
リクルートは人材育成に300時間かける【蝦名秀俊】
リクルート式「よもやま」が優れた1on1ミーティングである理由とは?管理職は年間300時間を人材育成に投資している
「あなたはどうしたいの?」というウィルハラから「一緒にどうするか考える」へ。リクルートが実践する「よもやま」と呼ばれる1on1ミーティングの秘密に迫る。

Q. リクルートが「よもやま」と呼ぶ1on1ミーティングとは何ですか?
「よもやま」はリクルート内で行われる1on1ミーティングの呼び名です。一般的な1on1と大きく異なる点は、ノーアジェンダで実施することが多いという点です。つまり、事前に決められた議題なしに、メンバーが話したいことを自由に話せる場として機能しています。
多くのリクルート社員は上司と毎週または隔週でよもやまの時間を設けており、業務に関する話だけでなく、育児の大変さなどプライベートな話題も含めて何でも話せる場となっています。これにより、日常的なコミュニケーションが促進され、信頼関係の構築につながっています。
Q. リクルートの管理職はよもやまにどれくらいの時間を費やしていますか?
調査によると、リクルートの管理職は年間約300時間を人材育成に費やしています。これは勤務時間の10%以上に相当する時間です。その中でも「よもやま」が占める割合は非常に大きく、多くの管理職が毎週または隔週でメンバー全員と1対1の対話の時間を設けています。
この時間は一見すると非効率に思えるかもしれませんが、日常的にコミュニケーションを取ることで、半年に一度の面談よりもはるかに効果的に機動修正を行えるという利点があります。結果として、メンバーのパフォーマンス向上につながり、チーム全体の成果に貢献しています。
Q. よもやまと通常の1on1ミーティングの違いは何ですか?
通常の1on1ミーティングでは、アジェンダ(議題)が事前に設定されていることが多いですが、よもやまはノーアジェンダが基本です。アジェンダを持たずに臨むことで、メンバーが本当に話したいこと、悩んでいることに焦点を当てることができます。
また、よもやまでは上司が話す比率が低く、メンバーが主に話す場となっています。上司はメンバーの話を「リスン・トゥ・ラーン」(学ぶために聞く)という姿勢で聞き、メンバー自身が解決策を見つけられるよう支援します。
さらに、よもやまでは感情面にも焦点を当てます。メンバーが「楽しい」「つらい」などの感情のキーワードを出した際には、その感情に着目して「なぜそう感じたのか」を掘り下げることで、メンバーの価値観や動機付けを理解する手がかりにしています。
Q. よもやまで管理職が実践している「聞く姿勢」の3つのレベルとは?
リクルートでは、「聞く姿勢」を3つのレベルに分けて捉えています:
1. リスン・トゥ・ウィン(勝つために聞く):相手を説得するために情報を収集する姿勢。商談などでよく使われる、隠れたニーズを見つけ出して自分の提案に結びつける聞き方です。
2. リスン・トゥ・フィックス(解決するために聞く):問題を解決するために状況を把握しようとする姿勢。多くの管理職がこの姿勢で部下の話を聞き、解決策を提示しがちです。
3. リスン・トゥ・ラーン(学ぶために聞く):純粋に相手のことを知りたいという好奇心から聞く姿勢。相手の感情や価値観を理解することに重点を置きます。
よもやまでは特に「リスン・トゥ・ラーン」の姿勢を意識することが重要とされています。相手の話を純粋な好奇心を持って聞き、特に感情に関するキーワードが出てきたら、「なぜそう感じたの?」と掘り下げることで、より深い理解につなげます。
Q. リクルートの人材育成を支える「Will-Can-Mustシート」とは何ですか?
Will-Can-Mustシートは、リクルートの目標管理と育成計画を一体化したツールです。一般的なMBO(目標管理)シートに育成の視点を加えたものと言えます。
**Will**:本人がやりたいこと、興味関心
**Can**:本人ができること、克服したい課題
**Must**:組織として必要なこと、やらなければならないこと
これら3つの要素をどう重ね合わせていくかを考えながらマネジメントを行います。このシートは半年に一度更新され、4月と10月に設定面談、7月と1月に中間面談、9月と3月に振り返り面談を行う流れになっています。
かつてはウィルを強調するあまり「あなたはどうしたいの?」と問いかける「ウィルハラ」が問題視されることもありましたが、現在は「一緒にどうするか考える」というスタンスに変わってきているとのことです。
Q. リクルートの「人材開発委員会」とはどのような仕組みですか?
人材開発委員会は、半年に一度、組織全体でメンバー一人ひとりの育成計画を議論する場です。直属の上司だけでなく、組織の様々なレイヤーのマネージャーが参加し、横断的な視点でメンバーの育成を考えます。
この委員会の特徴は、一人のメンバーの育成責任を直属の上司だけに負わせるのではなく、組織全体で担うという点にあります。異なる視点や経験を持つマネージャーたちが意見を出し合うことで、より良い育成計画が立てられるとともに、マネージャー同士も互いに学び合うことができます。
また、この仕組みにより、マネージャーは自分の直属メンバーだけでなく、他のグループのメンバーにも関心を持ち、組織全体で人を育てる文化が醸成されています。
Q. リクルートのマネジメントにおいて、信頼関係を構築するために重要なことは何ですか?
リクルートでは、マネージャー自身も一人の人間として自分のことをメンバーに知ってもらうことが重要だと考えられています。役職や肩書きによる上下関係ではなく、同じチームの一員として対等に接することで信頼関係を築いています。
例えば、マネージャー自身が困っていることや悩んでいることをメンバーに共有することで、メンバーからの新たな視点や解決策が得られることもあります。このような経験を通じて、マネージャーは「自分が全部背負わなくてもいい」ということに気づき、メンバーの強みを活かしたチーム運営ができるようになります。
また、メンバーの発言をしっかり覚えておき、後日「前にこういうことを言っていましたよね」と振り返ることも信頼関係構築に役立ちます。これにより、メンバーは「自分のことをちゃんと見てくれている」と感じることができます。
Q. よもやまを成功させるためのコツはありますか?
よもやまを成功させるための主なコツは以下の通りです:
1. ノーアジェンダで臨む:事前に議題を決めず、メンバーが話したいことを自由に話せる場とする。
2. リスン・トゥ・ラーンの姿勢で聞く:純粋な好奇心を持って相手の話を聞き、相手を理解することに集中する。
3. 感情のキーワードに着目する:メンバーが感情に関する言葉を使ったら、「なぜそう感じたの?」と掘り下げる。
4. メンバーの言葉を覚えておく:過去のよもやまでメンバーが話した内容を記憶し、適切なタイミングで振り返る。
5. 問題解決を急がない:すぐに解決策を提示するのではなく、メンバー自身が考えるプロセスを大切にする。
6. 自分のことも共有する:マネージャー自身の考えや悩みも適切に共有し、一方的な関係にならないようにする。
こうしたコツを意識することで、よもやまはメンバーの内発的動機を引き出し、自律的な成長を促す場となります。
Q. リクルートが考える令和時代のマネジメントの在り方とは?
リクルートは、令和時代のマネジメントにおいて以下の点を重視しています:
1. 一緒に考えるスタンス:「あなたはどうしたいの?」と問うよりも、「一緒にどうするか考える」というスタンスに変化している。
2. 強みにフォーカス:メンバー一人ひとりの強みを見出し、それを活かす方向でマネジメントを行う。
3. 流動的な環境への適応:将来が予測しづらい中で、柔軟に対応できる力を育てる。
4. 組織全体での育成責任:育成は直属の上司だけの責任ではなく、組織全体で担うべきものという考え方。
5. 心理的安全性の確保:メンバーが安心して意見を言えたり、失敗から学べたりする環境を作る。
このように、リクルートのマネジメントは「指示する」から「支援する」へ、「評価する」から「育てる」へと重点を移してきています。マネージャー自身も成長し続ける姿勢を持ち、メンバーとともに学び合う関係性を築くことが大切だと考えられています。
