PIVOT TALK BUSINESS
自動車の次世代競争。EV化の次
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2024年10月8日

自動車の次世代競争は始まっている。EVの次は知能化の争いが既にスタートしており、多くの企業が挑戦している。自動車産業の現在とこれからの展望を自動車アナリストの川端由美氏とIGPI共同経営者の塩野誠氏に聞いた。 <ゲスト> 川端由美|自動車アナリスト 住友電工にてエンジニアとして務めた後、二玄社『N...
米国大統領選が日本の自動車産業に与える影響とは?業界専門家が解説する電動化の現状と未来
日本の自動車産業は、現在大きな転換点に立っています。電動化と知能化という2つの波が押し寄せ、米国大統領選の結果によって今後の展開が変わる可能性もあります。自動車ジャーナリストの川端由美氏とIGPI共同経営者の塩野誠氏に、業界の現状と展望について伺いました。


Q. 世界の電動化の現状はどうなっていますか?
世界的に見ると、ハイブリッド車も電動化の一部として扱われています。日本ではハイブリッド車とEVを別のものとして捉える傾向がありますが、海外では電動化という大きな枠組みの中で考えられています。
純粋なEV(Battery Electric Vehicle)の普及は一部の市場で頭打ち感が出てきていますが、中国メーカーが後発で参入し、比較的良い製品を市場に投入しているため、一定の売れ行きを維持しています。
欧州では当初、「2030年までに100%EV化」といった野心的な目標が掲げられていましたが、ウクライナ・ロシア戦争によるエネルギー環境の変化や再生可能エネルギーの調達の遅れなどから、目標達成までの時間がかかると認識されるようになってきました。
Q. EVの価格帯はどうなっていますか?
EVは基本的に価格が高いという課題があります。日本メーカーの車種で比較すると、ガソリン車が300万円前後であるのに対し、EVになると400〜500万円程度まで価格が上がります。高級車種になると1000万円を超えることもあります。
一方、中国メーカーのBYDやシャオミは、比較的手頃な価格帯の電気自動車を提供しています。BYDのドルフィンは補助金を活用すれば300万円台からアクセス可能です。これらの車は、分解して調査してみると、電池技術やパッケージングの面で技術的にも進んでいることがわかります。
Q. 米国大統領選挙の結果は自動車産業にどう影響しますか?
民主党のハリス氏が当選した場合は、バイデン政権の政策を引き継ぐと予測されます。特にインフレ抑制法(IRA)と呼ばれる政策では、部品の一定割合以上をアメリカ製にするといった要件を満たす製造業者に助成金を与えるしくみがあります。
これに対し、メキシコなどアメリカ以外の場所で生産している日本メーカーは不利な立場に置かれる可能性があります。さらに、要件に適合しているかどうかの運用も柔軟に変わる可能性があり、日本の自動車メーカーはその動向を注視しています。
一方、共和党のトランプ氏が当選した場合、これまでの発言から米国製以外の製品に高い関税をかける方針が予想されます。これは中国製品だけでなく、日本製品にも影響する可能性があります。また、トランプ氏はイーロン・マスク氏と関係を深めており、EVに関する政策が急に変わる可能性もあります。
業界関係者からは「ハリス氏の方が方向性が読みやすい」という声があります。IRAによって産業自体はすでに動き出しており、米国内で工場を持ち雇用を創出する企業が有利になる傾向は続くでしょう。
Q. 日本の自動車メーカーはソフトウェア技術で遅れを取っていますか?
自動車産業は「知能化」の波に直面しています。これはソフトウェアが車の機能や性能を決定する「ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)」の時代の到来を意味します。
欧州のメガサプライヤー(ボッシュ、コンチネンタル、ZF、バレオなど)は、ソフトウェア会社を買収するなどして転換を進めています。例えば、元々タイヤ産業だったコンチネンタルは電気電子の会社を買収し、ソフトウェア産業へと変貌しました。
一方、日本は自動車メーカーが系列のサプライヤーを引っ張ってきた歴史があり、すり合わせ技術で良い製品を作ってきました。しかし、ソフトウェア主導の時代になり、この構造が変革の障害になる可能性があります。
さらに、NVIDIAなどのテック企業も自動車産業に参入し、競争環境が複雑化しています。ソニーとホンダの提携による「アフィーラ」は、車内での体験に重点を置き、Microsoftと組んで車内で会話するエージェントの開発も進めています。
Q. 日本の自動車メーカーが生き残るための戦略は?
日本メーカーにとって米国市場の重要性は極めて高いです。中国市場では時間の問題で締め出される可能性があり、東南アジア市場でも中国車の猛攻にさらされています。そのため、ブランド力があり、過去からの市場が残る米国市場が最重要となっています。
現在、日本メーカーは米国市場でハイブリッド車の強みを活かしていますが、長期的には電動化と知能化の両面で戦略を練る必要があります。特にソフトウェア分野では、自社の強みを正確に把握し、競争領域と協業領域を明確に区分することが重要です。
また、優秀なソフトウェアエンジニアの確保も課題です。東京以外の地方や、東南アジア(特にインドネシア、ベトナム)、東ヨーロッパなどから人材を集める可能性も指摘されています。
Q. 日本の自動車産業の未来をどう見ていますか?
自動車産業は日本の基幹産業であり、関連する裾野産業も含めて多くの雇用を支えています。しかし、ガラケーからスマートフォンへの移行で国内市場が急速に縮小したように、自動車産業も大きな転換期を迎えています。
電動化によりエンジン開発というこれまでの強みが失われる可能性があり、「エンジンがなくなって自分たちは何者になるのか」という問いに直面しています。車の味付けや乗り心地など、付加価値をどこに見出すかが今後の課題です。
特に2026年以降は、コネクテッド技術を活用したデータビジネスが重要になると予測されています。この変革期を乗り越えるためには、自社の強みを正確に把握し、ハードウェアとソフトウェアの両面で価値を生み出す戦略が必要です。