欧州CL展望・パリSGの3連覇なるか?

欧州CLを徹底分析しました。出演者は木崎伸也氏、ミムラユウスケ氏、Leo the football氏、垣内一之氏。 <ゲスト> 木崎伸也|スポーツライター 1975年、東京都生まれ。2002年夏にオランダへ移住。翌2003年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材。スポーツ誌『Number』は...
欧州CL最前線の戦術トレンドと日本代表の転換期を徹底解剖する
欧州チャンピオンズリーグの戦局が熱を帯びる中、世界のサッカートレンドは目まぐるしい進化を遂げている。
最先端のポジショナルプレーやマンツーマン打破の秘策がピッチ上で繰り広げられる一方、日本代表や各国クラブを取り巻く環境も大きな転換期を迎えている。
中東情勢に揺れるアジアカップの開催問題から、欧州を席巻する新たな偽9番戦術、さらには小国ノルウェーの構造改革に至るまで、現代フットボールの潮流はビジネス組織論にも通じる示唆に富んでいる。
ピッチ内外で起きている地殻変動の本質を、戦術とマネジメントの両面から深掘りしていく。

Q. 中東情勢で揺れるアジアカップの開催危機と森保監督の去就はどうなるのか?
2027年1月にサウジアラビアで開催が予定されているアジアカップは、現地の治安情勢への不安から開催方針が大きく揺れ動いている。
代替開催地の選定は準備期間の短さや採算面の問題から現実的ではなく、事実上「通常開催」か「1年延期」の2択に絞られている状況だ。
もし強行開催された場合、渡航を警戒する選手側の意向を汲み、日本サッカー協会が出場辞退を選択肢に入れる可能性すら浮上している。
大会が2028年に延期された場合、最も大きな影響を受けるのが日本代表の指揮系統である。
森保一監督の契約期間は2027年3月までとなっており、契約延長を行わずに退任する公算が高い。
後任にはU-23日本代表を率いる大岩剛監督の昇格が有力視されているが、ロス五輪予選とスケジュールが重複するためスタッフ体制の再構築が不可欠となる。
森保監督自身は退任後も現場での指揮を望んでおり、欧州挑戦の足がかりとしてベルギーのシント=トロイデンやJリーグのクラブが次期就任先として取り沙汰されている。
Q. 欧州CLの最新トレンドである「逆リベロとしての偽9番」とは何なのか?
現代欧州フットボールにおいて強豪クラブを悩ませているのが、ピッチ全体で激しく人を捕まえに来る過激なマンツーマン守備の流行である。
この包囲網を打破するための最新解として台頭したのが、センターフォワードを中盤の底や最終ライン付近まで下ろす「逆リベロとしての偽9番」である。
かつてのリベロが最後尾から前線へ飛び出して数的優位を作ったのとは逆に、最前線のストライカーがボランチの脇まで降りてプラスワンの状況を生み出す手法だ。
相手センターバックは深追いして持ち場を離れるか受け渡すかの判断を迫られ、守備組織に致命的なズレと混乱が生じる。
バイエルンのハリー・ケインやバルセロナのハフィーニャがこの役割を高次元で体現しており、強豪はロングボールの不確実性を嫌い、地上戦で相手を剥がして支配率を高めている。
最前線が空けた広大なスペースには左右のウイングが鋭く飛び込んで得点を狙う形が確立されており、クラシカルなポストプレーヤーの枠を超えた柔軟性が攻撃の成否を握っている。
Q. ノルウェーサッカーが近年急速に力をつけ欧州トップ戦線へ台頭できた背景とは何か?

ノルウェー勢の躍進は単なる個のタレントの出現ではなく、2010年代の長期低迷期を機に断行された周到な構造改革の成果である。
最大の原動力となったのはスポーツベッティング収益を活用した大胆な資金循環モデルだ。
国営くじの売上の約6割をスポーツ振興に直接還元し、さらにファンが購入時に指定したお気に入りクラブへ売上の7%が直接入る仕組みを構築した。
この潤沢な資金をもとに寒冷地特有の制約を克服する人工芝ピッチを全国規模で整備し、通年で高度な練習環境を維持できるインフラを整えた。
さらに育成現場では「指導者を指導する巡回役」を協会が派遣し、戦術指導のみならず組織マネジメントの適正化を推進した。
早生まれと遅生まれの体格差を是正するため下半期生まれの選出比率を意図的に引き上げ、身体能力以上に「自律的に練習へ取り組みPDCAを回せるか」というパーソナリティを最重要評価基準に据えた。
仕組みによる育成の標準化と現場への徹底した投資が、ハーランドをはじめとする世界基準のタレントを次々と輩出する土壌を生み出している。
Q. 今季の欧州CLを制する本命クラブと上位勢が抱える致命的な死角はどこか?

今季の優勝戦線において攻撃の破壊力で際立つのがバルセロナである。
最前線にハフィーニャを据えることで2手目、3手目のプレッシング判断が劇的に改善し、アンカーのロドリが後方から追い込み漁のように守備網を統率することで攻守の連動性が飛躍した。
しかし、最終ライン4枚の対人守備力には脆さが残っており、ハイプレスをロングボールで頭越しに回避された際、強力なウインガーとの1対1に晒されるリスクを内包している。
攻守の安定感で最も計算が立つ本命候補にはパリ・サンジェルマンとアーセナルが挙げられる。
両チームともに最終ラインの個の強度が極めて高く、自陣に引き込まれても崩れない計算が立つ。
一方、アーセナルは左ウイングの打開力不足やセットプレー得点率の低下、パリは中盤の過重労働という固有の懸念を抱える。
日程面で優位に立ち強烈な遠距離シュート力を持つバイエルンや、ハーランドの得点パターンを多様化させつつも背後の広大なスペースに脆さを抱えるマンチェスター・シティが追随する構図となっている。
Q. 欧州フットボール界で存在感を放つ新世代の知将と注目選手は誰か?

既存のメガクラブを脅かす新興勢力の中で、最も注目を集めているのがコモを率いるセスク・ファブレガス監督だ。
ヴェンゲル仕込みの攻撃思想とコンテから学んだ緻密なディテールへのこだわりを融合させ、「スペース・タイミング・姿勢」の3原則を選手へ落とし込んでいる。
試合前日には翌日の戦術プランをクラブ経営陣に提出してピッチ内外での共通認識を醸成するなど、組織の一体感を高めるマネジメント手法も極めて近代的だ。
一方、バイエルンで驚異的なスタッツを叩き出しているミカエル・オリーセは、ピッチ上の異彩として際立つ。
多彩なシュートとラストパスの引き出しを併せ持ち、相手守備陣に対処の的を絞らせない。
金銭や広告露出に執着せず、廃盤になった特定のスパイクを自ら買い求めて履き続けるなど道具とプレー感覚への偏執的なこだわりを持ち、現代の商業主義フットボールにおいて特異な輝きを放っている。
Q. 日本代表がアジアカップで見据える「4バック回帰」の狙いと構造的課題は何か?
日本代表がアジアカップを見据えて4バックへの回帰を模索している背景には、世界のトップトレンドに対する主力選手たちからの強い要望がある。
ワールドカップ上位進出国の多くが4バックを採用しており、ウイングバックの上下動で体力を浪費するよりも、アジアレベルであれば前線に戦力を集中させて押し込みたいという現場の思惑が一致した形だ。
さらに、4バックは前線からのハイプレスを連動させてハメ込みやすいという構造上のメリットも兼ね備えている。
しかし、4バック導入には専任サイドバックの人材不足という深刻なボトルネックが横たわっている。
左右のバランスを取れる即戦力の発掘と定着が急務であり、初期配置の変更以上に「奪いどころ」のイメージをピッチ内で共有できるかが問われる。
また、4バック化によって復活するトップ下の座を巡り、欧州の所属クラブで結果を残す選手と代表での求心力を持つ主力のどちらを軸に据えるか、チーム編成の舵取りが今後の勝敗を左右することになる。