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日本株復活の条件。カギはTOPIX見直し
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2024年8月10日

大暴落後も不安定な動きを続ける日本の株価。今、日米の株式市場に何が起きているのか?AIバブルは崩壊したのか?日本株が立ち直るための条件は何か?ピクテ・ジャパンの糸島孝俊ストラテジストに聞いた。 <ゲスト> 糸島孝俊|ピクテ・ジャパン ストラテジスト 証券系シンクタンクの企業調査アナリストを経て、日...
「日本株は通貨強化の最後のチャンス」— 東証改革が変える日本企業の未来
大きく下落した日本株市場。個人投資家は売り逃げていたのか?投資のプロが語る日本企業の変革と投資戦略の秘訣。「もしかしたら日本は通貨が強い国になれる最後のチャンスかも」と糸島氏は語る。
Q. 最近の急激な株価下落に対して、個人投資家はどう行動すべきでしょうか?
株価の急落時に現金に逃げるのは一つの選択肢だ。しかし、長期的に現金のままでは物価上昇に対応できない。日本も食品価格やエネルギー価格が大幅に上昇している。物やサービスの価格はどんどん上がるが、現金には利息がつかない。
一時的な避難としての現金化は理解できるが、長期間そのままにするのはおすすめしない。何かに投資し続ける必要がある。今の投資先が適切でないと判断したなら、別の投資先を探すべきだ。
Q. 最近円高が進んでいますが、これは投資にどう影響しますか?
以前は162円だった円ドルレートが142円程度まで円高になった。これは日本に住んでいる人にとって実はプラスだ。もし全てドル建て資産を持っていたら、日本での購買力は減ってしまう。
円建て資産を持っていた人は、株で損失があったとしても、ドル建てで持っていた場合よりも状況は良い。円の価値が戻ってきたため、例えば海外旅行に行くと以前より物価が安く感じるはずだ。
実は、日本株が下落しても海外投資家にとってはドルベースでそれほど下がっていない。円高になっているからだ。これは日本株がアメリカ株と連動しなくなる可能性を示している。日本企業が円高でも成長できる体質に変わっていけば、為替に左右されない株価形成が可能になる。
Q. 日本の個人投資家は今回の下落でどのような行動をとっていますか?
興味深いことに、日本の個人投資家はこの数年間、株価が上昇している局面でも継続的に売り越していた。2023年の春から夏にかけて株価が大きく上昇した時も、多くの個人投資家は売り続けていた。4万2000円近くまで上昇した過程でもほとんど売りが優勢だった。
これには複数の理由が考えられる。株式を保有している方の年齢が高くなってきたこと、長期間の下落後にようやく購入価格に近づいたため利益確定売りが出たこと、あるいは日本株に対する魅力を失っているのかもしれない。
重要なのは、日本の個人投資家はそもそも株をあまり保有していないという事実だ。今回の下落で大きな影響を受けているのは主に海外投資家だろう。この局面からの回復過程で、日本の個人投資家が市場を支える役割を果たす可能性がある。
Q. 今回の大きな下落は何が原因で、今後の見通しはどうでしょうか?
今回の下落には複数の要因がある。まず、エンキャリートレード(円安に賭ける取引)の巻き戻しが始まった。為替が動き始めると、多くの投資家はポジションを持ちにくくなる。円高傾向が続き、日米金利差が縮小していく方向になると、このトレードは減少していく。
また、アメリカの景気見通しが不透明な点も大きい。インフレがどうなるか不確実で、11月の大統領選挙に向けて政治的不確実性も高まっている。トランプ氏とハリス氏のどちらが勝利するかで政策が大きく変わるため、多くの投資家は様子見の姿勢を取っている。
さらに中東情勢の緊張も市場に影響している。イスラエルとイランを含む地域の問題がエスカレートすれば、石油価格が高騰し世界経済に影響を与える可能性がある。
この年後半は不確実性が高まる時期なので、慎重な投資姿勢が必要だ。今回の下落は一時的なものかもしれないが、市場が完全に回復するにはしばらく時間がかかるかもしれない。
Q. 日本の株式市場に大きな変化が起きていると聞きましたが、具体的にはどのような変革ですか?
東京証券取引所は「TOPIX(東証株価指数)」の大幅な見直しを進めている。2026年10月から2028年7月にかけて、新しいTOPIXへ段階的に移行する計画だ。
現在約2000銘柄あるTOPIXの構成銘柄が、将来的には約1000銘柄程度まで減少する見込みだ。つまり、現在のプライム市場に上場している企業の約半分しか、次世代のTOPIXには残れない可能性がある。
これは大きな変化だ。TOPIXに採用されていないと、インデックスファンドに組み入れられない。個別に投資家から評価されなければならなくなり、経営不振の企業は株価が下落するリスクがある。株主からの圧力や、アクティビスト投資家の標的になる可能性も高まる。
さらに新制度では、上位96%の銘柄は残れるが、下位4%は毎年入れ替わる仕組みになる。つまり、一度TOPIXに入っても安住できず、常に競争にさらされることになる。
Q. この東証改革は日本企業にどのような影響を与えますか?
この改革は日本企業に大きな変革をもたらす可能性がある。上場企業、特にプライム市場の企業は二極化する。TOPIXに採用される企業と、採用されない企業に分かれるのだ。
これにより企業の経営者は競争せざるを得なくなる。株主価値を高め、時価総額を増やすための努力を強いられる。TOPIXに残るためには、企業価値を高める施策を打ち出し続ける必要がある。
この変化は上場企業だけでなく、その取引先である中小企業や零細企業にも波及する。上位企業のルールが変われば、取引先も変わらざるを得ないからだ。結果として、日本企業全体が強くなる可能性がある。
重要なのは、現在優れた企業であっても横ばいの成長では追い抜かれてしまうこと。これからは変化して成長していく企業が評価される。下克上で上がってくる銘柄を探すチャンスでもある。
Q. アメリカの大統領選挙は株式市場にどう影響しますか?
アメリカの大統領選挙は市場に大きな影響を与える可能性がある。現在、民主党のハリス候補と共和党のトランプ候補が接戦を繰り広げている状況だ。
どちらの候補が勝利するかで政策が大きく変わる。ハリス氏が勝てば現政権の流れが続くが、トランプ氏なら移民政策や国際関係など多くの面で大きな変化が起きるだろう。
選挙戦が激化する9月から10月にかけては、市場が混乱する可能性が高い。賢明な投資家はこの時期、様子見の姿勢を取ることが多い。そのため、半分程度は現金で保有し、機会があれば投資する戦略も検討する価値がある。
市場の見通しを考える上で重要なのは、9月17-18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)の動向だ。FRB(連邦準備制度理事会)がどのような金利政策を取るかで、株式市場は大きく動く可能性がある。
Q. これからの投資戦略をどう考えるべきでしょうか?
今後数年間は変動の大きい相場が続く可能性が高い。短期的には上下の振れ幅が大きくなるため、防御しながら運用する姿勢が重要だ。
中長期的には、日本企業の構造改革に注目すべきだ。特に東証改革によって企業の経営姿勢が変わり、より株主重視の経営が進むと予想される。
日本に住み続ける予定なら、一部は日本株に投資することも検討する価値がある。特に今後数年間かけて、企業価値を高めていく変革企業に注目したい。明日のパフォーマンスを求めるのではなく、3〜4年の時間軸で投資することが重要だ。
短期投資家も長期投資家も、お互いに学び合い切磋琢磨することで投資スキルを高められる。どちらの投資スタイルも尊重しつつ、自分に合った戦略を見つけることが成功への道だろう。