
地方創生。これが答えだ!
地方創生は絶対うまくいかない!? 日本型政策の根本的誤解と欧州に学ぶ成功の秘訣
日本の地方創生政策は、良かれと思って行われる「善意の無駄遣い」になっていないだろうか。この分野にも多くの誤解があり、官僚や政治家の「万能感」による上からの政策が、地方の現実と乖離している実態がある。雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏が語る、地方創生の真の解決策とは。

Q. 石破政権の地方創生政策は成功するでしょうか?
地方創生の交付金も倍増させるという公約が出ていますが、はっきり言って絶対にうまくいかないでしょう。なぜなら、今までの政策と同じく「水路を作れば水が流れる」という発想で、現場の「さもしい仕組み」を考慮していないからです。
日本の政策の作り方は明らかに間違っています。共産主義や計画経済のように、国が水路を作ればそこに水が流れるという「上からの万能感」で政策を立案しています。理論的に正しくても、民間というのは「グロテスクなさもしさ」で動いており、その歯車の回し方を考えなければ成功しません。
欧米の政策は違います。彼らは基本的に「グロテスクなさもしさの歯車をどう動かすか」に焦点を当てています。欧州のエリート社会では、下層民のことを「下層民だと思っている」からこそ、彼らが動く仕掛けを作っているのです。
Q. 地方創生政策はこれまでどのような歴史をたどってきたのでしょうか?
日本の地方創生政策は、1958年から始まって66年もの歴史があり、現代の貨幣価値に換算すれば100兆円近い予算が投じられてきました。しかし、東京一極集中は止まるどころか、さらに加速しています。
高度経済成長期には「新産業都市」や「工業特別整備地域」のように、立地条件の良い場所に資本と企業を集中させ、インフラを整備すれば大きな都市ができるという発想でした。確かに最初は少し成長率が高かったものの、次第に効果が薄れていきます。
それでも国は「テクノポリス」「田園都市構想」「リゾート開発」「産業クラスター」など、10年ごとに名前を変えながら同じような政策を繰り返してきました。最近では「デジタル田園都市構想」のように、過去の政策を全部合わせたような名前になっています。やり方も「ベストプラクティスを探してコンテスト形式で表彰する」という手法が繰り返されています。
Q. 神山町(徳島県)のような成功事例はどう評価すればいいのでしょうか?
神山町はUIターン者が町の約3割を占め、成功事例として視察が絶えない地域です。しかし実態を見ると、UIターン者のほとんどは「地域おこし協力隊」「集落支援協力隊」「自然財団」「漁業研修生兼農業研修生」など、期限付きの準公務員です。期限が終われば多くが帰ってしまうため、現在は転出超過になっています。
さらに、島根県内でも財政状態が最も悪くなっています。「サザエのカレー」などの産業も売上はわずかで、最大の収入源は視察に来る人々が利用するホテル収入かもしれません。
こうした「成功事例」はコンサルがパッケージ化して全国に広め、各地で同じような取り組みが行われますが、地方行政の人々は悪気なく従っています。彼らは上から来た施策を必死に実行する「戦場の舞台長」のような立場なのです。
Q. フランスのような欧州諸国では地方創生をどのように成功させているのでしょうか?
フランスでは「どうやって人や企業を地方に寄せるか」ではなく、「どうやって出て行かないようにするか」という発想です。つまり「封じ込め」の戦略を取っています。
その仕組みの中心は「グランゼコール」と呼ばれるエリート養成機関です。フランスには約180のグランゼコールがあり、各地方の商工会議所が運営しています。企業は「見習い訓練税」として人件費の0.6%を支払い、それをグランゼコールに納めることで学生への奨学金や給与に充てることができます。
具体的には、企業が学生の年間400万円の学費を支払い、さらに月10万円以上の給与も提供します。学生は企業での実習も行い、企業にとっては「囲い込み」の効果があります。地方の中小企業の親父さんたちも資金を出し、地元の優秀な若者や二代目、三代目を教育し、地域に残す仕組みができているのです。
これにより、地方に残った若者たちは地域内の人脈やビジネスネットワークを形成し、「出ていきづらい環境」が自然に構築されます。
Q. 日本の大学をグランゼコール型に改革することは可能でしょうか?
日本の大学の問題点は、まず規模が大きすぎることです。アメリカのエリート大学でも1学年1500〜2000人程度ですが、日本の早稲田大学は1学年11000人、慶應義塾大学でも1学年が大きすぎます。一方、フランスのグランゼコールは200〜300人規模が一般的です。
日本の国立大学も1学年1000〜1500人と多すぎるので、その中から地元のエリート50名と御曹司200名程度を選び、エリートコースを作るべきです。このコースでは企業とつながり、実習や奨学金、交換留学などの特典を提供します。
例えば徳島大学であれば、大塚製薬や日亜化学、ジャストシステムなど地元の優良企業と連携し、学生が卒業後も地元に残るインセンティブを作ります。こうした仕組みがあれば、東京の大学に行くよりも地元に残る選択をする学生も増えるでしょう。
Q. 外国人材を活用した地方創生の可能性はありますか?
外国人材の活用は地方創生の大きなカギになります。日本は円安でも給与水準は中国の3〜7倍あり、依然として人気がある国です。この強みを活かすべきです。
具体的な戦略として、地方自治体が特定の国と協定を結び、現地に専門学校を設立して技能実習生や特定技能人材の養成と選抜を行います。優秀な人材を選んで地方に招き、彼らの親や家族を定期的に招待するなど「ジャパニーズドリーム」を提供します。
さらに、技能実習から8年間日本で働いた優秀な外国人の上位1〜2割を地方の短大や専門学校に無償で入学させる制度も考えられます。彼らは学びながら週28時間のアルバイトも可能なので、企業との連携も図れます。
こうした取り組みを発展させて、ベトナム人街などの「まるまる人外」を作れば、インバウンド観光の拠点にもなり、地域経済の活性化につながります。
Q. 自動運転技術は地方創生にどう貢献できますか?
自動運転のレベル4(L4)技術は地方創生の大きな武器になります。これまでのコンパクトシティ構想は、すべてを再配置するために多額のコストがかかりますが、L4技術があれば「駅前」や「コンパクトシティ」という概念自体が不要になります。
まず第一段階として「巡回ビジネス」が考えられます。コンビニや飲食店、ATMなどが自動運転車に乗って定時に地域を巡回するサービスです。次の段階ではオンデマンド形式のタクシーが実現し、さらに発展すればライドシェアで最寄りの車が自動的に迎えに来る仕組みができます。
この仕組みは地方の方が圧倒的に有利です。交通量が少なく、交差点も少ないため、自動運転の許可を取りやすいからです。さらに、地域内のL4化と高速道路のL4化が進めば、大都市から200km圏内はどこでも2時間以内で行き来できるようになり、「田舎」という概念すら変わるでしょう。
地方こそ家も広く、地価も安く、生活の質が高いので、こうした技術と組み合わせれば、地方の優位性が一気に高まります。