
平石流ファシリテーション Q&A
会議の達人・平石直之が明かす「ファシリテーション魂」の核心
テレビでおなじみの平石直之氏が持つ抜群のファシリテーションスキル。緊張感のある場を和ませ、異なる意見を持つ人々を巧みに調整する技術の背後には何があるのか。会議や議論の場で使える実践的なアドバイスから、メディア人として大切にしている価値観まで、平石氏の「ファシリテーション魂」に迫る。

Q. そもそもなぜファシリテーションの仕事を選んだのですか?
自分が伝えた方がうまくいくという自信は昔からありました。メディアは良い意味でも悪い意味でもフィルターだと思っています。視聴者は「この人に話を聞きたい」「この人ならこのニュースについて何と言うだろう」という期待感を持っています。
メディアはそのパッケージも含めて期待されているものです。アベマプライムなどでも「この人がやったらどうなるだろう」「この人は何と言うだろう」という期待感があります。
その期待感と自分の感覚がずれていると感じたら、引くべきだと思います。特に生放送のような場では、リアクションが瞬間的に遅れるなど違和感を感じたら引いた方がいいでしょう。私は瞬発力を活かせる生放送の方が合っているようです。
Q. ファシリテーション術の突破点はありましたか?
アベマプライムでファシリテーション能力が開花したと感じています。ファシリテーションには総合的な能力が求められます。個別に話を聞くこと、目的をコンパクトに伝えること、要約すること、アナウンスメントの部分など、これまで培ってきた能力が集約されて今の形になっています。
特に複雑なニュースほど自分の強みが活きると感じています。単に雑談のようにおしゃべりをすることは誰でもできますが、本当に知るべきことや本質を見据えて深く掘り下げる能力は、複雑な話題ほど差が出ます。
これは急に身につくものではなく、長年さまざまな取材や経験を積み重ねた結果です。人間が図書館のようになって初めて「あの人の話が聞きたい」と思ってもらえるような存在になれます。
Q. 若手ビジネスパーソンやアナウンサー志望者へのアドバイスは?
まず何でもファシリテーターをやってみることです。ファシリテーションはテーマと人の両方を準備する必要があります。猛烈に勉強し、準備しなければいけません。自分が恥をかくのはもちろん、参加者に恥をかかせないためにも準備が必要です。
参加者について一生懸命調べたり、事前にメールで連絡を取ったりして「こういう風にやりたい」と伝えます。会社内でファシリテーターを務めれば、上司や部下とのネットワークが広がります。
テーマについても徹底的に調べます。自分より詳しい人が見ているという前提で話すので、恥をかかないように勉強します。ファシリテーターをやることは、組織においてもテーマにおいても若い人にとって良い鍛錬になります。
逆の立場から見ると、チームのマネジメントで誰にファシリテーターを任せるかも重要です。誰に任せれば上手く回るか、その人が成長するかを考えることは、チーム作りにおいて重要な要素です。
Q. プレゼンや質問を受ける時、緊張してしまいます。アドバイスはありますか?
簡単に言うと、自分に意識を向けないことです。聞いている人(オーディエンス)に意識を向けて、「今何を求めているだろう」と考えた方が緊張しません。
また、結論から先に言うことも大切です。人前で話すときは「結論→なぜなら→このように」という順番の方が忘れずに済みます。人は緊張すると言おうと思ったことを忘れがちなので、大事なことは先に言ってしまいましょう。
自分に意識を向けると「上手に言えるかな」と緊張します。「この人たちにちゃんと伝わるかな」と相手に意識を向けた方が良いでしょう。
また、準備したことを全部話そうとしなくてもいいです。例えば1から10まで準備したなら、まず10(結論)を言って、1と3と7ぐらいで終わりにするイメージです。空いた部分は質問の時間にして、聞いてもらう方が効果的です。
Q. 上司がいる会議ではどう進めるべきですか?
事前準備が9割です。上司・部下に限らず、完全にフラットな関係性というのはほとんどありません。部活でも先輩後輩がいるように、どこでも様々な関係性の凸凹があります。
上司も含めた事前準備がとても大事です。「その場でなんとかなる」と思わないことが重要です。目的を共有した上で上司の理解を得ておけば、会議で上司が暴走した時に止めることができます。
例えば「若手の意見を中心に聞きたい」と事前に伝えておけば、上司が割り込んできた時に「先ほどお伝えしたように若手の意見を優先したいと思います。後ほど伺います」と言えます。場が荒れないようにするためには事前準備が大切です。
Q. 議論が一部の人の意見で決まってしまう場合、どう対処すればいいですか?
例えば会社のCEOが一言で決めてしまい、他のメンバーが意見を言いづらい状況は難しい問題です。CEOの言うことが本当に良いことなのか悪いことなのか判断も難しいです。
対策としては、事前にCEOに「どう思っているか」を聞いておくといいでしょう。または、CEOが決める前に他のメンバーから意見を出してもらい、展開を変えることも考えられます。
重要なのは、「言いたかったけど言えなかった」という状態を残さないことです。意見を言う場を作って、その上で決まったことならば「言ったけど跳ね返された」という納得感が生まれます。
Q. 平石さんの情報収集の方法を教えてください
最近はYouTubeやSNSを利用することが多いです。SNSの空気感も大事にしています。ある時を境に潮目が変わることがあり、それを感じ取ることを意識しています。「どうも変わってきていませんか?」と言うのが好きです。この嗅覚が鈍くなったら引き時だと思います。
人がやったことをなぞるのには興味がありません。先に気づいて「どうも違うんですよ」と言うことを心がけています。例えば「大谷選手のバッティングが変わってきていませんか?」といった感じです。
そうした発言が積み重なると「この人は何と言うだろう」と思ってもらえるようになります。その瞬間ずれていると思われてもいいのです。「あなたはそう思うのね」という納得感があればいいと考えています。メディアの意見とはそういうものだと思います。
Q. メディアの「俗人化」についてどう思いますか?
結局、人と人をつなぐことや個性が際立っていないと視聴者の関心を引けません。私の話し方や視点が気に入れば真似すればいいのです。私も多くの人の真似をしてきました。誰に目をつけるかは大事で、表面的にこねくり回すだけでなく、物事の本質を掴もうとしているかが重要です。
好きな人を追いかけて、「この人だったら何と言うだろう」と考えながら自分のスタイルを作っていけばいいと思います。意見が違っていてもいいのです。全ての意見が一致することはありません。同じファンでも違う意見を持つことがあり、そういう多様性も含めて魅力なのです。
メディアも同様で、「今日は少しずれていたけど面白かった」と思ってもらえることが大切です。見た目だけ整えても本当に心に刺さるかどうかが問われています。
Q. 平石さんの究極の目標は何ですか?
そんな先のことまで考えていませんが、今やっていることが楽しいので、まずはこれを続けたいです。今がキャリアのハイポイントかもしれないと感じています。常に右肩上がりというわけではないので、これからの5-10年で集大成を発揮したいと思っています。
私の仕事を通じて伝えたいのは、人と人をつなぐことの大切さと、複雑なことをシンプルにすることの価値です。ごちゃごちゃしたものを一言で表現するようなことを意識しています。
言葉の使い方を変えると自分自身が変わります。自分が変わると周りの人たちも変わるのです。言葉を変えて周りが変わるという、そんな魔法のような言葉の力を信じています。人が集まる場をより楽しく、より有意義にするために、言葉の力を活用してほしいと思います。
