
米国大学入試は、なぜ評価の3割が課外活動なのか?
構成/岩辺みどり 撮影/林 直幸
英語圏の名門大学に進学するには、小中学時代からの準備が欠かせない。自らハーバード、スタンフォードで学んだ、起業家の松田氏が創る「海外進学の決定版ガイドブック」。第11話からのシーズン2は、実践編として具体的な解説を行う(5日連続で10話公開)。

アイビーリーグだけ受ける日本人への違和感
海外の大学進学希望者の中には、ハーバード、スタンフォード、アイビーリーグしか受験しない日本人がたくさんいます。
しかし、スタンフォードとハーバードが同じ受験リストに入っている段階で、「この人はまだ何がしたいのか、迷いがあるな」と分かってしまいます。ハーバードとスタンフォードは校風が大きく異なりますし、研究の性質も異なります。

日本であればまずは理系・文系に分かれ、文系だったら早稲田大学の政治経済学部、文学部、法学部、商学部など受けて、さらに慶応大学の法学部、経済学部、文学部、商学部を受ける……といったような受験の仕方をする人が多いでしょう。
これでは、その人が何をやりたいのかは伝わってきません。法律に興味のない人が法学部に合格してしまって、4年間法学を学ぶモチベーションもないまま卒業ということもあります。
海外大学進学で大事なのは、自分のベスト・フィット・スクールを探すことです。有名かどうか、ランキングが高いかどうかではなく、自分がやりたいことや学びたいことをしっかりと学べるのかということです。
何度も繰り返しているように、欧米の大学入試で見られるのはその人ならではのオリジナルな目的意識なのです。自分にしか作れないアプリケーションを仕上げ、徹底した差別化を図る事が一丁目一番地の戦略になります。
オールラウンダーを育てるアメリカの大学
さて学校を選ぶ際に主なターゲットとなるアメリカとイギリスの大学の違いから見ていきましょう。
まずはアメリカの大学です。
ざっくりと捉えると、アメリカの大学はバランス型です。入学後に様々な授業を取りながら自分のメジャー(主専攻)やマイナーを決めていきます。
学生の勉強量は日本と比較にならないくらい多い。だからこそ、入学審査の段階では、しっかりと学ぶ力があるのかを確認されます。同時に、アメリカの大学は課外活動も盛んで、学んだ内容を実践に移す機会に恵まれています。
主体性を発揮してコミュニティリソースを生かしきる姿勢も大事です。だからこそ、学ぶ力のみならず、 学外活動の行動量やリーダーシップを入学審査で確認します。
入学後に学部を変えることができるのも、アメリカの大学の大きな特徴です。
アメリカでは、メジャーもしくはマイナー(副専攻)を在学中に変える回数は平均2.5回。4年間の間に学びたいテーマを変えるのが当たり前だということです。そのぐらいアメリカでは「学んでみないとわからないよね」というスタンスが浸透しているのです。
アメリカ大学の入学審査基準

アメリカの入学審査基準は、SATやACT、APなどといった大学受験資格試験の成績や学校の成績・評定が40%、課外活動が30%、入学願書やそれに伴うエッセイ、面接などで30%の割合で評価されます。
先生と卒業生の評価も判断基準
受験の選考プロセスを見ても、アメリカがいかに課外活動を重視しているのかが分かります。
アプリケーションに必要なのは、試験や学校の成績だけではありません。それ以外に、課外活動やリーダーシップを見るセクション、これまで指導を受けてきた先生などからの推薦書が2-3人分、エッセイ(学校によっては複数のエッセイ)、卒業生との面接があります。
つまり、自分の興味や挑戦したいことを様々な角度から何度も書いたり話したりすることを通して、審査されるのです。
アメリカの大学受験プロセス

もし「弁護士になりたくて法学部に入りたい」と言っても、課外活動にその動機付けとなるものがなければ、入学審査官は「どういうこと?」と違和感を抱くでしょう。なぜ法律がやりたいのか、それまで仮説検証している足跡を課外活動から確認したいからです。
アメリカの出願用紙には、自らが取り組んできた課外活動を10個も書くことができます。何にどういう順番でどのくらい時間を注いできているのか。それが見られるわけです。
入学審査官は課外活動の軌跡を知ることで、「この子の興味はここからスタートして、それをこのように探究していって、こんな発見があったことで紆余曲折して、たどり着いたのだな」という探究ジャーニーを見出すことができます。
そこに第9話で課外活動についてお話したように、探究から仮説、検証行動へのプロセスと、そのインパクトの軌跡を見る。その中で受賞経験などがあればいいですが、なくてもかまいません。
それよりも、どれだけ活動に熱中し、壁を突破してきたのかということが大事なのです。
ピッチ力、リサーチ力は高校時代から
アメリカの大学といえば、ハーバード、スタンフォードと思い浮かぶかもしれませんが、各大学で傾向も全く異なります。
例えば経済学では、スタンフォードやハーバード以外にもシカゴ大学、ペンシルバニア大学ウォートン・スクール、M.I.T.なども有名です。これらの学校間だけでも、校風、得られる学習機会、アクセスできる研究、アプローチ方法など、それぞれに特徴があります。

経済学部ランキングを参照にするのもいいと思いますが、「経済学のどんな理論を学びたいか」「経済学の力を使ってどんなビジネスを回したいのか」という踏み込んだ動機があると、より自分にフィットした大学を選びやすくなるでしょう。
各大学の特徴を知りたければ、Linked InやFacebookなど在校生や卒業生にアクセスできる方法がいくらでもあるので、連絡をするのも可能です。
15分でも20分でも時間をもらって、「僕はこういう研究がしたくて、こんなキャリアを歩みたいのだけれども、シカゴ大学では可能でしょうか?」と相談してみてはどうでしょうか。

日本人には驚かれる方法かもしれませんが、そこまでする情熱のある高校生だったら相手も時間を割いて話を聞いてあげたいと思うでしょうし、そこから次のステップにつながる可能性もあります。
大人社会で僕たちが必要としているネットワーキングの力やピッチする力、リサーチ能力は、実は高校生のうちから培われていますし、そういう子こそベスト・フィット・スクールを見つけられるでしょう。
今回はアメリカの大学入試について語りましたが、次回はイギリスの大学入試にスポットライトを当てます。大学入試制度の違いから、米英の大学が求める人材像の違いがくっきりと浮かび上がってくるはずです。