9 questions
起業立国
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2022年2月26日

時代を切り拓くビジョナリーをゲストに招き、「9つの質問」でその実像と未来に向けたビジョンを解き明かす。インタビュアーは、PIVOT CEO 佐々木紀彦とPIVOT チーフ・グローバルエディター 竹下隆一郎。 <目次> 00:00 ダイジェスト 00:43 ウェルカムトーク/南場智子に聞く起業立国へ...
日本の起業文化を阻害する「大企業病」と「スモールIPO」の悪循環:南場智子が語る、次世代ヒーロー創造への道筋
DeNA会長、そして経団連副会長を務める南場智子氏が、日本の起業家精神と経済活性化について率直な見解を語る。日本経済の長期にわたる停滞の背景にある「悪循環」を解き明かし、その打開策を力強く提言している。
本記事では、大企業中心の経済構造、閉塞的な教育システム、そして起業家を取り巻く課題まで、広範なテーマに切り込みながら、日本が再び成長軌道に乗るためのビジョンを探る。
Q. 日本の起業エコシステムが抱える「悪循環」とは何か?
日本では、起業を志す人が絶対的に少ないのが現状だ。世界の国際調査では常に最下位レベルであり、これが日本の起業エコシステムの根深い「悪循環」の出発点となっている。
挑戦者が少ないため、当然ながら成功するスタートアップも限られる。さらに、リスクマネーの規模も米国とは桁違いに小さく、例えばエンジェルマネーは米国の50分の1程度である。この資金不足が、有望なスタートアップの成長を阻害する。
その結果、企業は「小さくまとまった」上場(スモールIPO)を選択しがちだ。これにより、世界で通用するような大企業が日本から生まれにくくなり、再び起業を志す人が増えないという、負の連鎖が続いていると言える。
Q. 日本が「起業立国」となるために、どのような変化が必要か?
日本の悪循環はあまりに根深いため、文化、制度、資金、人材といったあらゆる要素に対し、個別ではなく「一斉に」アプローチすることが重要である。例えば、株式報酬制度の柔軟化や規制緩和など、包括的な制度改革が求められる。
国全体で起業家を「ヒーロー」として称賛する文化を醸成すべきだ。かつてのフランスのように、「出る杭は打たれる」のではなく、成功した起業家をもっと盛り上げ、憧れの対象とすることで、若い世代の起業意欲を刺激する必要がある。
そして何よりも、国のトップによる強力なリーダーシップが不可欠である。インドやフランスなど、スタートアップエコシステムが成長した国々では、大統領クラスの要人が旗振り役を担い、国を挙げての推進体制が敷かれている。日本でも政府の明確な意思とコミットメントが求められるのだ。
Q. 大企業は日本の起業文化にどのような影響を与えているか?
日本の最大の問題の一つは、大企業が新卒一括採用で優秀な人材を大量に抱え込み、その人材の流動性を著しく阻害していることにある。これにより、外部との人材交流や新たな知見の流入が滞り、イノベーションが生まれにくい。
同じ会社で長く勤務した生え抜きだけで経営陣が構成されている場合、外部の視点や新しい発想が入りにくくなる。これではDX(デジタルトランスフォーメーション)のような根本的な変革は困難だと言える。
DeNAでは、優秀な社員が起業を志すことを奨励し、その挑戦を全面的に支援する「ギャラクシー経営」を実践している。子会社としてデライト・ベンチャーズを設立し、社員が出資先として羽ばたくケースを応援。会社を一つの大きな「星」ではなく、複数の「星々」で構成される「星座(ギャラクシー)」と捉え、全体としての価値最大化を目指す発想だ。
優秀な人材の流出は一見ネガティブに見えるが、実際にはDeNAにとって投資リターンや協業機会、そして新たな情報源となるため、結果的にプラスに働くという。
Q. 起業を目指す人材に必要な資質は何であり、失敗をどう捉えるべきか?
「将来起業するためにコンサルティングファームで働く」という学生は少なくないが、これは根本的に間違った考えである。評論家として他人のビジネスに助言することと、自らリスクを負い現場で事業を推進することは全くの別物だ。起業家は、自ら汗をかき走る「馬」であるべきであり、傍観者ではならない。
本当に起業家を目指すなら、自分で会社を立ち上げるか、設立間もないスタートアップの初期チームに参加するか、あるいは事業推進の大きな裁量を任せてくれる会社に身を置くべきである。何よりも「現場で実践すること」が最重要だ。
挑戦には失敗がつきものであるため、DeNAでは事業の失敗をマイナスと捉えない。むしろ、一度失敗を経験した起業家は、そのプロセスから貴重な学びを得ているため「プレミアム」な人材だと評価する。再挑戦への支援も積極的に行う。
また、世界で大きな成功を目指すならば、最初から市場を日本に限定せず、多様な国籍のメンバーでグローバルチームを組成するなど、国際的な視野を持つことが欠かせない。
Q. 日本の教育は起業家育成の観点からどうあるべきか?
日本の教育システムは「正解を言い当てる」ことを重視するあまり、個性を抑圧し、画一的な人材を育成する傾向がある。これは子供たちの自己肯定感を低下させ、多様な発想や自ら挑戦する精神を阻害する要因となっている。
世界で通用するリーダーやチームには多様な個性が不可欠である。各自の強みを活かし、苦手な点を補い合いながら、相乗効果を生み出す環境が求められる。
「答えを教え込む」という旧態依然とした教育はもはや時代遅れだ。主体的に問いを立て、探求し、独自の解決策を見つけ出す能力を育むことこそが、未来の起業家精神を培う上で最も重要である。
Q. 南場さん自身の起業や将来の展望について教えてください。
5年後には再び起業に挑戦したいという意欲がある。DeNAが急成長を遂げた一方で、「ちゃんとした商売を自分でやった感覚」が足りなかったため、次はスケールを追うのではなく、収益のメカニズムが強固な事業を自分の手で立ち上げたいと考えている。
もう一つの夢は「作家活動」だという。三軒茶屋あたりのバーでアルバイトをしながらサラリーマンの愚痴を聞き、それを面白おかしく脚色して「今日のクソバカ」のようなテーマで週刊誌に連載を持つ、そんな姿を想像する。
これらの願望の根底には、評論家や支援者として傍から見ているだけでなく、常に現場で自ら「馬」として走り、事業や創作の「プレイヤー」であり続けたいという、南場氏の揺るぎない精神がある。