
米国発カリキュラム「AP」の強みと弱み
構成/岩辺みどり 撮影/林 直幸
英語圏の名門大学に進学するには、小中学時代からの準備が欠かせない。自らハーバード、スタンフォードで学んだ、起業家の松田氏が創る「海外進学の決定版ガイドブック」。第11話からのシーズン2は、実践編として具体的な解説を行う(5日連続で10話公開)。

最適なカリキュラムを選ぶ3つのポイント
第14話では、「日本の高校を卒業しても、通常の新指導要領に則った日本のカリキュラムではイギリスの大学にそのまま入学できない」という話をしました。
国によっては日本の高校カリキュラムでも受験資格となる場合もありますが、各国の中等教育カリキュラムや大学入試に向けたカリキュラムには特徴があります。だからこそ、海外大学進学を決めているなら、早めに進学を希望する国のカリキュラムで勉強したほうがいいのです。
カリキュラムを選択するときの観点は3つあります。
1つ目は、カリキュラム内容です。
興味のある分野を幅広く学べるカリキュラムもあれば、ひとつのことを深く掘り下げるカリキュラムもあります。その子の学びのスタイルや得意に合わせたものを選ぶといいでしょう。
2つ目は、試験の形態です。
カリキュラムによって、試験の構成や試験方法は異なります。論述が多いものや選択の多いもの、一度の試験で決まるものや何度も受け直すことができるものなど様々です。学習スタイル、教師との関係性、生徒の試験に対する得意、不得意のスキルなどを考慮して決めるといいでしょう。
3つ目は、国際的評価です。
ある国で全体的に採用されているカリキュラムでも、一歩国を出たら全く通じないということもあります。実際、日本のカリキュラムは英国では通用しません。さらに、そして、認められていてもマイナーなカリキュラムだと評価に響きます。
入学審査オフィスでも重視されている、信頼できるカリキュラムを選びたいところです。
カリキュラムを選択する3つの視点

今回からは、国際的に受け入れられている「3つのカリキュラム」を具体的にお話しましょう。
日本人に向かい風が吹いている
SATというアメリカの大学入学適性試験は海外大学を目指す人であれば知っているでしょう。
SATにはSATの本試験と科目試験の二つのタイプの試験があります。 SATの本試験は数学と英語800点ずつ合計1600点満点で判断されます。トップ校にいきたい場合には1550点に近づけていく必要があります。
日本は数学教育が進んでいるとよく言われますが、実際に数IA、つまり高校1年生の数学レベルがクリアできれば数学は800満点近く取れると言われています。
しかし日本の生徒は英語で苦戦するので、TOEFLの100点を早い段階でクリアしてからSATの英語の学習に取り組む事が大切です。

日本からの受験生は自分が国際的な基準で学べる学力を持っていることを証明しないといけません。
そこで多くの受験生がSATの本試験とは別にSAT科目試験(各試験800点満点)で、上級数学、物理、化学、生物などを受け、これらの科目試験で750点以上とるようにしていたのです。日本のカリキュラムが国際カリキュラムでない分、SATで日本の出願者は戦ってきたのです。
しかし、この科目試験が2021年の6月に廃止になり、今まで日本人の武器だったものが奪われた状態になってしまいました。日本人に向かい風が吹いているのです。
実はSAT本試験で1500点以上取る人は、毎年16万人!そうなるとノンネイティブで差別化していくのは非常に難しいのです。
SAT+APでより確かな知識をアピール
そこで、このSATを運用しているカレッジボードが提供しているのがAdvanced Placement(AP)です。アメリカ大学初級レベルの科目を高校生のうちから履修できるのです。
学校の勉強にプラスアルファでいわゆる先取り教育をし、それを高校のうちに積み上げていきます。年に1回そのAPで受講している科目の試験もあり、そこでハイスコアをとれば大学の入学審査において加点評価されます。
APは、SATで知られているアメリカの非営利団体「College Board」によって1955年から運営されています。APプログラムは、国際バカロレア(IB=International Baccalaureate)同様に、高校生を対象とした高度な教育プログラムとして、世界的に認知されています。
APカリキュラムのメリット

APコースの履修者は、5月初旬にAPテストを受け、5〜1の5段階(5が最高)で評価されます。受けられる科目数の制限がないので、多く受けても構いません。
APコースとは、高校在学中に大学の初級レベルを学べるプログラムですので、試験の結果次第では大学のクレジット(単位)として認定され、卒業単位に組み込めるようになります。
成績が悪いと欧州への進学は困難
一方デメリットは、APカリキュラムを履修している生徒が科目数の制限がないがために科目を取りすぎてしまったり、苦手科目も取ってしまったりして、かえって成績を落としてしまう可能性があることです(主たるカリキュラムはAP以外を選択していて、APを追加科目として受験している場合は大学入試の時に低いスコアを報告しないという選択肢がありますが、APカリキュラムを履修している場合は成績に含まれるので成績に影響してしまいます)。
また、科目試験の中でも音楽では実技、美術では作品のポートフォリオ作成なども必要となり、机上の学びだけでは完結しないこともあります。
また、イギリスやオランダなどヨーロッパの大学ではすでに大学レベルの一般教養を学んでいることが求められるので、APのコースで低い評価の場合には大学入学要件として足りないこともあります。その場合には、APに加えて高校卒業証明書やSATの成績が必要になります。
APカリキュラムのデメリット

現在日本でAPが取れるところは希少で、アメリカ系のインターナショナルスクールくらいです。しかし、アメリカの大学に出願を目指している場合には、APを積み上げていくことで他の出願者と差別化ができます。
Crimson Educationが運営しているオンラインのインターナショナルスクールCrimson Global AcademyでもこのAPが取得できるコースを提供しています。

海外進学を考えたとき、ただ大学受験資格を得るために試験を受けるというのは、難しい。これまでのSATの科目試験を積み上げたように、APをプラスアルファで積み上げていくことが非常に大事になってきます。海外から受験するのであればなおさらです。
日本の学生たちが戦うのは、日本人の他の受験者ではなく、アジアの他の国々から訪れる受験者です。日本より英語教育がもっと進んでいる国でもあります。 その中でいかに差別化していくかというのは早い段階で考えておきたいですね。
今回はアメリカのカリキュラムであるAPについてお話しましたが、次回は国際的なカリキュラムであるIB(国際バカロレア)についてお話しましょう。