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福岡市長・高島宗一郎を直撃。退任後に何をするのか?
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2026年10月9日

16年間、福岡市長として人口や税収を大きく成長させた高島宗一郎氏。なぜ福岡を地方最強都市にできたのか?なぜ退任を決めたのか?これから何をするのか?60分直撃インタビューした。 <ゲスト> 高島宗一郎 福岡市長。現在4期目。1997年に九州朝日放送へ入社し、アナウンサーとして朝の情報番組のキャスター...
福岡を「最強都市」に変えた高島流リーダーシップと構造改革の本質
人口増加率や地価上昇率で全国屈指の勢いを見せ、日本で最も元気な地方都市として注目を集め続けてきた福岡市。
その変革を中心となって牽引してきた高島宗一郎市長が、16年間にわたる市政運営にピリオドを打つ決断を下した。
「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」といった大規模再開発を成功させ、税収を1.6倍に伸ばした手腕はまさに敏腕CEOそのものである。
なぜ圧倒的な支持を集めながらも自ら退任を選び、次の候補者の応援すら控えるのか。
日本全体の成長を阻む構造的なボトルネックと、地方から日本を変えるための具体策について、高島市長の実践知を紐解いていく。

Q. 圧倒的な支持を集めながらも4期で退任を決断した背景にはどのような哲学があるのか?
退任を決断した最大の要因は、市長選の告示直前になっても対抗馬の噂すら一切立たないという極端な無風状態にあった。
信任を得ている証左とも解釈できるが、多様な都市ビジョンが提示されず市民の選択肢が失われる事態は健全な自治とは言えない。
急速な都市開発に対する市民の戸惑いや寂しさも含め、街の針路を市民自身が選び直す機会を奪ってはならないという危機感があった。
自ら一歩引いて主権を市民にお返しする、いわば「大政奉還」を行うことこそが首長の責務であると考えた。
特定の候補者を後継指名して選挙運動を支援することも明確に否定している。
前首長が全面支援して当選した場合、市民は自らの1票で街を変えたという実感を持ちにくくなる。
たとえ自身の政策から一部が修正されたり後退したりするリスクがあっても、主権者である市民自身が選び取ったという納得感こそが街を前進させる原動力となる。
Q. 長期政権が陥りがちな「権力の罠」をどのように自覚し自制してきたのか?

就任当初は毎日のように厳しい批判に晒され、目の前の課題を処理するだけで必死な状況が続いた。
しかし選挙に勝ち続け仲間や実績が増えるにつれ、周囲から心地よい言葉ばかりが届く環境へと変化していった。
3期目の後半頃から、挨拶の冒頭で配慮すべき関係者の名前を長々と挙げるなど、しがらみを過剰に気にする自分に気づいた。
かつて打破しようと志した「既得権のモンスター」に、知らず知らずのうちに自分自身が変貌しているのではないかという葛藤が生じた。
その変化を自覚するきっかけとなったのが、プライベートで購入する絵画の変遷である。
気づけば権威や権力への疑問を投げかけるような作品や、自分を厳しく戒めるテーマのアートばかりを手元に集めるようになっていた。
権力の中枢に長く身を置くリーダーほど、自身を客観視し耳の痛い現実を突きつける外部の視点を意識的に確保し続けなければならない。
Q. 地方議会が抱える構造的な欠陥と監視機能の不全を打破するには何が必要なのか?
地方議会における不祥事の根本原因は個人の資質ではなく、権力に対する「監視の目」が決定的に欠落している構造にある。
知事や市長といった首長は常に議会から厳しい追及を受ける立場にあるが、議会そのものを外部から常時チェックする公的機関は存在しない。
会派を超えた馴れ合いが常態化すると、巨額の公費支出や不適切な行動であっても内部で自浄作用が働くことは期待できない。
本来その監視役を担うべき既存マスメディアも、議会の実態に対して十分な調査報道を行ってこなかった側面がある。
近年ではネットメディアやYouTuberが独自の告発報道を展開し、政治への関心を喚起する新たな監視役として台頭しつつある。
ネット特有の切り込み力と既存メディアの緻密な取材力という双方の長所を組み合わせ、権力に対する健全な緊張関係を再構築することが不可欠である。
Q. 日本の産業や経済の成長を阻んでいる真の元凶とは何なのか?

国家戦略特区の議論に長年コミットしてきた経験から導き出された結論は、成長の障害は国会が作る法律そのものではないという事実である。
真のボトルネックは、各省庁が定めている「政省令」という細かな運用ルールにある。
例えば点検業務において「打音検査を行うこと」や、施設の連絡設備として「固定電話を設置すること」といった具体的な作業手順まで政省令で規定されている。
IoTセンサーやドローン、AIなどの先端テクノロジーを導入すれば、より安価で高精度な管理が可能な分野でも旧態依然の手順が強制されている。
安全確保という大義名分を掲げながら、実際には新規参入を排除し既得権益を守る参入障壁として機能している規制が極めて多い。
危険な事項のみを禁止するネガティブリスト形式へと法令の設計思想を根本から改めない限り、日本全体でのイノベーション創出は望めない。
Q. 国会議員よりも地方都市の首長の方が抜本的な改革を推進しやすいのはなぜか?
この優位性は、地方自治体と国のガバナンス構造の違いに直結している。
政党に所属する国会議員や大臣は、選挙支援を受ける業界団体への配慮から既存の規制にメスを入れることが極めて難しい。
これに対して首長は市民から直接選挙で選出されるため、政党や特定団体の利害関係に縛られず生活者の利益を優先した判断を下すことができる。
とりわけ政令指定都市は、市民に直接サービスを届ける「2C」の現場感覚と、行政ルールを動かす「2G」の制度権限の双方を併せ持っている。
現場を持たない中間自治体である県と比較しても、政令市は社会実験を迅速に実行できる環境が整っている。
意欲ある政令市が先陣を切って規制緩和モデルを実証し、その成功事例を全国の自治体へ横展開していく手法こそが日本を変革する最も現実的なアプローチである。
Q. 広域行政の効率化に向けた「疑似道州制」の実装と自治体の人材不足対策とはどのようなものか?

新幹線や高速道路網の発展により移動時間が劇的に短縮された現代において、従来の県単位の区分けは実態に合わなくなっている。
各県が小規模な空港や港湾を乱立させる投資の無駄を排除し、より広域な道州単位でインフラや都市戦略を最適化していく視点が不可欠である。
国への陳情による法改正を待つのではなく、九州市長会などを通じて現場レベルから実務連携を先行させる「疑似道州制」の構築を進めてきた。
この広域連携が最も切実に求められているのが、激甚化する災害対応の現場である。
全国の自治体の約4割において土木職や建築職の専門公務員がゼロという危機的な人材不足に直面している。
被災しても工事の発注や監督すら行えない自治体を支援するため、平時から部隊を事前マッチングし即座に派遣できるシェアリング体制を確立している。
各都市が切磋琢磨する競争分野と、広域で支え合う協調分野を明確に仕分けるガバナンス改革が急務である。
Q. 福岡市を人口増と税収増の好循環へ導いた成長戦略の神髄とは何か?
都市の成長を牽引する最大のエンジンは、未来に対する「ワクワク感」を提示できるかどうかにかかっている。
批判を恐れて設備投資を縮小する守りの姿勢を排し、地下鉄七隈線の博多駅延伸など大胆なインフラ投資を断行した。
街が前進し続ける明確なビジョンを示すことで、民間企業が先を争って投資を決断するポジティブな連鎖を生み出すことに成功した。
民間活力によって引き上げられた地価は、基礎自治体の最も安定的で主要な財源である固定資産税の大幅な増収をもたらした。
福岡市はこの税収増を原資として、子ども・教育関連予算を2.5倍、福祉予算を2.4倍に拡充させる「都市の成長と生活の質の好循環」を具現化させた。
ビル建て替え事業の本質も単なるハード更新ではなく、高付加価値な企業を誘致して都市全体の所得水準を引き上げるためのソフトのアップデートである。
激しい批判や既得権の抵抗を乗り越えてこれらの改革を断行できた背景には、選挙における市民からの圧倒的な直接の信任という強固な基盤があった。