
シリコンバレーも注目 コンビニは日本の宝だ【KDDI髙橋誠社長】
KDDI社長が描く「未来のコンビニ」戦略とAI革命
テクノロジーの進化が加速する今、通信業界はどのような変革を遂げようとしているのか。KDDI社長の髙橋誠氏に、生成AIの可能性や同社の新たな戦略、そして未来のコンビニエンスストア構想について聞いた。

Q. 生成AIは本当にビジネスに革命をもたらすのでしょうか?
近年、世界中で急速に普及している生成AI。これは単なるバブルなのか、それとも真の革命なのか。髙橋氏は明確な見解を示す。
「生成AIはビジネスにとって電卓を使うようになったくらいの変化をもたらすでしょう。ソロバンから電卓への移行のように、当たり前に使われる技術になります」
生成AIの応用分野も多岐にわたる。KDDIでは主に3つの領域での活用を進めている。第一にカスタマーサポート領域。第二にネットワーク設計や自動オペレーションなど通信インフラの領域。そして第三に社内業務の効率化だ。
Q. 日本企業は生成AI開発で海外勢に太刀打ちできるのでしょうか?
OpenAIやGoogle、Metaなど海外勢が牽引する生成AI市場において、日本企業の競争力について懸念する声も多い。
「必ずしも自前で開発する必要はありません。例えば、オープンソースモデルをベースに日本語化したり、特定業界向けにチューニングしたりする方法もあります」
KDDIではラマ2などのオープンソースモデルを活用し、子会社を通じて日本語版LLMを開発。グローバルスタンダードを取り入れつつ、日本独自の価値を付加するアプローチを採用している。
「グローバルスタンダードを取り入れ、日本ならではの価値を付加し、それをソーシャルインパクトとして世界に発信していく。この3段階のアプローチを大切にしています」
Q. 現在のKDDIの戦略の特徴は何ですか?
髙橋氏はKDDIの戦略を「サテライトグロース戦略」と名付けている。これは太陽と惑星の関係性をビジネスに応用したモデルだ。
「5G、データドリブン、生成AIをど真ん中に置いて太陽とし、その周りに金融、エネルギー、DXといった領域を第1軌道の惑星として配置。さらに外側にモビリティ、宇宙、ヘルスケア、Web3/メタバース、スポーツ/エンタメという第2軌道を設定しています」
この戦略のポイントは、すべての事業が中心にある通信技術と連携していること。通信とは無関係な「飛び地」的事業展開は行わない姿勢を貫いている。
Q. 通信会社として消費者との接点をどう取り戻そうとしていますか?
スマートフォンの普及により、かつてのように通信会社が端末を設計・製造する時代は終わった。これにより消費者との直接的な接点が失われつつある現状を髙橋氏は率直に認める。
「ガラケー時代は端末からデザインして作っていました。しかし、日本はその文化を簡単に手放しすぎたと思います。オープン化の流れの中で、すべてがAndroidやiPhoneになってしまい、お客様との接点が薄れてしまった」
この失われた接点を取り戻すための施策として、決済サービス「auPay」の展開や、最近では「ローソン」への出資などを行っている。消費者に身近に感じてもらえる会社になることがKDDIの重要な方針だという。
Q. ローソンへの出資は通信会社としてなぜ行ったのでしょうか?
KDDIのローソンへの出資は、当初投資家からは理解されにくかったという。しかし、グローバルテック企業との対話を通じて、その価値は再認識されている。
「シリコンバレーのテック企業は、日本のコンビニに強い関心を持っています。彼らは日本のコンビニを社会に大きなインパクトをもたらすインフラだと評価しています」
ローソンとの協業で実現しようとしているのは「未来のコンビニ」だ。例えば、店舗の屋上にドローンを設置し、緊急時に現場の状況を撮影して本部に送信するシステムの実証実験を計画している。
また、スターリンク(衛星インターネット)と連携した防災拠点としての機能強化や、接客ロボットの導入による人手不足解消、リモート接客サービス(「よろず相談」)の提供なども視野に入れている。
Q. コンビニを中心とした新たなモビリティサービスも検討しているのですか?
髙橋氏はコンビニを拠点とした新たな交通サービスも構想している。
「『ローソンタウン』という構想の一環として、コンビニをバス停のような交通拠点にする取り組みを沖縄で開始しています。自分がどこからどこへ行きたいかを指定すると、乗り合い型の交通サービスがローソン店舗を経由して送迎するシステムです」
将来的には自動運転技術を活用したサービスも視野に入れている。髙橋氏自身もウェイモ(Googleの自動運転サービス)に試乗した経験から、その安全性と可能性に確信を持っているという。
「技術的にはすでに実用レベルに達しています。規制の問題さえクリアできれば、日本でも早期に導入すべきだと考えています」
Q. 大企業の経営者として、何が一番楽しいですか?
最後に髙橋氏に、10兆円企業の経営者として最も楽しいことは何かを尋ねた。
「日経新聞に載っていることは何でもできるということです。スタートアップの面白さもありますが、大企業だからこそできることもたくさんあります」
そして、髙橋氏はAI時代の到来を、かつてのモバイルインターネット黎明期と同じような「躍動感」を感じると語る。60代を超えた今でも、「20〜30歳若返って、この時代を最前線で体験できたらどんなに面白いだろう」という情熱を失っていない。
