
英国大学はスカラー型。求めるのは「専門性」と「学問的知識」
構成/岩辺みどり 撮影/林 直幸
英語圏の名門大学に進学するには、小中学時代からの準備が欠かせない。自らハーバード、スタンフォードで学んだ、起業家の松田氏が創る「海外進学の決定版ガイドブック」。第11話からのシーズン2は、実践編として具体的な解説を行う(5日連続で10話公開)。

専門性を追求するスカラー型のイギリス大学
今回は、イギリスの大学について見ていきましょう。
結論から言うと、イギリスの大学は学者肌、スカラータイプの人間が求められています。
イギリスの大学は3年間(スコットランドは4年間)しかないので、1年目からかなり専門的に学びます。途中で学部を変えることはほぼできません。そういう意味では日本の大学に似ています。
しかし、日本の大学に入学するよりも、主体的にその研究や分野に取り組んできた経験を持ち、その分野を学びたいという強い意志とコミットメントがないと合格しづらいと言えます。
イギリスの入学審査基準

イギリスの大学は、自分の学びたいものを探究する場所です。与えられた環境の中でしっかり学ぶことができる人材が求められているため、入学審査でもアカデミクスに関する評価の比重が高くなっています。
入試審査基準は、IBやA-levelの試験をはじめとするアカデミクスが75%、課外活動が15%、入学願書やそれに伴うエッセイ、面接が10%の割合です。前回のアメリカと比べると、いかにイギリスが学問的知識や専門性などを準備してきているかがよくわかります。
イギリスでは、大学で学ぶことを見据えて、中等教育の早い段階で学ぶ教科を3、4教科程度に絞り込みます(詳しくは第17話で解説します)。
大学で学びたい内容に関連した科目を選択していなければ、受験は非常に難しくなってしまいます。ちなみに、オックスフォード大学やケンブリッジ大学になると必ず面接が課され、教授とのディスカッション面接が行われます。
YouTubeでケンブリッジ大学の事例を見れますが、教授とエンジニアリング理論のディスカッションを行っています。

イギリスの大学の入学審査はアカデミクスを重視していますが、学校の勉強を頑張りさえすればいいということではありません。自分の知的好奇心に基づいて深い知識を探求する必要があります。日頃から書籍や論文に目を通し、研究活動を行うことが大切です。
残念なことに、日本の学習指導要領そのものがイギリスに受験資格として認定されていないので、日本の高校を卒業してもイギリスの大学を受験することができません。
国際バカロレアやA-Levelなどを取得していればいいのですが、日本の学習指導要領に則った高校を卒業しているだけの場合、3年制のイギリスの大学に入る前に、1年間の準備コースであるファウンデーションコース(基礎コース)に通うことになります。
だからこそ、もし子どもが研究者肌だからイギリスで研究に特化して学びたい、どうしてもオックスフォード大学で学びたい、というのであれば、日本の高校に進学すべきかを早めに考えておく必要があります。希望する方向が見えているのに、その土俵にも乗れないのは一番つらいですから。
なぜその学問なのか
次に、イギリスの大学入学審査のプロセスを見ていきましょう。こちらもアメリカの大学との違いは明白で「どんな学生を求めているのか」もよくわかります。
イギリスはUCASという組織が大学入学のアプリケーションを一手に引き受けていますが、そのUCASの審査内容にフォーカスしてみましょう。
イギリスの大学入学審査プロセス

まず、学校の成績やIELTS等の学力試験は必須です。
次にパーソナルステートメントと呼ばれるエッセイが求められます。UCASを通して5校の大学に一度にアプライすることができるのですが、これは受験する5校全てに対して1つしか提出できないエッセイです。そのため、日本の受験のように「文系だからA校では法学部、B校では経済学部……」と考えていると一貫しないエッセイになってしまいます。
なぜその大学で学びたいのか、なぜその学問を学びたいのか、その学びを生かしてどんな将来を考えているのか、を書かなくてはいけません。
さらに、指導を受けた先生の推薦書も必要になります。アメリカが2人分なのに対して、イギリスは1人分で大丈夫です。そのほかに、学校別の面接、A-levelなどの大学入学試験にあたる一斉テストの結果が求められます。
基本的には、願書提出や面接が先に進み、「条件付き合格」をもらった後に大学入学試験となります。そのときに「Aをいくつ以上取ること」などの条件がつくからです。与えられた条件をクリアすれば合格となりますが、基準に満たなければ合格が取り消されることになります。
優秀な人材であれば「条件無しでの合格」が出されることもあります。
自分に合った学びの環境を見つける
オールラウンダーを育て、様々なことを試してから自分の興味を掘り下げるアメリカの大学。それに対して、大学に入るまでに自らが学びたい領域を見極め、自分の専門を大学で追究していくイギリスの大学。進路選択をしていく上で、各国の入学審査基準の違いをしっかりと把握しておくべきです。

僕が、海外大進学を勧めるのは、子どもの可能性を広げることが重要だと信じているからです。だからこそ、子どもが希望して気づいたときには「資格がない。無理だ」という状態は最大限避けたい。可能性を狭めてしまうことになりますから。
そのためにも、早めに自分と向き合って、何を学びたいか、どんな環境に行きたいか、そのためにはどんな高校でどのカリキュラムを学ぶのかということを考えておく必要があるのです。
ここまで英米の大学の違いを見てきましたが、大学を選ぶ上でも「中高でどのような学びをしてきたのか」が大きな影響を与えます。次回は、大学入試に向けた中等教育カリキュラムの違いについてお話します。