
成人8割が歯周病/全身の病気招く/糖尿病、心筋梗塞、認知症/歯科医おすすめの歯磨き粉・フロス・電動歯ブラシ
日本人の8割が歯周病!放置が招く全身疾患の恐怖と新常識
日本人の成人の約8割が歯周病に罹患しているという衝撃的な事実を知っているか?歯周病は、口の中だけの問題ではない。全身の健康に深く関わる「サイレントディジーズ(静かなる病)」として、糖尿病、アルツハイマー型認知症、心筋梗塞、さらには妊婦の早産リスクまでも高めることが近年明らかになってきた。あなたは正しい知識とケアで、大切な歯と全身の健康を守れるか?
今回の記事では、日本を歯科先進国へというミッションを掲げる歯科医師が、歯周病が引き起こす全身の恐怖や、その予防に不可欠な正しい歯磨きの「質」、さらに意外と知らない虫歯予防の落とし穴まで、新たな常識を提示する。あなたの歯磨きの常識が覆されるかもしれない。まずは自分の口の状態を確認するところから始めよう。

Q. なぜ、日本人は世界一の歯磨き好きといわれるのに、歯周病大国なのか?
日本の成人の約8割が歯周病に罹患している事実は衝撃的である。厚生労働省の調査によれば、日本人の97%が毎日歯磨きを行い、1日2回以上磨く人が79%、3回以上も3人に1人が実施しているという。欧米では1日2回が一般的であるため、日本人は世界的に見ても非常に歯磨きに熱心だといえる。にもかかわらず歯周病が多いのは、その歯磨きの「質」に問題があるからである。

歯磨きの本当の目的は食べカス除去ではなく、歯周病の原因となる「プラーク(細菌の塊)」を除去することにある。歯周病菌は酸素を嫌う「嫌気性細菌」であるため、歯と歯茎の境目や歯と歯の間など、空気に触れにくい場所に潜伏する。多くの人が表面だけを磨いており、最も除去すべきこれらの部位のプラークを適切に除去できていない。ここが、日本人が歯磨き熱心であるにもかかわらず歯周病が多い理由だ。
Q. 歯周病はなぜ「静かなる病」と呼ばれ、気づかないうちに全身に悪影響を及ぼすのか?
歯周病は、歯を支える骨や歯肉が破壊されていく病気であり、初期段階ではほとんど症状が出ないことから「サイレントディジーズ(静かなる病)」と呼ばれる。痛みを感じないため自覚しにくく、気づかないうちに病状が進行することが最大の特徴だ。

歯周病は大きく「歯肉炎」「軽度歯周炎」「重度歯周炎」と進行する。歯肉炎の段階では、歯肉が赤く腫れ、歯磨き時に出血する。この時点であれば適切なブラッシングや歯科医院でのクリーニングで治癒可能だ。しかし、軽度歯周炎に移行すると、歯を支える骨の吸収が始まる。自覚症状は乏しいことが多いが、この段階で失われた骨は元に戻らず、現状維持が治療目標となる。
さらに進行して重度歯周炎となると、歯肉が大きく下がり歯と歯の隙間が目立つようになる。歯肉からの膿や出血、ひどい口臭を伴い、骨の吸収が顕著になるため、歯がぐらつき最終的には抜歯せざるを得なくなる。自覚症状が少ないからこそ、定期的な歯科検診と、歯磨き時のわずかな出血などのサインを見逃さない注意が重要だ。
Q. 歯周病菌が血液を通じて全身を駆け巡るメカニズムとは何か?
歯周病が全身に影響を及ぼすメカニズムは主に二つある。一つ目は、歯周病菌が炎症によって損傷した歯肉の血管から体内へ侵入し、血流に乗って全身を巡ること。二つ目は、歯周病の慢性的な炎症部位で、人体を守るための免疫応答により「炎症性物質」が作られ続けることだ。この炎症性物質が血液を通じて全身に運ばれ、各臓器に悪影響を及ぼす。
口の中の全ての歯周ポケットの炎症部分を合計すると、「手のひらサイズ」にもなることがある。これほどの炎症がもし胃や腸といった臓器に生じた場合、それは命にかかわるレベルの大きさである。風邪などの短期的な炎症であれば炎症性物質も短期間で排出されるが、歯周病は気づかないうちに慢性的に炎症が続くため、炎症性物質が常に体内に放出され、全身の健康を脅かす結果となる。
Q. 歯周病が関与する全身疾患にはどのようなものがあるのか?
歯周病は実に多様な全身疾患に関与していることが分かっている。
糖尿病: 歯周病の炎症性物質はインスリンの働きを阻害し、糖尿病を悪化させる。逆に、糖尿病は体の免疫力を低下させ歯周病を進行させるため、両者は「負のスパイラル」の関係にある。歯周病治療によって血糖値が改善する事例も報告されており、日本糖尿病学会のガイドラインにも明記されている。
動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞: 歯周病菌や炎症性物質が血管にダメージを与え、動脈硬化を促進し、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高める。
アルツハイマー型認知症: 近年注目されているのは、認知症の約6割を占めるアルツハイマー型認知症への関与だ。恐ろしいことに、患者の脳から歯周病菌が検出されることがあり、歯周病菌が血液脳関門を突破して脳に侵入し、認知症の原因物質の生成を促進すると考えられている。
早産・低体重児出産: 妊娠中の女性が歯周病に罹患すると、早産や低体重児出産のリスクが、飲酒や高齢出産よりも高い「7倍」に跳ね上がるというデータがある。女性は女性ホルモンを好む歯周病菌が存在するため、男性よりも歯周病になりやすい。特に妊娠中はホルモンバランスの変化やつわりによるケア不足でリスクが高まるため、胎児の健康のためにも口腔ケアは極めて重要だ。
Q. 歯ブラシだけでは不十分?プロが実践する最強のセルフケア術とは?
歯周病予防のための歯磨きは「回数よりも質」が重要である。歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に45度の角度で当て、歯茎をマッサージするように小刻みに動かす「スクラビング法」が推奨される。ゴシゴシ磨くのではなく、歯周病菌が潜むピンポイントを狙って丁寧に磨くことが鍵だ。しかし、これだけではプラークの約6割しか除去できないという事実を知っているか?

残りの4割を除去するためには、歯間清掃器具の併用が必須だ。フロスや歯間ブラシを組み合わせることで、プラーク除去率は9割以上に高まる。フロスや歯間ブラシを使用する際は、歯と歯の間の汚れを取るだけでなく、歯茎の溝の奥深くまで挿入し、隣り合う歯の側面をそれぞれ磨く意識を持つことが重要だ。
歯ブラシを選ぶ際は、ヘッドの小さいもの、具体的には日本歯科医師会が推奨する3列のコンパクトヘッドタイプが良い。これは奥歯まで届きやすく、小回りが利くため、より細部まで磨きやすい。電動歯ブラシも高性能なものが多く出回っており、歯磨きが苦手な人にはおすすめだが、手磨き・電動を問わず、歯間清掃は別途必須であることを忘れてはならない。
Q. 虫歯予防における「フッ素」の真実と、歯磨き粉・液体の適切な使い方とは?
虫歯予防においては、砂糖の「量」よりも「頻度」と「時間」が大きく影響する。同じ量の砂糖を摂取するにしても、一気に食べるよりもダラダラと長時間食べる方が、口内が常に酸性に傾き、歯が溶かされやすくなるため虫歯リスクが高まる。特に、チョコレートやキャラメルのように歯に粘着しやすい食品は、よりリスクが高い。清涼飲料水のように砂糖を多く含み酸性度の高い飲み物も、ダラダラ飲み続けることは虫歯の原因となる。
フッ素は虫歯予防に非常に効果的だ。現在ではフッ素を子供に与えることを避けるべきという考え方は主流ではない。高濃度のフッ素配合歯磨き粉の使用が推奨されており、その効果を最大限に引き出すには、歯磨き後のゆすぎ方に工夫が必要である。大量の水でしっかりゆすいでしまうと、フッ素成分が流出し、その効果が薄れてしまう。歯磨き粉を使用した後は、少量の水で1〜2回軽くゆすぐ程度に留め、フッ素を口内に留めることが重要である。これは子供だけでなく大人にも当てはまることだ。
また、ドラッグストアで見かける液体製品には「液体ハミガキ」と「洗口液(マウスウォッシュ)」の2種類がある。「液体ハミガキ」は口に含んでからブラッシングを行うことで効果を発揮し、うがいだけでは不十分だ。一方で「洗口液」は歯磨き後の補助として使う。用途を理解し、裏面の表示をよく確認することが肝心である。歯磨き粉選びにおいては、30代以降であれば歯周病予防、10代以下の子どもであればフッ素高濃度配合の虫歯予防用を選ぶことが基本的な考え方である。
