PIVOT TALK BUSINESS
内側から見たイーロン・マスク。得意なことと苦手なこと
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2024年9月19日

次々と大胆な構想を生み出すイーロン・マスク。彼は実際にはどんな人物なのか?彼から学べることは何か?Twitter Japan社長として215日間を共にした笹本裕氏が「内側から見たイーロン・マスク」を語る。 <ゲスト> 笹本 裕|DAZN Japan最高経営責任者、元Twitter Japan代表取...
元Twitter日本社長が語る「イーロン・マスクの実像」〜破壊と創造のリーダーシップ〜
「自分が信じたことを突き通していきたいという、純粋な思いがある人物」と笹本氏は語る。

Q. イーロンマスクの実像とメディアで見るイメージには違いがありますか?
両面があると思う。メディアで見るような物事を強引に進める姿がある一方で、子供を大切にする父親の側面も持ち合わせている。非常に多面的な彼の姿を間近で見ることができた。
Q. マスクはどのような人物ですか?
自分が信じたことを突き通していきたいという純粋さを持っている。それを否定されると感情的になることもある。それが彼の力の一つだと思う。
はっきりと意見を言う人だ。怒鳴るような怒り方ではないが、「私の意見は違う」ということを正直に伝える。言われた側はびっくりすることもあるが、非常に正直な方だと思う。
Q. マスクはリストラをどの程度行いましたか?
正確な数字は知らされていないが、約8,000人いた会社が1,000人を切るまで減ったと思われる。社内で使用しているSlackの登録者数が週ごとに減っていき、それを追いかけていた人が「1,000人を切った時がある」と言っていた。
Q. 大規模リストラ後も会社は機能していましたか?
不思議なことに機能していた。シリコンバレーのIT企業ではエンジニアの組織が膨張していることが課題とされていた部分もあるので、エンジニアが減少しても回る面はあったのかもしれない。また、それまで作り上げてきたものが盤石だったおかげで、人員が減っても一定期間は回っていた状況だったと思う。
Q. マスクは組織構造についてどのような考えを持っていますか?
レイヤーが多い組織を大嫌いで、どんなに大きい組織でも2〜3つのレイヤーが限界だと考えている。極端な話、全部自分が知りたいという思いがある。全社員が週報のようなものを書いて送るが、彼はどこまで目を通しているかは分からない。しかし、現場を把握したいという思いから、レイヤーは極力なくしていた。
Q. マイクロマネジメントするトップは成功しやすいのでしょうか?
意思の強さがどれだけ下まで広く伝わるかが重要だと思う。レイヤーが多すぎると伝言ゲームのようになってしまう。間違いなく伝える方法を考えると、どうしてもミクロにまで入り込むことになる。
ただし、知った上でどう回すかはそれぞれのやり方があると思う。完全に任せきりにすると物事が進むのが遅くなったり、誤った判断に向かってしまったりすることがある。知っているということは重要だと思う。
Q. マスクの周りには仲間はいるのでしょうか?
テスラやSpaceX、ボーリングカンパニーなどの幹部は必ず彼の周りで支えている。サンフランシスコの本社では、会議室が宿泊施設のようになっていて、そこに寝泊まりしながら仕事をしていた。ある幹部は奥様も一緒にそこで生活をしていたので、信者というぐらい心酔していたのではないかと思う。
Q. マスクの持つ特殊な能力は何だと思いますか?
「時を読む能力」が特に優れている。時間は無形のもので、なぜ彼がこれほど時を読むのが得意なのかは正直分からない。おそらく想像力が非常に豊かで、その想像をアウトプットするタイミングが神業的に優れているのだと思う。世の中を読む力が尋常ではない。
また、「探求心」と「集中力」も並大抵ではない。非常に細部まで目が行き届いており、データをとにかく見る人だ。通常、経営者は分析されたデータを見て判断するが、マスクはその分析前の生データが欲しいと言う。フィルターがかかっていない状態から自分で見たいという考え方だ。
Q. マスクはビジネスが苦手なのでしょうか?
苦手というのは言い過ぎかもしれないが、ビジネスは収益が大前提であり、それをどうスケールするか、持続性を作るかを考えるものだと思う。しかし、マスクはそれよりもビジョンを大切にする人で、収益は後からついてくるだろうという価値観を持っている。元々Twitterは上場企業だったため収益に敏感だったが、マスクの下ではビジネスよりもビジョンが優先されていた。
Q. マスクが日本の企業文化に与える示唆は何でしょうか?
リバースエンジニアリングの考え方を学べると思う。どの経営者も将来こういうことをやりたい、こういう会社にしたいという想像はしているはずだ。普通は今からそこに向かって積み上げていくが、マスクは積み上げながら向かうことを嫌い、一旦壊してでもそこに早く向かっていく。その考え方は時間軸で行動する上で参考になる。
日本はどうしても積み上げ式の考え方が強い。しかし、不要なものは残さずに取り除いて新たに作り直していくという思想が必要かもしれない。破壊することだけに目を向けるとネガティブな要素がクローズアップされがちだが、何のために破壊するのか、破壊して次に何を創造するのかがセットであれば、良い結果が生まれると思う。
Q. マスクは意見の対立にどう対応しますか?
ポリシーについても「一旦右側にボールを投げて真ん中に持っていきたい」という考え方がある。例えば、Twitterのプラットフォームはできるだけ人々を守ろうという思想が強くなり過ぎて、片方に寄っていた面がある。それを見たマスクは「ちょっと寄りすぎているのではないか」と考え、反対側にボールを投げる。それによってショックが起き、議論が生まれ、最終的に真ん中に戻ってくるようにしていた。
Q. 日本の経営者に望むことは何ですか?
器の小ささが問題だと思う。もっと大きなこと、社会を動かそうとか国を動かすぐらいのことをやろうという想像力がある人が日本ではまだ限定的だ。それは個人の問題というよりも、規制の問題や文化の問題など様々な壁があるからだと思う。しかし、そのような状況では小粒に終わってしまうことに危機感を持っている。
器を大きくするには世界を見ることが大切だ。マスクのもとで働いてみるとか、海外で活躍する日本人スポーツ選手のように外に出ることで力が変わっていくこともあるのではないか。
Q. 年齢と責任の関係についてどう考えますか?
オーストラリアでは政治家の世代が40代に若返ったことがある。政治家の仕事は法律を作ることだが、法律ができて社会に定着し、それが良かったかどうか分かるには最低30年かかると言われている。70歳の人が政治家だと30年後には生きていないかもしれず、無責任になってしまう。
年齢と責任には相関する部分があると思う。ただし、若返らせるだけでなく、経験豊かな政治家や経営者がどのようにサポート関係を作るかも重要だ。若いリーダーに経験豊かな人材が補佐する形が理想的ではないか。