
世界300万人が学ぶカリキュラム。A -Levelを推す理由
構成/岩辺みどり 撮影/林 直幸
英語圏の名門大学に進学するには、小中学時代からの準備が欠かせない。自らハーバード、スタンフォードで学んだ、起業家の松田氏が創る「海外進学の決定版ガイドブック」。第11話からのシーズン2は、実践編として具体的な解説を行う(5日連続で10話公開)。

日本での採用校が少ないA-Level
私が在籍するCrimson Global Academyにおいて採用しているカリキュラムは、第15話で話をしたAdvanced Placementと今回お話するInternational A-levelです。
数あるカリキュラムの中から、なぜInternational A-levelを選んだのかをお話ししましょう。
A-levelはイギリスの大半の高校で取り入れられており、このカリキュラムを世界120カ国以上、300万人が学んでいます。
しかし、日本国内でA-levelを取り入れているのはインターナショナルスクールで数校ぐらい。国内の学校で採用校はほとんどありません。
A-levelは高校レベルの資格であり、一般的に2年間かけて履修します。そのA-levelの準備として、中学3年生から高校1年生の2年間でGCSEを学びます。
GCSEとは、General Certificate of Secondary Educationの略であり、8-10科目程度を履修して幅広い分野に触れます。A-levelではその科目の中から、自分が深めていきたいものを3、4科目程度選び、深堀りしていきます。
A-levelへの流れ

探究の海へ深く潜る魅力
A-levelでは、IBの6科目受験や日本のセンター試験6、7科目受験のように多くの科目を選ぶ必要がないのが魅力です。これは子どもの向き不向きによりますが、自分が探究したい科目を大学初級レベルまで深く学べるのが大きな特徴です。
例えば、数学で言うと、日本における数3Cくらいのレベルまで学びます。米国の試験であるSATが数1Aレベルであることと比較すると、学びの深度がわかるでしょう。
「高校時代に数3Cをやるなんてきつい」と思われるかもしれませんが、自分が好きで数学を選び、そこに集中できるのであれば全く苦にならないのです。

さらに、IBのようにグループワークや課題がたくさんあるわけではないので、日々の時間にかなり余裕が生まれます。その時間で自分のやりたいと思えるパッション・プロジェクトに打ち込むことができるのです。
好きなことをやっていると、人間にはすごいエネルギーが湧きます。A-levelのように自分の好きな科目に特化し、好きなものに取り組むからこそ、成績もよくなります。効率が良いのです。

もう1つ見逃せないメリットは、科目を積み上げることができることです。
IBの場合、点数でしか同級生と差別化できません。しかし、A-levelの場合は科目履修数に上限がないため、6科目でも7科目でも積み上げていくことができるのです。
一般的には3、4科目を選択しますが、Crimson Educationでは平均5、6科目取ることを目指しています。科目数が多く選ぶことが、圧倒的な差別化になるのです。
受験も年に3回もチャンスがあります。自分で「うまくいかなかったな」と思ったら再チャレンジすればいいのです。
主体性がないと失敗を招くことも
もちろんA-levelのデメリットもあります。それは、主体的に考えられない人には向かないということです。
ここまでの話で気づいている人も多いでしょうが、脈絡なく科目を選んでいると取り返しがつかなくなることもあります。
どんなキャリアを歩みたいのか、何を大学で学びたいのか、大学で何を専攻したいのか、そこまで戦略的に考えていない人には、危険なのです。
「ただ得意」という理由だけで科目を選んだものの、その科目が自分の出願したい学部の必須科目ではないこともあります。

もう一つ、ジェネラリストにA-levelは向かないかもしれません。
とはいえ、そもそもこれからの時代には、ジェネラリストよりもスペシャリストが求められるはずですので、スペシャリスト向きなA-levelの魅力は色褪せません。
もちろん、ジェネラリストが不要だと言いたいわけではありません。最終的にジェネラリストを目指すのもいいことだと思います。
しかし、中高でジェネラリスト的な環境で過ごすと、何か突出した情熱を育む学生生活が送れなくなるおそれもあります。中高時代は、好きなものや得意なものへと情熱を傾け、自己効力感や自信を育む時期にしたほうがいい、というのが私の考えです。

日本ではIBが積極的に導入されているとお話しましたが、「ジェネラリストの時代ではなくなってきた」と気づいた人たちの間では、A-levelという選択肢が広がりつつあります。
実際、新興のオンライン、インターナショナルスクールはA-levelを導入するところが増えてきました。2022年、2023年にオープンするボーディングスクール、ハロー校やラグビー校も同様にA-levelを採用しています。
A-levelもトップ大学に進学したいのであれば70%以上の成績を取らなくてはいけませんから、IB同様に優秀な先生が必要です。各学校にとっては、質の高い先生が採用できるか否かがとても重要です。
世界中から優秀な先生を集めてきているCrimson Global Academyに期待いただいているのもその部分ですし、みなさんがA-levelの学校を選ぶ際にもその点はしっかり見てください。
戦略と差別化が明暗を分ける
ここまで海外大学進学のためのカリキュラムを詳しくお話してきました。
私がなぜ細かいカリキュラムの話をするかと言うと、海外大学に出願するにはやはり緻密な戦略が必要だからです。
1つ1つの学びの環境、課外活動に何をするのか、ゴールを達成するために一番の近道は何か、どういうカリキュラムが自分に合っているのか。それらをきちんと自分で考えられる生徒が最後は勝ちます。
「IBがいいと周りが言うから」とか「松田さんがA-levelがいいと言うから」といった曖昧な理由で選ぶのではなく、当人が目指している方向や特徴を把握した上で、中学・高校の進路を選択しなければいけません。親として子どもをきちんと観察していれば、どの道が最適かきっとわかってくるはずです。
今回でカリキュラムの話は終わりですが、最後のテーマとしてじっくりお話したいのは、これまで何度も触れてきた課外活動です。
課外活動とはどういうことなのか、課外活動に何を求めるべきなのか。次回からケーススタディを交えてお話していきます。