日本再興ラストチャンス
人材を流動化せよ
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2022年10月11日

【collaborated with 経済同友会】 日本再興ラストチャンス。日本が失われた30年を経て、これからどのように経済を再興するべきなのか。経営者と有識者と対談を通じて、日本再興に向けた具体的なアクションプランを発信していく。 【Sponsored】 <目次> 00:00 ダイジェスト 0...
「日本再興」最後の機会、あるいは緩やかな衰退か?
失われた30年を経て、日本経済は再興のラストチャンスに直面する。しかし、解決策が見出せず緩やかに衰退する、と悲観する見方も少なくない。経済同友会代表幹事の櫻田謙悟氏とイェール大学助教の成田悠介氏は、日本経済の未来像と課題を巡り議論した。そこには、変化を恐れ、本質的な改革を避けてきた日本社会の根深い問題が見え隠れする。変革が叫ばれる中、何が足かせとなり、どこを目指すべきなのか。本稿では、櫻田氏提唱の「生活者共創社会」を軸に、両氏の主張から日本の現状と必要な行動の本質に迫る。果たして日本は、世界から「いなくてはならない国」へと再浮上できるか。あるいは、衰退の一途を辿るのか。
Q. 「日本最高ラストチャンス」はどのような意味を持つのか?
経済同友会の櫻田謙悟氏は、「日本最高ラストチャンス」を文字通りの最後の好機だと強調する。戦後復興時の「古き衣を捨てよ」という精神と同様、デジタル化の遅れや相対的貧困化が進んだ今こそ、過去のレジームを捨てる覚悟が必要だと指摘する。この機を逃せば、日本は猛スピードで衰退すると警鐘を鳴らしつつ、まだチャンスはあると前向きな姿勢も示す。一方で経済学者の成田悠介氏は悲観的な見解を持つ。日本の再興計画は20年近く議論されても未解決であり、社会や経済の問題には数学のように解が保証されているとは限らないという。日本は緩やかに衰弱していく運命にあるのかもしれないとすら感じる、と述べる。
Q. 日本が停滞した根本的な理由とは何か?
日本が停滞した最大の理由は、解決策が「分からないから」ではなく、「実行してこなかったから」だと櫻田氏は語る。多くの問題の解決策は過去に提示されてきたものの、変化に伴う痛みを避け、現状維持を選んできた国民性ゆえに、誰も本気で変えようとしなかったのが最大の要因である。特に、戦後に成功した三つの社会システムが、今では日本の活力と創造性を阻害する足かせとなっている。第一は、メンバーシップ型の終身雇用。第二は、全国の大学が東京大学を模倣する画一的な教育制度。第三は、成功者を羨むだけで、自ら挑戦したりグローバルな視点を持ったりする意欲の喪失、すなわち「カニカゴ構造」だ。これらの古い構造の解体が、日本再生には不可欠だ。
Q. リモートワークが進まない本当の理由と、ジョブ型雇用の重要性は?
コロナ禍は柔軟な働き方の可能性を示したものの、日本社会はオフィスワークへの回帰傾向が強い。櫻田氏は、リモートワークが進まない背景に非効率な日本型雇用システムがあると指摘する。成田氏は、「何の価値を出しているか分からない」正社員、いわゆる「いらない人材」がリモートワークによって炙り出される事態を問題視する。企業はこうした人材を解雇できないため、非効率なオフィスワークを続け、曖昧な形で存在を容認する側面があるというのだ。この問題を解決するため、櫻田氏の会社ではジョブ型雇用への移行を進めている。職務内容と成果を明確に定義し、それに基づき評価・報酬を決定するジョブ型は、生産性を高め、能力に応じた対価を支払う。これにより役職名は意味をなさず、従来のヒエラルキーと給与体系が大きく変動する可能性がある。
Q. 日本経済再生の鍵となる「人材の流動化」とは何か?
日本経済再生の最大の課題であり、処方箋となるのが「人材の流動化」だと櫻田氏は語る。これは、個人が特定の会社に固執せず、転職や副業を通じて多様な経験を積むことを促す文化の醸成を指す。特に、安定志向の強いホワイトカラー中間層が、従来の雇用慣行にとらわれず積極的に移動することが、イノベーションと社会全体の活力を生む鍵となる。日本の保険業界は、この流動化が特に進まない典型例だ。海外では転職は日常だが、日本では「一度辞めたら戻れない」「裏切り者」といった文化的な意識が根強く残る。この精神的なバリアこそが、社会の新陳代謝を妨げ、成長を阻害する最大の要因の一つである。理由を問わず人材が流動し、一度離れた人も戻ってこられる柔軟な仕組みと文化の確立が必要だ。
Q. GDP偏重から脱却し、日本が目指すべき国家の姿とは?
櫻田氏は、日本がもはやGDPの順位に一喜一憂すべきではないと断言する。経済力は重要だが、それ以上に「クオリティ国家」としての日本の価値を追求すべきだと主張する。クオリティ国家とは、安全・安心、健康、持続可能性、包摂性など、GDP以外の複合的な価値で世界トップとなることを意味する。これらの要素を総合した「幸福度(ハピネス)」で世界一を目指すことが、日本に新たな競争力をもたらし、世界から人や投資を呼び込む。日本には既に観光立国としての魅力があるように、経済規模だけでは測れない「良さ」が多く存在する。GDPが多少低下しても、クオリティと幸福度を最上位目標に据えることで、これまでの経済中心の価値観から脱却し、豊かな社会を実現できる。この目標共有のため、多様な価値指標を可視化した「社会のダッシュボード」が必要だ。
Q. 日本が理想とする未来の社会像はどのようなものか?
GDP以外の「幸福度」を国家目標に据えた上で、日本が目指すべき未来の社会像は「デジタル武装した江戸時代」だと櫻田氏と成田氏は語る。江戸時代は、経済成長は限定的だったものの、200年以上にわたり社会が安定し、庶民は比較的幸せに暮らし、リスペクトされる隠居世代が存在した。サステナビリティやシェア経済の原型となる文化、葛飾北斎の芸術や関孝和の数学のような独自性も育まれた。このような江戸時代の社会が持っていた高い幸福度、サステナビリティ、そしてユニークな文化創造力に、現代の最先端デジタル技術を組み合わせることが、日本の未来を切り拓く可能性を秘める。既存の発想では日本の課題は解決せず、抜本的な価値観の転換が不可欠だと両氏は指摘する。
Q. 社会変革のために、リーダー層に求められることは何か?
政府提唱の「新しい資本主義」は、デジタルやグリーンといった個別施策はあるものの、それらを通じて「どのような社会を作りたいのか」という全体像が不明瞭だと指摘がある。このようなビジョンの欠如は、具体的な行動を促す上での障壁となる。真に社会変革を加速させるためには、明確なビジョンに加え、リーダー層自身の在り方が極めて重要だと成田氏は提言する。成田氏は、人生100年時代において、個人も組織も「引き際のデザイン」の重要性を強調する。社会に影響力のある経営者たちが自ら「美しい引き際」をデザインし、後進に道を譲る「かっこいい終わり方」を見せることは、最も強力なメッセージとなるだろう。これは停滞した日本社会に新陳代謝を促し、新たな才能やリーダーシップを登用する推進力となると考えられる。