを採用マネージャーが作成し、候補者に説明することが効果的です。「入社後に何を期待されていて、どんな支援があって、1年後にどうなっていてほしいのか」を知ることで、候補者は安心して入社を決断できます。
これは手間のかかる作業ですが、ワードを作るだけなので基本的にはコストがかからず、本気があれば実行可能です。採用に強い会社は、このようなオンボーディングプロセスをしっかりと行っています。
Q. アラムナイ(卒業生・退職者)施策の現状はどうなっていますか?
日本でもアラムナイ施策は以前よりも進んでいます。特にテクノロジー業界や総合商社、メガバンクなどの大企業では、ここ5年ほどでアラムナイとのコミュニケーションや支援を明確に打ち出すようになりました。
「転職した人は裏切り者」という考え方を持つ企業は減少し、うまくいけばウィンウィンの関係になれるという認識が広がっています。実際、会社を辞めた人は、ポジティブな体験をしていれば企業の「一番の宣伝部長」になり得ます。そのため、アラムナイとの関係構築やコミュニケーションは非常に重要です。
採用強い企業は、退職者も含めた採用のポートフォリオ全体をコントロールする視点を持っています。新卒採用だけでなく、中途採用やエグゼクティブ採用など、さまざまな採用チャネルを組み合わせることで、人材の流動性に対応しているのです。
Q. 採用活動の本質的な難しさは何ですか?
採用活動は「適当にやろうと思えば簡単な仕事だが、確実に成果を出そうと思うとこれほど難しい仕事はない」というのが実情です。
採用活動には明確なゴールがあり、それに対して緻密なプロセスを設計し、データに基づいて実行する必要があります。こうした採用のサイエンス化が進んでいる一方で、多くの企業ではまだ感覚的な採用が行われています。
しかし、人材獲得競争が激化する中で、採用のプロフェッショナルによる戦略的な取り組みがますます重要になっています。企業イメージの構築、適切なタイミングでのマーケティング、そして細やかなオペレーションの3つが、採用成功の鍵となるのです。