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米国株2025年 下落の可能性
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2024年9月15日

不法移民の問題を抱え、大統領選を控えているアメリカ。雇用事情や新大統領による米国株の動き、今後ポイントになる指標を第一生命経済研究所主席エコノミストの藤代宏ー氏に聞いた。 <ゲスト>藤代宏ー|第一生命経済研究所主席エコノミスト 2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し...
アメリカ経済の最新状況と今後の金融政策【Q&A】
アメリカ経済は明確な減速の兆しを見せている。雇用統計や製造業指数の動向から、現在の状況とこれからの見通しを探る。

Q. 最近の雇用統計から読み取れるアメリカ経済の状況は?
アメリカの雇用統計では、失業率が4.3%に上昇し、雇用者数の増加ペースも顕著に減少している。雇用者数の直近3ヶ月平均の増加幅は約10万人程度で、2023年の30万人以上と比較すると約3分の1まで減少した状態だ。
アメリカでは現在、不法移民問題もあって人口が増加しているにもかかわらず、雇用の増加がこれほど少ないと、失業率上昇につながる。これは企業が雇用を十分に吸収できていない状態を示しており、明らかに景気が減速している証拠と言える。
Q. この雇用状況は現在のアメリカ経済にとって良くないのか?
現在の状況は望ましくない。半年から1年前はインフレが主な問題だったため、失業率が多少上昇してもインフレ率を下げるためには必要な調整だと考えられていた。しかし現在、インフレ率は2%に近づく方向性が出てきており、インフレ対策は成功したと言える。
その一方で、その代償として失業率が上昇し始めた。つまり、物価は十分に下がったが失業率が上がり始めたという状況なので、そろそろ金融引き締めを緩めて、景気を活性化する方向に政策を切り替えるべきタイミングになっている。
Q. 9月の利下げ幅についてはどう考えるべきか?
9月下旬に予想される利下げについては、0.25%ポイントの利下げからスタートし、慎重に様子を見ながら段階的に進めるのが適切だろう。大幅な利下げは株価にとっては基本的に好材料だが、あまりに急激に金利を下げると、消費が再び過熱してインフレが再加速するリスクもある。
したがって、9月は0.25%ポイントの利下げを行い、その後の状況を見極めながら、年内の11月や12月にも追加の利下げを行うという慎重なアプローチが予想される。
Q. 製造業の状況はどうなっているのか?
ISM製造業指数は現在47程度と、非常に低い水準にある。これは2000年以降でも数回しかない低いレベルだ。ISM指数は50を下回ると景気が悪化したと答えた企業が多いことを示す。この指数は株価と強い連動性を持つことが知られているが、現在は株価が高いままで指数が低いという矛盾した状況が続いている。
この乖離の理由としては、市場がすでに金融緩和を織り込んでいることが挙げられる。現在の市場予想では、2025年末までに政策金利が現在の5.5%程度から3%程度まで下がると見込まれている。ただし、この製造業指数の弱さを考えると、アメリカ株には下落リスクがあると言わざるを得ない。
Q. 今後アメリカ経済は回復するのか?
利下げが続けば、アメリカ経済は回復する可能性が高い。特に住宅市場は金利低下の恩恵を受けやすい。現在の中古住宅販売件数はリーマンショック時のボトムと同レベルまで落ち込んでいるが、これは住宅ローン金利が高いことが主な原因だ。
利下げによって住宅ローン金利が下がれば、住宅販売が活性化し、それに伴って家具や家電などの消費も増加する。そうなれば製造業の指標も上向き、株価との乖離も解消される可能性がある。ISM指数は前月比の変化を示すものなので、最悪期を脱すれば比較的容易に上昇に転じるだろう。
Q. 雇用市場の先行きはどうなるか?
雇用市場については、求人件数が最近急速に低下しており、これが懸念材料となっている。求職者1人あたりの求人件数も、コロナ禍の人手不足時には2件程度あったものが、現在は1件程度とコロナ前の水準に戻っている。
この求人数の推移を見ると、当面は失業率の上昇傾向が続く可能性がある。また、正社員の雇用増加が一服し、パートタイム雇用が増えているという傾向も見られる。企業は不確実性に備えて、より柔軟な雇用形態にシフトしていると考えられる。
Q. 大統領選挙の影響はどう考えるべきか?
大統領選挙の結果を予測することは困難だが、株式市場的には一般的に共和党の方が追い風になるという見方が多い。例えば法人税について、共和党は引き下げる傾向があり、法人税が下がれば株主に帰属する利益が増えるため株価が上昇しやすい。
一方で、関税政策などは輸出を多く行う企業にとってはマイナスになる可能性もある。まずは大統領がどちらになるかを見極め、その上で実行されそうな政策を分析して影響を考えるのが現実的なアプローチだろう。
Q. 日本経済への影響はどうなるか?
日米の経済は大きな流れで常に連動しているため、アメリカが景気後退に陥る中で日本だけが好調を維持するという展開は考えにくい。ただし、アメリカについては、FRBが政策金利を現在の5.5%程度から大幅に引き下げる余地があるため、適切な政策対応によって深刻な景気後退は回避できる可能性が高い。
日本で注目すべきは賃上げの流れが継続するかどうかだ。現在の賃上げは物価上昇を背景としているが、今後輸入物価が下がり始めると、賃上げの大きな理由の一つが消失する。その場合でも企業が持続的な賃上げを続けるかどうかが重要になる。
最近の景気ウォッチャー調査では持ち直しの動きが見られるが、これは名目賃金の上昇が消費者の財布の紐を緩めている効果だと考えられる。実質賃金よりも名目賃金の増加が消費に与える心理的影響は大きいため、名目賃金の増加を維持できるかが日本経済の鍵となる。
Q. 為替相場についてはどう考えるべきか?
為替相場については、水準そのものよりも変動幅が小さい方が企業経営には望ましい。急激な円安や円高は事業計画の見直しを迫られるため、企業にとって不確実性が高まる。
日米の金利差が縮まれば円高方向に進む可能性があるが、極端な変動がないことが経済全体としては望ましい。もし米国が景気後退になり、日本でも物価上昇率が低下すれば、賃上げの流れが止まる可能性もあるため注意が必要だ。ただし、日本の人手不足は構造的なものなので、完全にデフレ経済に戻るということはないだろう。
Q. 株価の見通しはどうか?
インフレ環境では、名目GDP(金額ベース)の成長が株価にとって重要になる。例えば、売上100、コスト50、利益50の企業があり、インフレでこれらが全て倍になると、売上200、コスト100、利益100となり、利益率は変わらなくても利益額は倍になる。この利益額の増加が株価を押し上げる効果がある。
日本ではようやくインフレが持続的になりつつあり、名目GDPの拡大が続けば株価も持続的に上昇する可能性がある。ただし、賃上げの流れが止まると株価にも悪影響が及ぶため、インフレ環境の継続と賃金上昇の持続が株価にとって重要な要素となる。