
大統領選挙後のマーケット
米大統領選後のマーケットはどう動く?専門家が徹底解説
アメリカの大統領選挙は世界経済に大きな影響を与える重要イベント。トランプ氏とハリス氏、どちらが勝っても市場はどう反応するのか?日米関係や投資戦略はどう変わるのか?専門家たちの鋭い分析から、今後の経済展望を探る。
Q. アメリカの現在の国内雰囲気はどうなっていますか?
アメリカ全体で見ると内向き志向が強まっています。ウクライナ国境問題も重要ですが、南部国境での不法移民対策の方が優先されるべきだという意見が増えています。国際社会の平和と安定は重要ですが、なぜアメリカだけがその責任と負担を全て負わなければならないのかという疑問が広がっています。
本来なら国内に回るべき投資が国外に流れており、不満が高まっています。しかし、国際社会の平和と安定へのコミットメントは引き続き重要です。その負担をアメリカ一国に求めるのではなく、日本も含めた同盟国がきちんと役割を果たし、共に国際社会の平和と安定を維持する姿勢を示すことが大切です。
Q. 世界の警察官としてのアメリカの立場に変化はありますか?
アメリカは現在、国際的な立場について迷いを見せています。かつてのように一国だけが圧倒的な経済力と軍事力を持っていた時代とは異なり、現在はアメリカだけが負担を背負うべきなのかという疑問が生じています。
しかし、国際社会が不安定になればアメリカも困りますし、日本も同様です。そのため、グローバルな協力を推進することが重要です。この面で国際社会の日本に対する期待は非常に高まっています。
日本は近年、イギリスやイタリアと将来戦闘機を共同開発し、オーストラリアやフィリピンとの安全保障関係も強化しています。この方向性は、共和党・民主党のどちらの政権下でも、またトランプ氏が再選されても変わらないでしょう。
Q. 日本に対する国際的な期待はどのようなものがありますか?
日本のGDP比に対する防衛費が上昇していることへの期待があります。将来的には防衛費を2%から3%、4%へと引き上げる選択肢も考えられます。
また、G7をまとめる役割が日本に期待されています。ウクライナ支援に疲れを見せるヨーロッパ諸国や、パレスチナ問題について意見が分かれる中で、日本がそれぞれの違いを共通点に結びつける役割が重要です。
さらに、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国の影響力が増している中で、日本の外交手腕が期待されています。これらの国々は経済発展段階や地政学的位置、中国・ロシアとの関係などが様々で、貿易ルールや気候変動問題について自分たちの主張を強めています。
西洋型の民主主義を押し付けるのではなく、各国の歴史、文化、経済発展段階、置かれた状況を考慮して、相手国にもメリットのある形で関係を構築する点では、欧米諸国より日本の方が適しているという見方があります。日本は非西洋国でありながら民主主義を達成した国として説得力があります。
Q. 大統領選の結果はマーケットにどう影響しますか?
トランプ氏が勝った場合とハリス氏が勝った場合、株式市場が上がるか下がるかという一面的な議論がよくありますが、実際は上がる業種と下がる業種に分かれます。
マーケットは元々リスク選好的な環境の中で、大統領選という不確定要素があるため横ばいに推移していますが、選挙が終われば本来の流れに戻ります。元々上昇傾向だった相場は上がり、下降傾向だった相場は下がるでしょう。
大統領候補が支持する政策によって恩恵を受ける業種は変わります。例えば、トランプ氏が当選すれば化石燃料株が恩恵を受け、バイデン政権下では再生可能エネルギー株が恩恵を受けました。
半導体については、トランプ氏は選挙レトリックとして制裁をかけると言及していますが、実際には閣僚人事(通商代表、財務長官、商務長官)によって政策は調整されるでしょう。暗号資産(仮想通貨)については、民主党政権は規制を重視し、共和党は規制緩和を志向する傾向があります。
Q. ハリス氏が当選した場合はどのような影響がありますか?
ハリス氏が当選した場合、バイデン政権と同様の政策が続くと予想されます。再生可能エネルギーやEV車産業が恩恵を受けるでしょう。
しかし興味深いのは、バイデン政権がEV推進を掲げる一方で、テスラのイーロン・マスクがトランプ氏を支持している点です。これは単に個人の性格による部分もありますが、トランプ氏がEV車に対して規制をかけるというよりも、化石燃料自動車も含めたバランスの取れた政策を目指す可能性があります。
Q. 株式市場の長期的な見通しはどうですか?
国の経済成長が株価の中長期的な動向を左右します。日本の場合、2%のインフレを継続できるか、GDPの成長を継続できるかが重要です。一時的な下落があっても、中長期的には経済成長と共に株価も上昇するでしょう。
現在の株価調整は上昇しすぎた分の調整であり、投資のチャンスと捉えることができます。日経平均は再び4万円に戻る可能性があります。
ただし、政治が経済成長を促す政策をしっかり実施することが前提です。政治がしっかりと経済成長政策を実施すれば、株価は自ずと上昇します。
Q. 日本の経済成長のために何が必要ですか?
日本の経済政策で重要なのは生産性の向上です。アメリカはこの10年で生産性が1割以上伸びた一方、日本はほぼ横ばいの状態です。生産性を向上させることで一人当たりの所得や年収を上げ、物価高を乗り越えていくことが重要です。
特に中小企業ではシステム導入などにより生産性を向上させる余地が大きく残されています。また、エネルギー供給地と半導体やデータセンターなどの需要地を近づける流れが出てきており、これは東京一極集中の是正にもつながります。
日本への投資を増やすためには規制緩和が必要です。日本は安全で安心な国として認識されていますが、様々な規制が障壁となっています。例えば、熊本のTSMC工場はアメリカの工場より早く稼働する見通しですが、ライドシェアのような分野では規制の壁が大きく、参入が難しい状況です。
Q. 為替相場はどう動くと予想されますか?
為替の動きについては、これまで蓄積された円キャリートレード(円を売って他の通貨で運用する取引)のポジションが巻き戻されたという側面があります。企業にとっては為替が安定することが最も重要です。
円安にしても円高にしても、メリットを最大化し、デメリットを最小化する政策を取ることが大切です。「円安が良いか悪いか」という二項対立的な議論は建設的ではありません。
大統領選そのものは為替に直接影響しませんが、新政権の政策が影響します。例えば、トランプ政権で財務長官にロバート・ライトハイザー氏が就任し、ドル安政策を導入すれば、円相場が1ドル100円を割る可能性もあります。
日本としては、アメリカの新政権の信頼を得て意見を言える関係を構築し、日本の国益を守る政策をアメリカに促せるような外交が重要です。トランプ氏とハリス氏のどちらが良いかという議論よりも、日本の政権がアメリカをいかに日本の国益を守る方向に導けるかが重要です。
極端な円高も極端な円安も良くありませんし、急激な変動も望ましくありません。一定のゾーンの中で為替を考える必要があります。なお、ハリス氏よりもトランプ氏の方が円安になる可能性が高いという見方もあります。トランプ氏が一律10%の関税を導入するなど、「アメリカ・ファースト」の閉鎖的な政策を取れば、ドル安につながる可能性があるからです。
