MONEY SKILL SET EXTRA
アメリカ大統領選が与える為替インパクト
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2024年10月28日

株・保険・住宅など資産運用にまつわるスキルセットを一流のプロの講義を受けて学ぶMONEY SKILL SETの応用編。今回はソニーフィナンシャルグループ・チーフアナリストの尾河眞樹氏を講師に招いて激動する為替相場の読み解き方について学ぶ <ゲスト> 尾河眞樹(ソニーフィナンシャルグループ 執行役員...
米大統領選と為替の行方、投資ポートフォリオのバランスは?専門家に聞く
アメリカ大統領選挙の結果によって為替や投資環境がどう変化するのか。また投資の一極集中は本当に危険なのか。通貨の分散についても含めて、投資の専門家・尾河眞樹氏に直撃。投資初心者にもわかりやすく解説してもらった。

Q. アメリカ大統領選挙の結果によって為替への影響はありますか?
為替への影響は確実にあります。選挙結果が決まった直後は「御祝儀相場」のような形で、ドル買いや株高が発生する可能性があります。
トランプ氏が当選した場合は、前回2016年の時と同様、「トランプラリー」と呼ばれる相場が出現するかもしれません。トランプ氏は大規模減税を公約としており、それに対する期待から株高・ドル高が進む可能性があります。
しかし時間の経過とともに、保護主義的な政策や中国への関税引き上げなどが表面化すると、株安やドル安に転じる可能性もあります。彼の政策は当時と今で基本的に変わっていないため、どの政策が先に実行されるかによって、為替への影響も変わってくるでしょう。
一方、ハリス氏の場合は現状維持的な政策が予想されます。民主党政権の継続となるため、中間層や低所得者層向けの減税を掲げていますが、それによってインフレリスクが高まる可能性も考慮する必要があります。
Q. アメリカの株式市場(S&P500)は年末にかけて上昇していくでしょうか?
アメリカの景気動向によって大きく左右されるでしょう。最近、失業率が悪化するなど景気に陰りが見え始め、それが理由でFRB(米連邦準備制度理事会)は0.5%という大幅な利下げに踏み切りました。
この利下げについてパウエルFRB議長は「予防的な措置」と説明しており、現時点では景気はそれほど悪くないという見解を示しています。このような予防的な利下げは株式市場にとってはポジティブな材料と言えるでしょう。
もし今後本格的に景気が悪化するとなれば、アメリカの株価にも厳しい展開が予想されますが、今回の利下げがそれを予防するための措置であれば、株式市場は比較的安定した動きを見せる可能性があります。
Q. 投資の一極集中は本当に危険なのでしょうか?
投資は基本的に「ハイリスク・ハイリターン」の原則があります。一極集中型の投資を自己責任で行うことは可能ですが、リスクを理解した上で行う必要があります。
特に投資初心者の方や、相場の下落時に不安になりやすい方は、分散投資を心がけるべきです。8月に市場が急落した際も、本来なら「買い時」と捉えられる場面でも、恐怖から売ってしまう投資家もいました。
分散投資の基本は、株式などのリスク資産と債券などの安全資産をバランス良く保有することです。これにより、「枕を高くして眠れる」状態、つまり精神的な安定を得ることができます。
また、分散のもう一つの重要な側面として「買うタイミングの分散」があります。究極の形は積立投資ですが、一度にすべての資金を投入せず、市場が下落した際に追加で購入できる余力を残しておくことも重要です。
年齢に応じたポートフォリオ調整も考慮すべきです。20代であれば米国株中心の積極的な投資も選択肢になりますが、30代、40代と年齢を重ねるにつれて、債券や安全資産の比率を徐々に増やしていくことが望ましいでしょう。
Q. グローバル投資の意義について教えてください
日本と世界の潜在成長率の差を考えると、グローバル投資の重要性が明確になります。潜在成長率とは、国の実力ベースの長期的成長率を示すもので、アメリカは2%超、ユーロ圏が1.4〜1.5%程度であるのに対し、日本は0.7%程度にとどまっています。
この差を考えると、資産の中に「世界の成長」を取り込む必要があります。そのため、米国株や欧州株などへの投資が重要になってきます。
ただし、日本株でもグローバルにビジネス展開している企業であれば、その企業自体が世界の成長を取り込もうとしているため、有効な投資先となり得ます。例えば、クボタのようにグローバルに展開している日本企業への投資も戦略として有効です。
Q. 通貨の分散も必要でしょうか?
通貨の分散も重要な要素です。ただし、分散するならば「同じ値動きをしない」通貨を選ぶことがポイントです。例えば、オーストラリアドルとニュージーランドドルは値動きが似ているため、両方持っても効果的な分散にはなりません。ユーロとポンドも同様です。
米ドルを基本としつつ、オーストラリアドルなど値動きの異なる通貨を組み合わせるのが理想的です。
南アフリカランドやトルコリラなどの高金利通貨については、インフレリスクが高く通貨安になりやすいという特徴があります。以前は低金利時代に人気がありましたが、近年は米ドル自体の金利が上昇したため、わざわざリスクの高い通貨に投資する必要性が低下しています。
Q. 外貨や暗号資産への投資も検討していますが、どのようなアプローチが良いでしょうか?
外貨や暗号資産についても、積立投資が効果的です。例えば、毎月一定額を米ドルに変えていく方法は、円高時には多くのドルを、円安時には少ないドルを購入することになり、効率的にドル資産を形成できます。
ビットコインについても、以前に比べて安定性が増してきており、金に似た値動きを見せることもあります。こちらも積立投資が適しているでしょう。
投資をする際の重要な側面として、「投資を通じた学び」という視点も持ちましょう。外貨や海外株式に投資すると、自然とその国のニュースや経済状況に関心を持つようになります。これは長期的に見れば「自分自身への投資」となり、知識の蓄積につながります。
Q. 日本の国力低下や円安について心配する必要はありますか?
現時点ではそこまで心配する必要はありませんが、将来のリスクには注意が必要です。日本の財政状況において、歳出と税収のギャップが大きく、国債発行で補っている現状があります。
最近流行の「MMT(現代貨幣理論)」では、通貨発行権を持つ国は借金を心配する必要がないという考え方がありますが、これはインフレにならない限りという条件付きです。
もしインフレが加速した場合、中央銀行も国の財政も大変な状況に陥る可能性があります。健全な競争と適切なセーフティネットのバランスを取ることが重要で、すべてを政府に頼る姿勢ではなく、国民一人ひとりが情報を集め、考え、選択していくことが求められています。