
バランス型の国際バカロレア。その強みと弱み
構成/岩辺みどり 撮影/林 直幸
英語圏の名門大学に進学するには、小中学時代からの準備が欠かせない。自らハーバード、スタンフォードで学んだ、起業家の松田氏が創る「海外進学の決定版ガイドブック」。第11話からのシーズン2は、実践編として具体的な解説を行う(5日連続で10話公開)。

世界平和をつくるためのIB教育
第15話で触れたAPはアメリカのカリキュラムですが、国に限定しない国際的なカリキュラムではA-levelと国際バカロレア(IB)がメジャーです。今回はそのIBについて解説していきます。
IBは、文科省が推進してきたカリキュラムであり、近年、日本の一条校で導入する学校も増えています。
1968年に総合的な教育プログラムとして作られたIBは、もともと国際機関で働く職員の子弟のために作られました。
本部をスイスのジュネーブに置く国際バカロレア機構が提供しており、世界の複雑さを理解し、対処できる生徒を育成することを目的としています。未来に対して責任ある行動を取るための態度とスキルを身につけさせて、世界の平和を作り出す人材となるための教育なのです。
IBプログラム

IBは幼稚園から高校生までの4段階にプログラムに分かれています。
その中でも高校レベルは2タイプに分かれています。2年間で職業訓練を中心としたCP(Career-related Programme)と大学進学を前提としたDP(Diploma Programme)です。CPを日本で導入している学校はほとんどないので、今回はDPをメインでお話します。
幅広い分野に取り組む生涯学習者育成
DPカリキュラムは、6つのグループがあり、グループごとに、語学、サイエンス、数学、芸術など分野が決まっています。その6グループから1科目ずつ選択し、全部で6科目、各7点満点の合計42点で採点されます。
それにエッセイと自分の知の探究と課外活動の3点が加わって、合計45点満点です。
課外活動では、「社会やコミュニティにいかに関わって行動に起こせるか」が重点的に評価されます。自分で活動を起こさなければならないのです。知識的な学びだけでなく、きちんと実践に落とし込むというのがIBの魅力でもあります。
IBカリキュラムのメリット

IBの大きな目的の1つは「生涯の学習者を育てること」であり、探究、論理的思考、リサーチ、社会への貢献に力を入れています。そのため自分から積極的に学ぶ姿勢、主体的な学びを手に入れる力は大きく育ちやすいでしょう。
6教科&課外活動で負担も重い
一方で、IBのデメリットもあります。
基本的に6教科を満遍なくカバーする必要があるため、そうしたスタイルに向かない生徒もいるはずです。
例えば、STEM系の学部や医学部に進学したいと決めている人にとって、「理系は1つしか選べないのに歴史の科目も取る必要があり、取る以上はハイスコアを目指さないといけない」というのは辛いでしょう。柔軟なジェネラリストを育成するためのカリキュラムとしてはいいかもしれませんが、負担は重い。

また、宿題も非常に多く、グループワークで取り組むものが中心です。コミュニケーション力や人と協働していく力は身につきます。
これだけの科目と課外活動をこなしながら、グループワークを行うので、IB生はだいたい「忙しい、忙しい」と言います。
これだけの量をこなすのですから、タイムマネジメントやプロジェクトマネジメント力も自然と高まりますが、ここまで忙しいと海外進学の差別化ポイントとなる課外活動に十分な時間を確保することができず、苦労している受験生が多いのが実態です。
ちなみに、ハーバードやオックスフォード、ケンブリッジを目指す場合、45点満点中で42点以上が必要になります。そのためには、不得意科目であってもハイスコアの7点満点を取らないといけません。
これは、多くの科目を受験して全体的に高い点数の取得が求められる日本の国立大学受験と似ています。いわば、東大を目指すようなものです。日本政府がIBを積極的に取り入れようとしている背景には、日本の教育制度と似たところがあるからかもしれません。
先生の力量が物を言う
さらにIBカリキュラムを選ぶのならば、先生の質もチェックが必要です。
グループワークや議論が非常に重要な要素を占めるため、それをファシリテーションできる先生の力量が物を言います。今、日本はIB校を増やすことに力を入れていますが、そのためには、質の高い先生を世界のIB校と取り合って確保しなくてはいけません。
現在、世界のIB校ランキングを見てもトップ100 校のうちに日本はたった1校しかありません。
日本における既存の教育よりも難易度が断然高いIBカリキュラムを使用していくには、IBの質の高いIB授業を行える広い知識と経験を持った先生が欠かせません。
さらに英語で指導するとなれば世界中のIB校と先生の取り合いになります。日本という島国にどこまでそうした先生を魅了させて連れてこられるのかは、大きな課題になっていくでしょう。

また、IBのDPは2年間行うカリキュラムですが、最終的な点数が確定する試験は一度のみです。そういうところも日本の大学入試と似ています。もしその試験で躓いてしまったり、調子が悪かったりするときには、やり直しが効かないというリスクもあります。
国を問わない平和を作る人を育てるというIBの教育はとても魅力的で、Crimson Global Academyも導入を検討しましたが、上記のデメリットや海外大学進学に最適ではないと判断しました。
そして今、我々が採用しているのがA-levelというカリキュラムです。それがどんなカリキュラムなのかは、次回ゆっくりお話します。