企業超分析
【企業超分析:オープンハウス】業界4位まで急成長した体育会カルチャー
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2024年9月17日

人気の企業をよく知る専門家が、元社員と共に徹底分析していく「企業超分析」。就活に、転職に、さらに投資に役立つ情報をお届けする。今回は「オープンハウス」。業界4位まで急成長した秘密に迫る。 <ゲスト> 楠木 建 一橋ビジネススクール 特任教授 井辺良祐 オープンハウス出身 / ウィルウェイ CEO...
オープンハウスの「昭和の高度成長期」を思わせる企業文化、その実像とは?熱血マネジメントの背景に徹底した合理主義
オープンハウスの「昭和の高度成長期」を思わせる企業文化、その実像とは?熱血マネジメントの背景に徹底した合理主義
不動産業界4位の巨大企業に成長したオープンハウス。東京の都心部で戸建て住宅を手がけ、年平均20%以上という驚異的な成長率を誇る企業の強さの秘密は何か?一見すると熱血体育会系に見える社風の背後にある、徹底した合理主義と戦略的思考を専門家たちが解説する。

Q. オープンハウスはどんな企業なのか?
現在、オープンハウスは不動産業界で売上高1.14兆円、営業利益1423億円と業界4位の規模に成長している。三井不動産、三菱地所、イオンモールに次ぐポジションで、東急不動産や住友不動産、野村不動産などの大手をすでに追い抜いている。
特筆すべきは、その成長率だ。今期予想も含めた5年間のCAGR(年間平均成長率)は20%を超えており、三菱地所やイオンモールが1桁台であることを考えると、その勢いは脅威的である。このペースで成長を続ければ、業界2位に迫る可能性も十分にある。
Q. オープンハウスの企業文化はどのようなものか?
オープンハウスには「マグナカルタ」と呼ばれる、会社内で受け継がれてきた行動指針がある。その一部には「行動勢い(やれるまでやれ、妥協に負けるな)」「群れるな、そこからは何も生まれない」などの項目が含まれる。
これは表面的には厳しい体育会系の文化に見えるが、実は徹底した合理主義に基づいている。楠木建氏は「仕事の組織としてはものすごく基本に忠実で、成果を出すための手段として練り上げられている」と評価する。
オープンハウスの独特の掛け声も有名だ。「行こうぜ1兆2020」(2020年に売上1兆円達成を目指す)や「狂人走、不狂人走」(1人の狂人が走れば、周りの不狂人も走る)など、社員のマインドセットを形成する工夫が随所に見られる。
Q. オープンハウスの経営戦略の特徴は?
オープンハウスの強みは、以下の点にある:
1. 土地情報収集のローラー作戦: 毎日多数の営業マンが特定エリアの不動産業者を徹底的に回り、土地情報を収集する。同じ業者に1日に何人も営業マンが訪問することもあり、これにより希少な土地情報を素早く獲得できる。
2. エリア制限のない仕入れ体制: 社内では基本的にエリア分けがされているが、業者訪問は誰でも行ってよく、最初に情報を得た人が獲得ポイントを得る仕組み。これが競争心を煽り、情報収集の効率を高めている。
3. 即時間取り提案: 土地を見ればすぐに間取りを入れられる体制により、他社よりも圧倒的に早くレスポンスができる。
4. 自社施工によるコスト削減: 設計から施工までを自社で行うことで外注コストを削減し、それを仕入れ価格や利益に還元している。
5. 強固地活用技術: 40坪の土地を3区画に分けるなど、一般的には使いにくい土地を効果的に活用する技術を持つ。これにより、ボリュームゾーンの価格帯で物件を提供できる。
6. 厳選集客: 駅前などで直接声をかける独自の集客方法。「その場で買う気がなくても、話しているうちに買いたくなる」という効果があり、総売上の30%以上を占める。
Q. 新井社長はどのような経営者なのか?
楠木建氏は新井社長を「久々に現れた戦国大名。非常にアグレッシブな経営者」と評し、「織田信長と豊臣秀吉と徳川家康を足して3で割らないタイプ」と表現する。これは単に一面的な強さではなく、多面的な強さを持った経営者であることを示している。
井辺氏によれば、新井社長は「半径50mがそこだけ昭和の高度成長期になる」ほどのエネルギーを持つ人物だという。厳しさと同時に、社員への深い愛情も持ち合わせており、社員1000人規模になるまで全員の出身高校や家族構成、子供の名前まで把握していたという。
新井社長の哲学は「結果が全て。結果以外は評価者の気持ちや思いが入ってしまうから、結果だけを見る」というものだ。失敗しても「20個の成功で取り返せばいい」という考え方で、結果を出す人材を評価する文化を築いている。
Q. オープンハウスの戦略はなぜ他社が真似できないのか?
楠木氏によれば、オープンハウスの戦略は「他社が真似できないというより、真似しようと思っていない」面が大きいという。三井不動産のような大手は「ポスティングする三井不動産」になる必要性を感じていないし、郊外が中心の飯田グループも都心の強固地に進出する理由がない。
また、オープンハウスの戦略は一つ一つの要素ではなく、それらが有機的に繋がっていることがポイントだ。土地情報収集から設計、施工、販売までの一貫した流れが相互に補強し合い、全体として強力な戦略を形成している。
井辺氏は「1つ1つの部門のやっていることは真似できるが、それが積み重なって真似のできない強みになっている」と説明する。
Q. オープンハウスの課題や弱みは何か?
井辺氏は、オープンハウスの課題として以下の点を挙げる:
1. 若手社員の成長: システムがしっかりしているため、若手が考えずに動けてしまう面がある。「なぜこの仕組みがあるのか」を考え続けることが必要。
2. 時代との戦い: 週刊文春に叩かれるなど、昭和的とも言える企業文化が時代に合わなくなってきている側面がある。実際に社内でも古い時代の厳しさは緩和されつつある。
楠木氏は「会社が大きくなれば、初期の文化は必然的に薄まる」と指摘。人材確保のためには時代に合わせた変化が必要だと述べている。
Q. オープンハウスの成功から学べることは?
オープンハウスの事例から学べる最大の教訓は、表面的な「熱血さ」の背後にある徹底した合理主義だろう。一見すると古い時代の体育会系文化に見えるが、実際には緻密に計算された戦略と組織設計がある。
特に印象的なのは、「文化と戦略の一体性」だ。大澤氏が指摘するように、言葉が文化を形成し、それが会社の外部に滲み出ることで、自然と同じ価値観を持った人材が集まるようになる。これにより、入社前から人材の選別が行われ、組織の一体感が生まれる。
オープンハウスの事例は、単なる精神論ではなく、具体的な行動と結果に結びつく文化の作り方を示している。