業界超分析
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2024年9月3日

人気業界と、そのトップ企業をよく知る専門家が、元社員と共に徹底分析していく。今回は「通信」。金融・決済分野の融合で激突する大手4社を解説。 <ゲスト> 石野純也 ケータイジャーナリスト 小栗 伸 NTTドコモ 新規事業プロデューサー / Visionary Engine CEO 大澤陽樹 Ope...
通信業界の実情、料金プランの複雑化、大手3社と楽天モバイルの戦略。さらに「なぜドコモは繋がりにくいのか」という切実な疑問まで、業界に精通した専門家が赤裸々に語る。
現在の通信業界は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社と、新規参入の楽天モバイルという4社体制になっています。大手3社は売上高が約5兆円、営業利益が1兆円近くと横並びの状況です。一方、楽天モバイルはまだ規模が小さく、営業損益も赤字が続いています。
業界全体のトレンドとしては「脱通信」が大きなテーマとなっています。菅政権時代に政府から料金値下げの要請があり、各社とも通信料収入が減少。この状況を打開するため、各社は銀行やポイントサービスなど、通信以外の周辺領域で経済圏を作り、収益を確保する戦略に舵を切っています。
今、業界はちょうど転換点を迎えており、新しいフェーズに入ろうとしている状況です。
確かに各社ともマルチブランド戦略を採用し、料金プランが複雑化しています。各キャリアはメインブランドの他に、オンライン専用の格安プラン、サブブランドなど複数のブランドを展開しており、全部で9種類以上のプランが存在します。
このような複雑化は、利用者それぞれのニーズに合わせたプランを提供するという意図もありますが、一方で「わかりにくい」という問題も生じています。小栗氏は「自分に向いていないプランの情報を知ってしまうと迷う原因になる」と指摘しています。
一般的な目安として、5GB〜10GBほど使用する利用者であれば、ソフトバンクの「LINEMOベーシックプラン」が月額2,990円で比較的安価とのことです。ただし、自分の利用スタイルに合わせて選ぶことが重要です。
通信会社が銀行業務に進出する背景には、「通信料収入だけでは成長が難しい」という現実があります。非通信領域で稼ぐ必要があり、特に金融分野は収益性が高いことが各社の決算からも明らかになっています。
KDDIはauフィナンシャルホールディングスを設立し、auじぶん銀行や証券、保険などを展開。ソフトバンクはPayPayを軸に金融サービスを拡大しています。ドコモだけは自社銀行を持っていませんでしたが、新社長の前田氏は銀行業務への参入を示唆しています。
通信と金融の相性がいい理由としては、月額契約という共通点や、スマートフォンをエントリーポイントとして金融サービスを提供できる利便性があります。また、料金プランと連携したポイント還元などのメリットを提供しやすく、全てのサービスを一元管理できる利便性も大きいです。
さらに、ユーザー側が通信キャリアを変更する際、銀行口座やクレジットカードなども変更するコストが高いため、顧客のリテンション(維持)にも効果があります。
楽天モバイルの現状は、契約数は700万を突破し順調に伸びているものの、営業損益は依然として赤字が続いています。三木谷氏は2023年内に単独での黒字化を目標としており、そのためには契約数を800万〜1000万程度まで増やし、かつARPU(1ユーザー当たりの平均収入)を現在の約2000円から2500円〜3000円に引き上げる必要があるとしています。
石野氏は楽天モバイルの見通しについて、「ネットで言われているほど悪くはないが、大手3社レベルになるにはまだまだ時間がかかる」と分析しています。
一方で、楽天モバイルの参入は業界全体に影響を与えており、大手3社も料金プランの見直しを余儀なくされました。ドコモの「ahamo」や「irumo」、ソフトバンクの「LINEMO」などの格安プランは、楽天モバイルへの対抗策として登場したものです。小栗氏は「楽天モバイルがなかったらahamoももっと値段が高かったと思う」と指摘しています。
楽天モバイルの特徴的な点として、他の3社が通信インフラを基盤に上位レイヤーのサービスを展開しているのに対し、楽天は元々ECや金融など上位レイヤーが強く、そこから通信分野に下りてきたという逆方向のアプローチを取っていることがあります。
ドコモの通信障害について、石野氏は主に以下の要因を挙げています:
1. コロナ禍の行動制限緩和後、人々が街に戻ってきた際のトラフィック増加が予想を大きく上回った
2. 他社と比較して、トラフィック吸収のための特化した子会社(KDDIのUQやソフトバンクのワイヤレスシティプランニング)を持っていなかった
3. 5Gネットワークの設計に関する問題。ドコモの5Gは高い周波数帯で速度優先の設計だが、4Gから5Gへの切り替え時にスムーズに移行できないケースがある
エリアカバレッジについては、地方ではドコモの評価が高く、「都市部と地方で評価の差がある」と石野氏は指摘しています。また、5Gの速度については「繋がれば、ドコモも非常に速い」としています。
各社の社長はそれぞれ特徴的なキャリアを持っています:
ドコモ:前田裕二氏
リクルート出身ながらドコモでは20年以上のキャリアを持ち、iモードやDマガジン、D払いなどコンテンツ・決済サービスを手がけてきた。就任はサプライズ人事と言われたが、「コンテンツと通信の両方に強い」人物。新社長就任後、最初に通信品質の改善を約束している。
KDDI:高橋誠氏
京セラ出身で、技術系のバックグラウンドを持つ。通信インフラからコンテンツまで幅広い経験があり、スタートアップ経営者にも近い関係を築いている。「通信技術に詳しくかつコンテンツサービスも強い」という、KDDIの現在のポジションを反映した人物。
ソフトバンク:宮川潤一氏
技術畑出身で、自身の通信会社がソフトバンクに買収されてグループ入り。CTOを務め、アメリカのスプリント買収時にもネットワーク技術面で貢献。技術に関する質問に熱く語るタイプで、営業やマーケティングに強いイメージのソフトバンクでは少し異色の存在。
楽天モバイル:シャラットスリーオアストア氏・鈴木利行氏の共同CEO体制
外国人比率が高く、特にインド系エンジニアが多い組織。ただし、料金プランやマーケティング施策については三木谷会長の意向が強く反映されている。
通信業界は新規事業を積極的に展開している成長段階にあり、新しいことにチャレンジしたい人には良い環境です。ドコモでは「将来起業することを前提に修行として10年くらい」というキャリアパスも歓迎されているとのこと。
小栗氏によれば、ドコモでは新規事業で子会社を設立する際、従来はドコモが株を持つ形だったが、最近は「ドコモを辞めて自分の会社にできる」制度も整備されているようです。
石野氏は「取りあえず就活で、とりあえずコンサル行け」という流れのように、「とりあえず通信行く」というのもありかもしれないと示唆しています。
通信業界全体として、固定的なインフラ産業から多様なサービスを展開する会社へと変化しており、その中でさまざまなキャリアパスが生まれています。