
日本エンタメが世界で勝つ方法【MIYAVI×福田淳】
MIYAVI×福田淳特別対談:「クリエイターとマーケター」二つの視点から見るエンターテイメントの未来


エンターテイメントの未来をテーマに、スタートエンターテイメント社長の福田淳と、グローバルに活躍するアーティストMIYAVIが対談。アーティストでありながらマーケターとしての視点も持つMIYAVIが、グローバル展開の秘訣や日本文化の可能性について語った。
Q. グローバル展開について、最近の発見はありますか?
ロサンゼルスに最近行ったのですが、エンターテイメント業界に大きな変化が起きています。ハリウッドの有名エージェンシーCAAが、AIベンチャーと組んでタレントのデータを全て取得するプロジェクトを進めています。これは「CAボルト」と呼ばれていて、タレントはもはやIPという考え方になっています。
また、ハリウッドのスタジオは以前より稼働率が下がっています。これはロンドンのガーデンスタジオのような最新施設に制作が移行しているためです。ガーデンスタジオは屋内で屋外から屋内まで全てのセットが作れる連動した施設です。以前はコスト面でカナダが人気でしたが、AIに仕事を奪われることを恐れたライターや俳優の組合がストライキを起こしたことも影響し、ハリウッドからの移行が進んでいます。
Q. MIYAVIさんは現在、中国を拠点に活動されていますが、何か発見はありますか?
中国は規模が大きく、変化のスピードが速く、非常に面白いです。現在、北京や上海だけでなく、長沙(チャンシャ)という都市でもテレビ出演などの活動をしています。長沙はテレビ局が集まるホットスポットになっています。
グローバルな視点で物事を見るようになったきっかけは、実際に現地に行って体験したことです。ロサンゼルスの空港に到着した瞬間に友人たちから連絡が入るのですが、これはアメリカの電話番号がアクティブになったからではなく、その場所の波動や、そこにいる人々の波動の中に入ることで起こる現象です。目に見えないけれど、非常にアナログな感覚なんです。
Q. 音楽活動を通じて世界各国を回られていますが、そのきっかけは?
17歳で東京に来て、18歳ですぐにバンドに入りました。19歳頃から香港、中国、韓国、台湾などアジア各国に行き始めました。当時は英語ができなくて、ホテルでルームサービスを頼むこともできない無力感を感じました。
日本にいると欧米からのアーティストの影響が強く、それを日本流にすることでビジネスが成り立つ構造がありました。これはアイドルもロックスターも同じです。しかし、インポートの時代が終わり、エクスポートの時代になっていく中で、日本人として、アジア人として西洋のギターを弾くなら、エリック・クラプトンやB.B.キングのような人たちが弾けないものを持っていないと意味がないと気づきました。
そこで邦楽の要素を取り入れ、海外でライブ活動を始めました。それが28歳を過ぎた頃からです。
Q. 日本文化の強みについてどう考えていますか?
日本の「気配り」は世界最高峰の文化だと思います。これは日本だけでなくアジア全体に共通する部分もありますが、人類として大切にすべき要素です。しかし、そういった気配りがない人たちで作られた社会が大きすぎて、気を使う文化が負けてしまっている状況は良くないと感じています。
例えば、ハリウッドで活躍する真田広之さんのような方は、日本人らしい勝ち方をしています。単に俳優として役を演じるだけでなく、日本文化の正確な表現についてアドバイスするなど、自分の役割以外の部分でも貢献し、積み重ねてきました。それが今の地位につながっています。
日本人に足りないのは、この「気配り」「察し」という文化に対する自信です。外国に行くと「なぜこんなに自分は気を使っているのだろう」と思う瞬間がありますが、実はその気配りができること自体が素晴らしい能力なのです。
Q. 言語によって人格形成も変わると感じますか?
OSは1つですが、使う言語が違えば、言語による人格形成はあると思います。英語で話す時、中国語で話す時、日本語で話す時では、そのアタック感が変わります。これは敬語があるかないかなど、言語の特性によるものです。
日本語は特に動きが小さく、土地や食べ物とも連動しています。日本は国土が大きくないから、物音を立てないように動き、他人に気を使う。これが美徳であり、口元であまり欲がない話し方をする傾向があります。一方、英語になると体全体を使って話すようになります。これが考え方にも影響し、体の作りにも影響し、文化にも影響します。
Q. 海外進出する際、音楽的にもカルチャーの違いに合わせていくのですか?
合わせるというか、取り込むことが重要です。僕がアメリカで音楽活動をする上で最大の課題は「どうやってカリフォルニアロールを作るか」でした。本物の寿司屋からすれば「それは寿司じゃない」と言われるかもしれませんが、カリフォルニアロールがあったからこそ、今の日本食ブームがあります。どこに行っても日本食レストランがあり人気です。
これはお寿司にアボカドを入れたことで扉が開いたのです。私もこの「アボカド」を音楽に取り入れる必要がありました。ギターをスラップするという「わさび」や「ネタ」の部分は持っていても、それだけでは「生で食べていいの?」という新規性だけで終わってしまいます。アボカドがあることで「食べられる」と思ってもらえ、どんどん好きになってもらえるのです。
Q. クリエイターとマーケターの両方の視点を持つのは珍しいですが、マーケティングの感性はどこで身につけましたか?
周りにそれをやってくれる人がいなかったからです。私はキャッチコピーも自分で書きますし、プロデュース面も担当しています。実は、マネージャーやプロデューサーになった方が今よりも活躍できると感じることもあります。
例えば、昨日もライブをした後に、中国のテレビ番組のためのダンスレッスンをオンラインで中国語でやりました。その後、アルバムリリースの問題が発生し、日本のフィジカルリリースがアメリカのデジタルリリースとも紐づいているため、アメリカのチームとも協議する必要がありました。そして翌日のライブの準備もある。正直、大変ですよ。
Q. 今後はクリエイターとしての活動を減らし、プロデュース業に比重を置く予定はありますか?
私の中ではクリエイションとプロデュースはあまり分けていません。プロデュースする時もクリエイティブなアイデアが必要です。結局クリエイティブとは何かというとアイデアであり、そのアイデアをどう形にしていくかということだと思うので、そこのバランスはあまり考えていません。
ラーニングとアンラーニングで言えば、私は死ぬまでラーニングを続けたいと思っています。それこそがクリエイティブであり、最高の自己プロデュースなのではないかと思います。
