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初の600兆円超えも「GDPには欠点がある」【永濱利廣・後編】
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2024年8月19日

EXIT・りんたろー。と国山ハセンが株・保険・住宅など資産運用にまつわるスキルセットを学ぶ。第一生命経済研究所の首席エコノミスト・永濱利廣氏がGDPなど、株価に影響を与える経済指標の見方をわかりやすく解説。 <ゲスト> 永濱利廣(第一生命経済研究所 首席エコノミスト)
日本経済の真実Q&A - 円安と景気、アメリカ経済の影響を徹底解説
「円安は善か悪か」「日本経済の問題点はどこにあるのか」といった経済の基本的な疑問について、わかりやすく解説します。GDP、物価上昇、賃金問題など、私たちの生活に直結する経済問題を専門的視点から紐解きます。
Q. デジタル赤字は日本だけの問題?
デジタル赤字は日本だけの問題ではありません。実はアメリカを除く全ての国がデジタル赤字の状況にあります。これは、世界中で使われているデジタルサービスのほとんどがアメリカから提供されているためです。Netflix、Amazon Primeといったサービスは世界中で利用されており、その利用料は全てアメリカに流れています。
円安の要因としてデジタル赤字が挙げられることがありますが、日本以外の国もデジタル赤字なのに日本円だけが特に安いということは、主因はデジタル赤字ではないと考えられます。
Q. GDPから日本の景気状況をどう読み取る?
GDPは国内総生産を表し、その変化率が経済成長率となります。この指標がプラスなら景気が良く、マイナスなら景気が悪いと判断できます。
日米欧のGDPを比較すると、日本は水準が低く変動が激しい傾向があります。アメリカは比較的上位を推移し、ユーロ圏はその中間という状況です。これから日本の景気が他国と比較して芳しくないことがわかります。
ただし、GDPには四半期に一度しか発表されないという欠点があります。より短期的に景気を判断するには「景気動向指数」を使います。これは景気に先行して動くデータ、連動して動くデータ、遅れて動くデータをそれぞれ合成したものです。特に現在の景気を反映しているのが一致指数です。
Q. 日本のスタグフレーションとは何?
日本では現在、物価上昇しているにも関わらず景気が良くない状況、つまり「スタグフレーション」に陥っています。通常、物価上昇は景気が良いことによって引き起こされるイメージがありますが、日本の場合は違います。
日本の物価上昇は、国内の景気と関係なく海外からの輸入品の価格が上がっていることが主因です。これは日本人が海外に支払うお金が増え、国富が海外に流出していることを意味します。特に食料とエネルギーの自給率が低い日本は、ロシアのウクライナ侵攻による世界的な供給減少の影響を大きく受けています。
さらに深刻なのは、個人消費が4四半期連続でマイナスとなっていることです。物価上昇により私たちの購買力が低下し、消費量が減少しているのです。
Q. 日本企業の利益は上がっているのに賃金が上がらないのはなぜ?
日本企業、特に大企業の利益は確かに上がっています。例えばトヨタ自動車の昨年度の営業利益は4兆円を超えました。しかし、これらの利益の多くは海外市場で生み出されたものです。そのため、優先的に賃金が上がるのは海外で働く従業員となり、国内で働く人の賃金上昇にはつながりにくいという側面があります。
また、株式会社の最大の使命は株主のための利益最大化です。従業員の賃金は企業からすればコストであり、利益を最大化するためには人件費を抑えようとする傾向があります。
日本企業が過去最高の内部留保を積み上げていることを考えれば、賃金をもっと上げられる余地はあります。しかし、労働市場の流動性が低いことも賃金が上がりにくい要因となっています。
Q. 若い世代の賃金が上がっているのはなぜ?
最近の若い世代、特に20代の賃金は実は上昇傾向にあります。これは彼らの転職への抵抗感が低く、労働市場の流動性が高まっているためです。
新卒の約3割が3年以内に退職すると言われています。こうした状況で企業は人材確保のために若い世代に対して比較的高い給与を提示せざるを得なくなっています。
一方、賃金が下がっているのは30代後半から50代前半の層です。特に就職氷河期世代は転職も難しくなり、企業から「足元を見られる」状況にあります。
Q. 賃金を上げるにはどうすればよい?
賃金を上げるためのアイデアとして、以下のような方法が考えられます:
1. ストックオプションの活用:給与の一部を会社の株式で支払うことで、従業員が会社の成長を自分事として捉え、モチベーション向上にもつながります。
2. 家賃補助の拡充:生活コストの大きな部分を占める住居費を企業が補助することで、実質的な可処分所得を増やせます。
3. 労働市場の流動性向上:定期的な転職を前提とした雇用システムを構築することで、企業間の人材獲得競争が活性化し、賃金上昇につながります。
実際に成功している例として、群馬県と大分県では実質賃金がプラスになっています。両県の共通点は、賃金を上げた企業に補助金を出す制度を導入していることです。税制優遇だけでなく補助金を出すことで、赤字企業でも賃上げしやすくなっています。
また、群馬県では外資系企業のコストコが時給1500円でアルバイトを雇い始めたことで、周辺企業も賃金を上げざるを得なくなりました。さらに、スバルがEV向け国内工場を60年ぶりに新設することで雇用が生まれ、景気が良くなっています。
Q. 円安は良いこと?悪いこと?
円安については、立場によって評価が分かれます。経済全体、特にGDPで見ると、円安は若干プラスに働きます。自国通貨が安くなると、国内で生み出された商品やサービスが世界で売れやすくなり、GDPが増加するためです。
実際、昨年の日本の名目GDPは5%以上増加しました。しかし、この付加価値の増加分はどこに行ったのでしょうか?
円安で最も恩恵を受けているのは政府です。物価上昇に伴い税収が増え、外貨建て資産の価値も膨らみます。次に利益を得ているのはグローバル展開している企業です。
本来であれば、政府や大企業が得た利益を円安で苦しむ中小企業や個人に分配すれば、みんながハッピーになるはずですが、その機能がうまく働いていません。
結論として、行き過ぎた円安も円高も良くありません。政府の使命は国民生活の安定であり、適度な水準が望ましいのです。
Q. アメリカ経済が世界経済に与える影響は?
アメリカは世界のGDPの4分の1以上を占める経済大国です。さらに特筆すべきは、アメリカのGDPのうち約75%が個人消費であることです。つまり、世界経済はアメリカ人の消費活動によって大きく左右されています。
アメリカの景気を判断する指標としては、ISM景気指数が重要です。これは製造業と非製造業の状況を示し、50が好調不調の分岐点となります。直近の6月のデータでは両方とも50を下回っていますが、これはむしろアメリカの過熱していた経済が正常化しつつあることを示しています。
また、インフレ率を示すPCEデフレーターも重要な指標です。FRBのインフレ目標2%に対して、現在はまだそれを上回っていますが、短期的な変化を見ると原則感が出てきており、利下げの可能性も高まっています。
アメリカ経済の強さの要因の一つは、積極的な財政政策です。GDP比で8.8%と日本の1.5倍の財政赤字を出していますが、これを将来の成長に寄与するインフラ整備や人材投資に回しています。一方、日本は政府の借金を過剰に意識し、必要な投資ができていない状況です。