PIVOT TALK BUSINESS
採用9箇条 人事・転職の思考法
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2024年10月31日

採用活動において最優先事項は企業イメージと説く、ワンキャリアの北野唯我氏。優秀な人材を獲得するために、人事がこだわるべきポイント、転職者がチェックすべき項目、就職・転職の口コミサイトについて聞いた。 <ゲスト>北野唯我|ワンキャリア取締役 執行役員CSO 1987年生まれ、兵庫県出身。神戸大学経営...
「採用活動=麻雀」説。リクルーティングを「期待値の高い行動」で変革する4つのステップ
採用コストが増大し人材確保が困難な今日の環境で、企業はどのように差別化すべきか。ワンキャリア取締役執行役員CSO・北野唯我氏は「採用活動は麻雀のように期待値の高いことをやり、低いことを避けるべき」と主張する。この理論に基づく企業イメージ向上と候補者体験の最適化について、具体的方法を解説する。

Q. 現代の採用活動で企業が直面している最大の課題は何ですか?
現代の採用活動において企業が直面している最大の課題は、採用難易度の上昇だ。これにより、事業目標やKPIを達成するために必要な人材が集まらない状況になっている。
この背景には主に3つの要素がある。1つ目は人口減少、2つ目は賃上げ、そして3つ目は転職を前提とした就職活動の増加だ。これらの要素により、企業間の採用競争は激化し、魅力的なオファーがなければすぐに人材が流出する構造になっている。
特に外資系企業、とりわけ高年収の外資系コンサルティングファームなどが採用数を増やしていることも大きな要因だ。欧米の視点から見ると、日本は賃金が安く、優秀な人材を安価に大量採用できる市場として位置づけられている。このような構造的問題により、日本企業は以前なら確保できていた層にアクセスできなくなっている。
Q. 企業イメージは本当に採用成功の決め手になるのでしょうか?
企業イメージは採用成功において最も重要な要素だ。例えば総合商社のような企業イメージが良い会社は採用が強い。新卒採用はもちろん、そこで構築された良いイメージが中途採用にも好影響を及ぼし、求人を出せばすぐに埋まる構造になっている。
企業イメージは採用活動だけでなく、他の人事課題にも影響を与える。例えば配置の問題では、企業イメージが良く、社員が会社に対してロイヤリティを感じていれば、配置転換があっても前向きに受け止めて頑張ろうという気持ちになる。逆に企業イメージが良くなければ、異動の指示があった際に退職を検討するかもしれない。
このように企業イメージは、入社後の育成や評価、報酬といった人事制度全体に間接的に影響を及ぼすものだ。採用に強い企業は企業イメージへの投資を継続的に行ってきたが、弱い企業はそれを怠ってきた傾向がある。
Q. 企業イメージとは具体的にどのようなものですか?
企業イメージは「評判×認知率」という2軸で整理できる。縦軸の評判はスコア化するなら口コミが分かりやすい指標となる。レストランでいえば食べログの評価点数のようなものだ。横軸の認知率は、従来からある人気ランキングやエントリー数などで示される。
全ての企業はこの図で言えば左下の出発点から始まり、最終的には評判も良く認知率も高い右上を目指すことになる。就職ランキングについては「就職したことがない学生が作るランキングに意味があるのか」という批判もあるが、現在は口コミやリファラル採用などで情報が得られるため、実態と評判の乖離は小さくなっている。嘘をつけない状態になっているのが現状だ。
評判が良い企業と認知度が高い企業は必ずしも一致しない。採用戦略も異なり、採用人数が少ない企業は必ずしも高い認知率を目指す必要はない。むしろエントリーが多すぎると採用作業が大変になる。一方、労働環境の厳しさなどから評判を高めにくい業種でも大量採用が必要な場合は、まず認知率向上を目指し、その後評判改善に取り組むルートもある。
例えば、ベイン・アンド・カンパニーやマッキンゼーは採用人数が多くないため、多くの人に知られるよりも、採用ターゲット層にしっかり認知されることを重視している。一方、野村総合研究所は採用人数も多いため、右上のポジションが望ましい。
Q. 企業イメージが弱い、または悪い場合、どのように改善すればよいですか?
企業イメージが弱い、または悪い場合は、4つのステップで改善することが可能だ。
1. まず「質的なゴール」を決める。どのように思われたいのかという目標設定だ。例えば、キーエンスのように「社員の努力が報酬で還元される会社」というイメージを目指すのか、三菱商事のように「グローバルで活躍できる人材を育てる会社」というイメージを目指すのか、方向性を明確にする必要がある。
2. 次に「フェーズを決める」。企業イメージが全くない時、ある程度ある時、大きく変える時で取るべき行動は異なる。フェーズは「構築期」「調整期」「変革期」の3段階に分けられる。構築期は何もない状態から作り上げる段階、調整期は既に知名度があり微調整する段階、変革期は事業再編などで大きくイメージを変える段階だ。
3. 3つ目は「体験資産を整える」。社員体験や候補者体験など、口コミや評価点数につながる要素を強化する。
4. 最後に「コンテンツポートフォリオを設計する」。採用広報などのコンテンツを戦略的に管理する。
このうち特に「質的ゴール」は企業の経営層が決めるべきことだが、現実的には採用担当者の立場からでも設定可能だ。また「フェーズ決め」では、何もしなくてもどれくらいの応募やエントリーが来るかで判断できる。例えば構築期であれば年間数百名以下、調整期なら数千名が来るような状態だ。変革期は経営トップのメッセージによって判断すべきものだ。
Q. 候補者エクスペリエンスとは何ですか?なぜ重要なのですか?
候補者エクスペリエンス(体験)とは、採用プロセスにおける応募者の体験全体を指す。社員体験(従業員エクスペリエンス)が根本的に重要だが、これはすぐには変えられない大きな課題だ。一方、候補者エクスペリエンスはより現実的に改善できる領域だ。
良い候補者エクスペリエンスと悪い候補者エクスペリエンスの違いは明確だ。例えば、面接後のフィードバックが全くない、情報が不透明、なぜ合格/不合格になったか分からないといった状況は、候補者にとって不快な体験となる。一方、迅速なフィードバックや透明性のある情報提供は良い体験を生む。
候補者エクスペリエンスの改善は、実はほとんど予算を必要としない。むしろ、人事部と採用責任者、経営者が「候補者視点」で徹底的に考え、実行する意志があるかどうかの問題だ。例えば、内定者に対して社員との座談会を設けるだけでも、内定承諾率が30%から70%に上がるケースもあり、投資対効果は非常に高い。
これを怠ると、どれだけ採用広告に投資しても「穴の開いたバケツに水を注ぐ」ような無駄遣いになってしまう。実際、採用に関する口コミで多いのが、「商品とは関係ない配送の遅さでレビューが低評価になる」現象と同じで、採用プロセスの体験が企業評価全体に大きく影響する。
Q. 採用のためのコンテンツはどのように設計すべきですか?
採用コンテンツの設計では、「8つのコンテンツポートフォリオ」を意識することが重要だ。これは求職者が企業選びの意思決定において重視する8つの要素に基づいている。
1. 企業理解(ビジョン・ミッションなど)
2. 事業理解
3. 社員・社風理解
4. 職種理解
5. キャリアパス理解
6. 業界理解
7. 採用情報
8. 候補者ガイド
多くの企業では、企業理解のコンテンツは用意されていても、職種理解やキャリアパス理解、業界理解などのコンテンツが不足している傾向がある。特に職種理解は、20代の候補者が自分のスキルや専門性を築けるかを判断する上で重要だ。
また、各カテゴリーに必要なコンテンツ量も異なる。例えば企業理解は1〜2本で十分な場合もあるが、社員・社風理解は様々な部署や働き方を示すために多くのコンテンツが必要になる。
採用に強い企業は、この8つの要素をバランスよく押さえたコンテンツ設計をしており、自社のウェブサイトやオウンドメディアでこれらの要素が網羅されているか確認し、不足している部分を補完することが重要だ。また、コンテンツの鮮度も重要で、10年前の情報や既に退職した社員の情報などは更新すべきだ。
実際に多くの企業が「記事を作った」「動画を出した」にもかかわらず効果がなかったと感じるのは、こうしたコンテンツの目的や体系が不明確だからだ。8つのカテゴリーを意識し、金融資産のポートフォリオのように戦略的に管理することで、採用コンテンツの効果を最大化できる。
Q. 採用活動を「麻雀」に例えるのはなぜですか?
採用活動を麻雀に例えるのは、両者に共通する「確からしいものが何もない」という特性があるからだ。採用は最終的に人間の感情に紐づいており、内定者の気持ちは一瞬で変わる可能性がある。そのため、100%確実な方法は存在しない。
この不確実性の中で重要なのは、期待値の高いことを実行し、期待値の低いことを避けることだ。麻雀やポーカーの強い人は、10回やって10回勝つことを目指すのではなく、大負けを避けつつ期待値の高い行動を取り、トータルで勝つことを目指す。
採用活動でも同様に、期待値の高い施策(良質な企業イメージづくり、候補者エクスペリエンスの向上など)に投資し、期待値の低い施策を排除することで、全体の効率性を上げることができる。人口減少というマクロ環境は変えられなくても、採用活動の質を高めることで成果を出せる可能性は十分にある。
このように、採用活動をサイエンスとして捉え、データに基づいた戦略的アプローチを取ることで、厳しい採用環境の中でも競争優位性を構築できる。採用の成功は運や偶然ではなく、計算された期待値の積み重ねによってもたらされるのだ。