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スモールIPOは悪なのか?
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2023年3月11日

Video Podcast番組「PIVOT SESSION」。グロース・キャピタルCEOの嶺井政人氏に「上場スタートアップの成長戦略」について聞いた。[sponsored] <ゲスト> 嶺井政人/グロース・キャピタル CEO 早稲田大学在学中にマーケティングソリューションを提供するセールスサポート...
上場スタートアップこそ日本の未来を拓く成長の原動力だ
日本では時価総額300億円未満の上場企業が数多く存在し、その数は未上場のユニコーン候補企業を遥かに凌駕する。しかし、「上場ゴール」という言葉に象徴されるように、これらの上場スタートアップが本来の成長力を発揮できずに停滞する現実もまた存在する。この問題の根源はどこにあり、どうすれば日本の「伸びしろ」たる上場スタートアップを真に成長させることができるのか。
今回は、スタートアップ投資と成長支援の最前線に立つグロース・キャピタルの南野正人氏が、その本質と打開策を語る。
Q. なぜ上場スタートアップは日本にとって重要なのか?
「上場スタートアップこそが日本の大きな伸びしろである」と南野氏は語る。日本の全上場企業約3900社のうち、時価総額300億円未満の企業が2400社も存在する。この数は、レイトステージの未上場スタートアップが461社に過ぎない状況と比較すると、極めて大きい。過去、日本の旧マザーズ市場(現グロース市場)は海外のレイトステージ市場を代替する役割を果たし、年間約100社のスタートアップを上場させてきた。
この結果、有望なスタートアップの多くは上場後のステージに存在するのだ。実際、2013年以降に時価総額300億円未満で上場した企業の中から、後に時価総額1000億円超を達成した企業は51社もある。これは、現在の未上場ユニコーン企業数(12社)を大きく上回る数である。上場スタートアップは、日本にとって大きな成長のポテンシャルを秘めた「金の卵」と呼ぶべき存在なのだ。
Q. 政府のスタートアップ政策は未上場に偏っているが、この現状をどう評価するのか?
岸田政権が2022年に掲げた「スタートアップ育成5カ年計画」は、未上場スタートアップへの投資を10兆円規模にし、ユニコーン企業を100社創出するという意欲的な目標を掲げている。しかし、これらの目標は「未上場」に限定されており、ここに大きな問題があると南野氏は指摘する。
スタートアップを育成する真の目的は、日本からイノベーションを起こし、新産業を生み出すことである。これは上場後も成長を継続してこそ達成されるものであり、「未上場」か「上場」かで線引きするのは本質ではない。上場しているかどうかにかかわらず、漸進的な成長を通して社会課題を解決しようとする企業を「スタートアップ」と定義するならば、未上場にのみ注目する現在の政策は不十分と言える。
Q. 「小型IPOは悪」「上場ゴール」という批判があるが、その実態と真の原因は何なのか?
「小型IPOは悪」「上場ゴール」という批判があるように、上場後に成長が減速する企業が少なくないという実態は確かにある。新興市場に上場した企業の上場後3年間を調べたデータでは、全体の4分の1以上が売上成長できておらず、中央値では営業利益がマイナス成長、時価総額もほとんど横ばいで推移している。
しかし、この状況を「小型上場は悪であるため上場ハードルを上げるべき」という意見で片付けるべきではない。なぜならば、上場ハードルの引き上げは、企業が成長機会を奪われることに繋がりかねないからである。そうではなく、上場後の成長停滞は、主に四つの構造的な課題に起因すると南野氏は分析する。
レイトステージ(未上場)への資金供給不足: 多くのスタートアップは早期上場により資金調達するしかない。
成長投資しづらい構造: 上場前後の約5年間は、減益を嫌う市場圧力によりM&Aや大規模マーケティング投資がしづらく、投資の空白期間となる。
非効率なM&A環境: 日本では大企業によるスタートアップM&Aが少なく、多様な選択肢がない。
新陳代謝の欠如: 成長しない小型企業が市場に乱立し、人材やコストが分散され非効率である。
つまり、「上場ゴール」は経営者のマインドの問題ではなく、成長投資を阻害する市場や制度の構造的な問題である。これらの課題を解決し、企業が自由に成長戦略を選べる環境を整備することが重要である。
Q. 上場後の成長を加速させるには、どのような「攻めの戦略」が必要なのか?
上場スタートアップが成長を継続するには、「適切な市場評価→資金調達→戦略実行(成長投資)→成長実現」という好循環のサイクルをしっかり回す必要がある。そのための「攻めの戦略」として、IR戦略とM&A戦略の二つが重要となる。
特にM&Aについては、単に売上を足し合わせる「足し算」のM&Aではなく、買った会社を自社の顧客基盤やブランド力といったアセットを活用してオーガニックに成長させ、さらに自社の本体事業も強化する「掛け算」のシナジーを生むM&Aを目指すべきである。例えば楽天が楽天証券や楽天トラベルを買収後に、楽天経済圏の力で大きく成長させたのは典型的な成功事例と言える。
しかし、現状では小型の上場スタートアップが大手投資銀行から支援を受けることは難しい。規模が小さい案件では収益性が低く、優秀な人材が割かれにくいからである。グロース・キャピタルは、この支援の空白地帯を埋めるべく、資金調達とM&A、マーケティング、新規事業などの戦略実行支援をセットで提供し、上場スタートアップの成長を後押ししている。
Q. IR戦略を成功させるための秘訣は何か?
IR戦略は、時価総額のフェーズに応じてターゲットと内容を切り替えることが秘訣である。時価総額300億円未満の企業は個人投資家が中心となるため、個人投資家向けのIRに注力すべきだ。彼らは企業の網羅的な情報よりも、経営者の熱い想いや創業ストーリーといった「共感」できる部分を重視する。経営者がメディアに出て積極的に語りかけることが効果的だろう。
一方、時価総額が300億円を超え、機関投資家がターゲットになると、IRは「B2B営業」の側面を帯びる。そこでは感情論だけでは通用せず、事業のファンダメンタルズ分析に基づいた経済合理性をロジカルに説明する能力が求められる。専門知識を持つCFOなどが表に立ち、客観的なデータに基づいた対話を行うべきである。
ユーグレナはその好例である。創業当初「ミドリムシで飛行機を飛ばす」という夢を個人投資家に語り共感を得て資金を調達した。その後、事業が具現化しプラント建設が進む中で、ファンダメンタルズで評価可能な段階に入ると機関投資家との対話を本格化させ、投資家層の移行に成功している。経営者は感動を語り、CFOは数字で示すといったチームプレイが、IR成功の鍵となる。
Q. 日本の未来を切り拓くために、どのようなビジョンを描くべきか?
南野氏は、日本の未来のために「上場ユニコーンを100社量産せよ」という国家目標を掲げるべきだと主張する。政府の目標が未上場ユニコーンに限定されているのは非常に勿体ないことだ。上場か未上場かを問わず、ユニコーン企業を増やすという目標設定にすれば、上場スタートアップにも関心が向き、彼らへの支援が手厚くなるだろう。その結果、51社の上場企業が1000億円超の時価総額を達成した事実が示すように、日本のイノベーション加速に繋がるはずである。
さらに、優秀な人材が上場スタートアップに集まることも不可欠である。未上場に不安を感じる人材にとって、上場企業は安定した基盤を持ちながら、ストックオプションなどを通じて大きなアップサイドを狙える「ローリスク・ミドル/ハイリターン」の魅力的なキャリアパスを提供できる。政府、企業、そして個人の力が一体となって、成長できる上場スタートアップを後押しすることで、日本の未来はより明るいものとなるだろう。例えば、「上場スタートアップランキング」を設けるなどして、成長企業を可視化し、優秀な人材を引き付けることも有効な手段である。