
Z世代の取扱説明書
Z世代×コミュニケーション - なぜ若者は「帰りたい」と言い切るのか
Z世代との関わり方に悩む人は多い。「言いたいことがあるなら言ってみた結果、帰りたいです」「働きたくないです」とはっきり言う若者たち。彼らはなぜそう考え、どう行動するのか。小説家の麻布競馬場氏と文芸春秋編集者の黒岩里奈氏が、Z世代の心理と世代間コミュニケーションについて語る。


Q. Z世代の特徴とは何か
Z世代の特徴として「下積みが嫌い」「先輩から厳しいことを言われたくない」「ワークライフバランスを重視して残業したくない」といった点がよく挙げられる。しかし考えてみれば、これらは誰もが望むことではないだろうか。
同じ給料をもらうなら、厳しいことを言われたくないし、残業もしたくない。好きなことをして過ごしたい。この点から見ると、新しい世代が主張していることは非常に人間的なことかもしれない。
バブル期には「24時間働きますか」というキャッチコピーが流行したが、正直に言えば24時間働きたい人はいないだろう。時代が進むにつれて、人間はより人間らしくなっている可能性がある。
むしろ異常なのは上の世代かもしれない。私たちが若い世代に対して「自分勝手だ」と感じるのは、羨ましさが混じっているのではないか。
Q. なぜZ世代は失敗を恐れるのか
Z世代が失敗を恐れる背景には、失敗が可視化されやすい時代になったことが関係している。以前なら会社や部署内だけで収まっていた失敗が、SNSで世界中に拡散されるリスクがある。自分の失敗がどれほどの重大さなのか、即座に世間の評価にさらされてしまう。
また、「親ガチャ論」が科学的にも証明され始めているという背景もある。上野千鶴子氏が東大入学式で「あなたがここにいることは、あなただけの努力ではなく環境のおかげ」と語ったことや、マイケル・サンデル教授の「運も実力のうち」という本など、成功は個人の努力だけでなく、生まれた環境や遺伝に依存する部分が大きいという考え方が広まっている。
頑張っても報われない可能性が高いと感じると、努力することが馬鹿らしく思えてくる。どうせ失敗すると分かっているのに頑張ることは惨めだと感じ、傷つかない道を選ぶ若者が増えている。
Q. Z世代は何を求めているのか
Z世代はソーシャルグッドへの情熱を持っている。成功するか失敗するかは努力によって0か1かで決まるが、正しいことをしていれば、その過程も全て評価されると考える傾向がある。
例えば、お笑い大会で優勝するかどうかは結果が明確だが、ボランティアでゴミ拾いをすれば、それをした時点で「勝ち」になる。つまり、評価されづらいことや、行為自体が評価される方向へシフトしている。
Z世代の問題は、上の世代が成功パターンを示せなかったことにもある。「頑張れば幸せになれる」ことを証明できていれば、若者の風向きも変わっていただろう。しかし、先輩たちが頑張っても幸せになれなかった姿を見て、若者は別の道を模索している。
Q. 世代間ギャップは本当に存在するのか
実は、世代間の問題というより、単純に年齢差が原因かもしれない。90年代初頭生まれの人々は「ゆとり世代」と呼ばれ、5歳上の先輩から「ゆとりは分からないよ」と言われてきた。5歳の差がコミュニケーションギャップを生み出す可能性がある。
世代のせいにすることは、上司と部下の関係で悩んでいるときに最も簡単な解決方法だ。自分のせいにならず、傷つかなくていい。世代論が強調されるのは、私たち世代の逃げでもあり、若い世代もそれによって守られている部分がある。
結局のところ、世代間の摩擦は繰り返されるものであり、本質的な解決策は相互理解にあるのかもしれない。
Q. 解像度の高いコミュニケーションとは
小説家の麻布競馬場氏は、人との対話を通じて言語能力を高めてきた。小学生の頃、先生から「共感性が低い」と指摘され、「人の気持ちを考えて生きなさい」と親からも言われた経験から、人間心理への関心が生まれた。
毎日のように様々な人と飲み会で会い、年齢も幅広い人々と交流することで、人間観察力を養ってきた。特徴的なのは、メモを取らないことだ。ぼんやりとした記憶が重なったときに共通点が見えてくるという。細かく覚えるよりも、ビッグデータのようにぼんやりと持っておいた方が、どこかで融合しやすくなる。
黒岩里奈氏によれば、作家には共感力が低い人が多いが、それゆえに相手のことをより深く考える時間が長くなる。麻布氏の場合、会話のレスポンスの速さが際立っており、遠い視点から即座に返答できる能力は稀有だという。
Q. 若者とのコミュニケーションで心がけるべきことは
まず、世代ギャップは必ず存在することを認識し、それを受け入れることが大切だ。その上で、相手の立場や考え方を理解しようとする姿勢が必要になる。
若者が競争を避ける傾向にあるのは、競争が辛いからだ。競争社会では勝った人だけが幸せになれる。しかし、多くの若者は「なぜこの道だけを歩かなければならないのか」と疑問を持っている。様々な道があるのに、特定の道に連れて行かれることに疑問を感じているのだ。
おそらく、上の世代も競争から降りてもいいのかもしれない。帰りたいなら会社から帰ればいいし、東京で戦うのがつらいなら地方に行けばいい。「戦うことから降りる」「強い自分であることから降りる」という選択を、むしろ上の世代が率先して示すことで、全世代がより人間的になる可能性がある。
