
「辞めさせない」上司の心得
若手人材の離職を防ぐ最も効果的な方法とは?
人材の採用と定着は現代企業の重要課題だ。特に若手人材の離職率の高さに頭を悩ませている企業は少なくない。なぜ人は会社を辞めるのか、そして優秀な人材の流出をどう防ぐべきか。経営心理士の藤田耕司氏に若手離職の原因と対策について聞いた。

Q. 企業が若手人材(ホープ)の離職を防ぐには何が重要ですか?
成長の機会を提供することが重要だが、会社が考える成長と本人が求める成長にはズレがあることが多い。例えば、ある20代の女性は経理のスキルを身につけたいと入社したが、営業部門に配属された。人事に経理部への異動を希望したところ、まずは営業で成果を出すよう言われた。
彼女は努力して全社ナンバーワンの営業成績を残したが、再度経理部への異動を希望した際に「君は営業の才能がある」と却下された。彼女は「話が違う」と感じて退職した。会社は成長の機会を提供したつもりでも、本人が望む成長とは異なっていたのだ。
Q. 人事配属時のコミュニケーション不足は離職につながりますか?
コミュニケーション不足は大きな問題だ。例えば、会社側が「この人材は将来の役員候補」と考え、総合的な経験を積ませるために製造部門に配属したとしても、その意図を本人に伝えなければ意味がない。

本人に「あなたはこういう能力があり、こういう人材になってほしいから、今はこの部署で経験を積んでほしい」と一言説明するだけで、受け止め方は大きく変わる。意図を知らされないまま希望と違う部署に配属されれば「この会社は自分の希望を尊重してくれない」と誤解してしまう。
Q. 中途採用に頼る戦略は有効ですか?
若手の離職率が高いため、スキルのある中途人材を採用する戦略を取る企業も多い。しかし、優秀な中途人材はどの企業も欲しがるので、人件費の高騰を招き、利益を圧迫する結果になりがちだ。
また、一人の社員が退職すると、新たな採用コストや教育コストなど、合計で150〜200万円程度のコストが発生する。このため、既存社員の離職防止も重要な経営課題となる。
Q. 会社を変えるには何から始めるべきですか?
「仕事の定義」から見直すべきだ。多くの社員は「私の仕事は営業です」「私の仕事は経理です」と答えるが、「会社の成長に貢献することは自分の仕事か」と問われると戸惑う。

組織の成長のためには、社員一人ひとりが「部下の離職を防ぐこと」「働きやすい職場環境を作ること」も自分の仕事だと認識する必要がある。大規模な組織では、会社全体ではなく「10人のチームの成長」といった身近な単位で考えると、自分ごと化しやすい。
Q. 人事評価制度を改善するにはどうすればいいですか?
多くの企業の人事評価制度は機能していない。評価項目が多すぎる(40〜50項目)ため、評価する側も適当につけがちで、評価される側も何を言われたか覚えていない。

理想的な評価項目数は5個以内だ。人は最大でも5つくらいしか意識して行動できない。また、評価項目は会社の理念とリンクさせるべきだ。例えば「人に優しい会社」という理念なら「部下の話をちゃんと聞いているか」などの項目を入れ、それを実践している人を高く評価する。
Q. 部下が退職する際、上司はどう対応すべきですか?
部下の退職を「我がこと」として捉えることが大事だ。「あの子は給料が低いからやめた」などと自分の責任ではないと言い逃れせずに振り返る姿勢が必要だ。
退職する部下に「辞める本当の理由を教えてほしい。自分に原因があるなら直していきたい」と率直に尋ねてみるといい。また、退職後も良好な関係を維持することが重要だ。退職した元社員が戻ってくる可能性もあるし、仕事やお客さんを紹介してくれることもある。
何より気をつけるべきは「どうせすぐやめるだろう」という諦めモードに入らないこと。そうなると新しい部下の教育も適当になり、本当に辞めたくなる悪循環に陥ってしまう。
