
個別株3つのヒント:後編
いい企業選びで長く付き合うための3つのステップ
株式投資を始める時、どのような基準で企業を選べばよいのか悩む方も多いでしょう。投資の世界では「いい企業を見つけて長く付き合う」ことが重要です。その具体的な方法について、投資のプロが教える3つのステップを紹介します。

Q. いい企業を選ぶ際の第一歩は何ですか?
企業の外観に基づく評価が最初のステップです。専門的な指標を見る前に、まず自分の感性を大切にすることが重要です。例えば、Googleの検索機能に感動したり、Appleの製品に魅力を感じたりした経験はありませんか?そういった「これはすごい」と思うサービスや製品を提供している企業に注目しましょう。
身の回りのサービスで考えると、宅配便の利便性や確実性に感動したことがある人もいるでしょう。こうした日常での「感動体験」が、投資先を見つける重要な手がかりになります。
チャートなどの技術的分析は短期売買のためのツールです。現在はAIがチャート分析を得意としており、個人投資家がそれで勝負するのは難しくなっています。むしろ自分の感性で企業の価値を掴むことが、長期投資では重要です。
Q. 経営者を見る際のポイントは何ですか?
企業評価の二つ目のポイントは経営者の判断力です。バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット氏は、長期投資の観点から株式が安いと判断した時に買い、長期間保有する戦略で知られています。リーマンショック時の2008年、株価が急落した際に手持ちの現金を株式に変え、大きな利益を得ました。
言っていることと実際の行動が一致していることが重要です。株価が上昇している時に現金を持ち続けるのは勇気がいることですが、そうした投資判断ができる経営者は評価に値します。
日本企業では、ファーストリテイリングの柳井正氏が注目すべき経営者の一人です。2000年頃にフリースで大きな成功を収め、その後も様々な商品を安価で提供し続けています。日本の衣料品業界を変革した後、海外展開にも成功していることから、製品開発力とビジネス展開力を持つ経営者と言えるでしょう。
こうした経営者の情報は、ニュースでも得られますが、それだけでは後追いになります。自分の目で世の中の変化を捉え、「何が変わって、誰が動かしているのか」まで興味を持つことが大切です。情報は自ら取りに行く姿勢が重要です。
Q. 株価指標を見る際のポイントは何ですか?
株価指標では、特にPBR(株価純資産倍率)が重要です。PBRが1倍を超えているかどうかが一つの判断ポイントになります。1倍割れは、「経営がうまくいっていない」ことを投資家が示しているサインです。これは投資家が期待するような利益を企業が上げていないことを意味します。
日本では「バリュー株」と「グロース株」という区分がありますが、アメリカと日本では状況が異なります。アメリカのバリュー株はPBRが1倍を割る企業はほとんどありませんが、日本ではPBR1倍割れの企業が「バリュー株」として扱われることがあります。つまり、経営に問題がある企業まで含まれてしまうのです。
PBRと一緒にROE(自己資本利益率)も確認すべきです。ROEは8%程度は欲しいところですが、できれば10%程度あるとより望ましいでしょう。ROEとは、企業が借金以外で持っている資金からどれだけの最終利益を稼いでいるかを示す指標です。実際にPBR1倍以上の企業のROEを分析すると、9%程度あることがわかります。
Q. 企業実績を見る上で最も重要な指標は何ですか?
企業の実績を評価する際は、様々な指標がありますが、特に重要なのは次の3つです:
1. 売上高成長率:毎年の売上高がどれだけ伸びているか
2. 売上高営業利益率:売上に対してどれだけの営業利益を上げているか(10%程度が目安)
3. 海外売上高比率:海外でどれだけ売上を伸ばしているか
特に日本企業の場合、人口減少によって国内市場は縮小傾向にあるため、海外展開が重要です。国内だけでは企業間の奪い合いになってしまうからです。ファーストリテイリングのように海外で売上を伸ばしている企業に注目することが大切です。
これらの指標は会社四季報などで簡単に調べることができます。投資初心者は全ての指標を確認する必要はなく、これらの基本的な指標を見るだけでも十分な判断材料になります。
Q. 投資信託と個別株投資、初心者はどちらがいいですか?
投資信託では、S&P500への投資は良い選択肢と言えます。アメリカは多くの優良企業があり、競争原理が働いているからです。S&P500は投資家の「投票」によって時価総額が大きくなった企業が入っています。一方、日本のTOPIXは一部上場になれば自動的に入るため、競争がない世界です。
全世界株式(オルカン)よりもS&P500の方が良いという見方もあります。新興国株式はリスクが高く、十分な分散が図られていない場合があるからです。
しかし、何より大切なのは、人任せの投資だけでなく、自分で個別株を選んで組み立てる楽しさです。自分が選んだ企業が活躍して利益を上げ、株価が上がる喜びは格別です。特にアメリカ株は少額から投資できるので、投資信託と併用して自分でも選んでみることをお勧めします。
個別株投資で大切なのは長期保有の姿勢です。ただし、「企業に惚れてはいけない」という格言もあります。状況が変化して普通の企業になったと感じたら、売却することも検討すべきです。客観的に企業を見続けることが、個別株投資の成功への道です。
最も重要なのは「まず始めること」です。理論より実践から学ぶことも多いでしょう。
