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政治不安定化で「1ドル=160円」が早まる
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2024年10月30日

自公大敗による政治不安定化は、円安を加速させるのか?大統領選挙の結果は、為替にどう影響を与えるのか? 為替ストラテジストの佐々木融氏に分析してもらった。 <ゲスト> 佐々木 融 ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト 2023年12月から現職。日本銀行で調査統計局などを経て国際局(...
「年度内に160円に戻る可能性あり」-経済専門家が予測する総選挙後の円安リスク
衆議院選挙の結果を受けて円安が進行している。今後の為替相場はどうなるのか?米大統領選の影響は?今週の雇用統計でチェックすべきポイントは?福岡フィナンシャルグループのチーフストラテジスト佐々木融氏に話を聞いた。

Q. 最近の円安進行の背景は?
最近の円安傾向は、アメリカの利下げ期待の後退が主な要因となっている。これがドル高を促し、ドル円相場を押し上げている。具体的には、アメリカの金利上昇がドルを強くし、結果としてドル円レートが上昇している状況だ。
Q. 総選挙の結果はマーケットにどう影響している?
総選挙で自民党が惨敗し、政権が不安定化したことで、円売りが進んだ。これは構造的な円安要因に加えて、新たな円安材料が追加された形だ。
円が強くなるためには、日本に資本が流入するような政策が必要だが、そうした政策は国民に不人気でも実行する強い政権基盤が必要となる。しかし政権が弱体化すると、必要な政策を実行できなくなる。
最も明確な例が日銀による利上げだ。政権が強ければ、インフレ率の高さを理由に利上げを正当化できるが、政権が不安定な状況では、利上げによって株価が下落した場合に批判を浴びやすくなる。そのため、積極的な利上げは難しくなる。
また長期的に見ても、日本に資本を引き付けるための構造改革も難しくなる。現状では連立政権が形成される可能性が高く、どのような組み合わせになるにせよ、財政支出拡大や高圧的な経済政策が取られる可能性が高い。これは構造改革とは逆方向の政策となり、円安を促進しやすい環境となる。
Q. 選挙翌日の株価が反発したのはなぜ?
株価が反発したのは、端的に言えば円安効果だ。日本の経済が本来の意味で強ければ、円高でも株価は上昇するはずだが、現在の日本経済は弱い状態にあり、株価を押し上げる要因として円安しか頼るものがない状況になっている。
選挙結果を受けて最初は株価が下がると予想されたが、朝から円安が急速に進んだことで、企業収益拡大期待から株価も上昇に転じた。
Q. 今後、政権交代があった場合の市場への影響は?
例えば自民党総裁が石破氏から高市氏に変わる可能性が出てくれば、9月下旬に見られたような円安・株高の流れが再現される可能性がある。また、国民民主党や日本維新の会が連立に加わるケースでも、似たような市場の反応が予想される。
これらの政党はいずれも財政支出拡大や減税を志向する傾向があり、インフレ圧力が高まりやすい政策を採用する可能性が高い。そうした中で金利が上げられなければ、実質金利のマイナス幅が拡大し、円は弱くなりやすい。それが株価を押し上げる要因となる。
立憲民主党の野田代表が首相になるケースでも、連立を組む必要があることを考えると、方向性としては同様の傾向になるだろう。
Q. 年内に円は160円に戻る可能性はある?
年内に160円まで行くのは難しいかもしれないが、年度内、つまり来年3月末までに160円に戻る可能性は十分にある。
ただし、ドル円相場は上下動を伴いながら、ボラティリティの高い状態で円安基調が続くと予想される。米国の大統領選挙やその後の日米両国の政権動向など、不確定要素が多いため、一方的な動きではなく変動を伴いながらの推移になるだろう。
Q. 当局による為替介入の可能性は?
通貨当局による為替介入の可能性はあるが、現状では難しい面もある。日米両国で政権が不安定な状況では、介入に関する合意形成が困難になる可能性がある。
前回の介入は161円台で行われたが、それを超え、かつ為替変動のスピードが加速した場合に、アメリカとの合意ができれば介入が行われる可能性はある。しかし、日本の政権が安定せず、アメリカも大統領選挙の最中という状況では、そうした合意自体が取りにくい。
Q. 米大統領選挙の結果は為替にどう影響する?
一般的に、トランプ氏が大統領になった場合はアメリカの株価が上昇するというのがコンセンサスだ。所得税減税や法人税減税への期待が強いためだ。ハリス氏が当選しても株価が売られるわけではないが、トランプ氏当選時に比べると買われにくいと予想される。
為替に関しては、トランプ氏が大統領になればドル高になるという見方が強い。トランプ氏は過去に円安や人民元安に批判的な発言をしたことがあるが、現在のアメリカ人が最も懸念しているのはインフレであり、ドル安はインフレを助長するため、そのような政策は取らないだろう。
8年前の大統領選挙直後には、トランプ氏の当選後2ヶ月ほどでドルの実効レートが約6%上昇し、ドル円も約15%上昇した。この記憶から、トランプ氏が大統領になればドル買いが進むという見方が強い。
さらに金利面では、どちらが大統領になっても財政支出拡大的な政策となる可能性が高い。トランプ氏の場合は大企業や高所得層、ハリス氏の場合は中小企業や中低所得層が政策の恩恵を受ける違いはあるが、いずれにせよ財政支出は拡大し、金利上昇圧力となる可能性が高い。
特に注目すべきは議会構成だ。大統領と議会の多数派が同じ党で占められると、財政政策が実行しやすくなり、金利上昇圧力が強まる。つまり、トランプ氏が大統領になり、上院も下院も共和党が多数を占める場合、ドル円相場は最も上昇しやすいシナリオとなる。
Q. 今週発表される雇用統計のチェックポイントは?
今回の雇用統計はハリケーンとストライキの影響で弱く出ると予想されている。非農業部門雇用者数は中央値で11万人増と予想されているが、予測のばらつきは大きく、前月比マイナスという予想から16万人増という予想まで幅広い。
市場への影響は非対称的になる可能性が高い。予想より弱い結果だった場合は「ハリケーンやストライキの影響だった」と解釈され、市場への影響は限定的だろう。一方で予想より強い結果が出れば「予想外に強い」と受け止められ、市場への影響は大きくなる可能性がある。
現在のドル円相場は、先物市場が織り込む2025年末までのFF金利予想とほぼ連動して動いている。0.25%ポイントの利下げ期待の後退でドル円相場が4円動くという関係性が見られる。現在は来年末までに125ベーシスポイント(5回)の利下げが織り込まれているが、これが75ベーシスポイント(3回)まで減れば、160円に到達する可能性がある。
雇用統計が予想外に強ければ、利下げ期待が後退し、ドル円上昇につながる可能性が高い。