
自分でできる子に育つほめ方・叱り方
子育ての達人に聞く!「自分でできる子」に育てる親子コミュニケーション術
「子どもには自立してほしい」「自分でできる子に育ってほしい」と願う親は多いものの、日々の子育てにおいて、どうコミュニケーションを取れば良いのか悩むことも少なくありません。今回は子育てにおけるコミュニケーションの基本と実践方法について、専門家の島村華子さんに聞きました。
Q. 子どもとの会話で大切なことは何ですか?
子どもとの会話では「SOLER法則」が基本となります。この法則は効果的な傾聴の姿勢を示すもので、座る位置や姿勢、アイコンタクトなどが含まれます。特に重要なのは、子どもに体全体を向けて話を聞くことです。顔だけを向けるよりも、体ごと向いて聞く方が「本当に聞いている」という印象を与えられます。
また、オープンな姿勢を保つことも大切です。腕を組んだり足を組んだりすると、防御的な印象を与えてしまいます。アイコンタクトは日本の文化に合わせて適度に行い、リラックスした状態で話を聞きましょう。
子どもと話す時は、大人同士の会話と同じように尊重することが重要です。幼稚園や保育園でよく行われる「子どもの目線に合わせてしゃがむ」といった基本的な姿勢も、家庭での会話に取り入れると効果的です。
Q. 子どもの話をきちんと聞くコツはありますか?
子どもの話を聞く際は「反映力」と呼ばれる4つのポイントを意識すると良いでしょう。
1. 反復:子どもの言ったことをそのまま繰り返す(オウム返し)
2. 言い換え:同じ内容を別の言葉で表現する
3. 明確化:より詳しく知りたい点を質問する
4. 要約:話の内容をまとめる
特に小さな子どもには「反復」が効果的です。大人同士の会話では過剰に感じられることもありますが、子どもには「聞いてもらえている」という安心感を与えます。
また、子どもが何かをしている様子を「実況中継」するように言葉にするのも有効です。「この積み木を右手で取ったね」など、子どもの行動をそのまま言葉にすることで、語彙力も伸ばせます。
Q. 子どもを褒める時の注意点はありますか?
褒め方には「おざなり褒め」「人中心褒め」「プロセス褒め」の3種類があります。それぞれ効果が異なるので理解しておくことが大切です。
「おざなり褒め」は「すごい!」「えらい!」など、何に対して褒めているのか情報が少ない褒め方です。この褒め方を続けると、子どもは外部からの評価に依存するようになり、誰からも褒められないと不安になってしまいます。
「人中心褒め」は「あなたは頭がいいね」「あなたは優しいね」など、子どもの特性に言及する褒め方です。この褒め方は、子どもにその評価を下げないようにというプレッシャーを与えてしまいます。例えば、常に「頭がいい」と言われ続けた子は、テストで失敗した時に大きく傷つきやすくなります。
最も効果的なのは「プロセス褒め」です。子どもが頑張ったプロセスや工夫したことに注目してコメントする方法で、「褒める」というよりは「励まし」や「応援」に近いものです。
Q. 具体的にどのように褒めればいいですか?
例えば、子どもが積み木を積んだ場合、「すごい!」と言うだけでなく、「高いところまで積めたね」と具体的に何がすごいのかを伝えると良いでしょう。
モンテッソーリ教育では、子どもが生活上で当然できることをわざわざ褒めることはしません。例えば、スプーンで食べられたら「スプーンで食べられたね」と事実を述べるだけで十分です。また「一緒に食事ができて楽しいね」というように、評価ではなく感情を共有する言葉かけも効果的です。
「可愛いね」といった外見に関する褒め言葉も、使いすぎると子どもは「可愛さ」でしか自分の価値を見出せなくなる可能性があります。様々な側面から子どもを見て、多様な言葉をかけることが大切です。
Q. 子どもを叱る時のポイントは?
叱り方にも効果的な方法とそうでない方法があります。体罰や怒鳴るといった「口頭による罰」、事象と関係ない物を取り上げる「物理的な罰」、子どもを無視するといった行為は避けるべきです。
こういった罰を与えると、子どもは「なぜこんな目に遭うのか」という不満にフォーカスし、「悪いことをした」という反省には至りにくくなります。結果的に反抗的・攻撃的な態度を生み出してしまうことがあります。
モンテッソーリ教育では「ゴールデンルール」として、次の3つの場合に限り介入するとされています:
1. 子ども自身に危害が及ぶ時
2. 周りの人に危害を与える時
3. 環境(物)に危害を与える時
例えば、子どもが調味料を振り回して舐めるような行為は止める必要がありますが、その場合も「ダメ!」と言うだけでなく、子どもの興味に合わせて、安全に同じような行為ができる環境を作ってあげる方が建設的です。
Q. 子どもが感情的になった時はどう対応すればいいですか?
子どもが感情的になって足を踏み鳴らしたり、泣き叫んだりした時は、まず「嫌なんだよね」というクッションの言葉を入れると効果的です。大人は「やめなさい」と言いがちですが、まず子どもの感情を受け止めることが大切です。
また、音が気になる場合は「音を吸収するマットの上なら踏んでもいい」というように、適切な場所を用意することも一つの解決策です。子どもに選択肢を与え、「自分で行く?それともお父さんが連れていく?」と聞くことで、子どもに自己決定の機会を与えられます。
感情的になっている子どもは脳が「ハイジャック」された状態で、理性的な判断ができません。発達段階によって自己コントロール能力は異なるので、成長とともに少しずつ改善していくことを理解しておきましょう。
Q. 他の子のおもちゃを取ってしまう時はどうすればいいですか?
子どもが他の子のおもちゃを取ってしまう場面では、まず「そのおもちゃで遊びたかったんだよね」と子どもの気持ちを受け止めてから、「でもこの子も使いたいから、シェアしようね」と境界線を示すことが大切です。
「ダメでしょ」「小さい子に優しくしなきゃダメでしょ」と言ってしまいがちですが、まずは子どもの気持ちに寄り添ってから、適切な行動を教えるアプローチが効果的です。子どもに対しても、まずは一言受け止めてから境界線を引くことで、子どもは自分の気持ちが尊重されていると感じられます。
Q. 親自身が感情的になってしまう時はどうしたらいいですか?
親も完璧ではないので、感情的になってしまう日があって当然です。そんな日は自分自身にも「こういう日もあるよね」と優しくする「セルフコンパッション」が大切です。
子どもの機嫌や体調に左右されて自分も気分が落ち込んでしまう時は、自己批判を続けないことが重要です。親が自分自身を責め続けることは、子どもにとっても良い影響を与えません。
子育てにおいては、科学的根拠に基づきながらも、長期的な視点で見ることが大切です。例えば、小さい時に偏食があった子どもでも、長い目で見れば食べられるものは増えていきます。研究によれば、幼少期の偏食の有無が将来の体力や学力に大きな差をもたらさないというデータもあります。
子育てでは、子どもを単なる「分身」としてではなく、「権利を持った一個人」として尊重する視点が重要です。バツと褒美で操るのではなく、子ども自身の内発的動機を育てるアプローチを心がけましょう。
