
転職か残留かの判断軸
転職か残留かで迷う人が知るべき判断軸とキャリア攻略の原則
転職を希望しながらも、一歩を踏み出せずに現状維持を選んでしまうビジネスパーソンは少なくない。
転職すべきか現職に残留すべきかという二者択一自体には絶対的な正解が存在せず、本質的な見極め基準を持たない限り迷いは解消されない。
キャリアの成否を分ける決定打は、年収の多寡や表面的な好き嫌いではなく、身を置く環境と人間関係の質にある。
本稿では、数多くのヒット作を手掛けてきた作家・プロデューサーの長倉顕太氏の視点に基づき、20代から30代が後悔しない進路を選ぶための判断軸を解き明かす。

Q. 転職したいと考えている人の多くが実際に行動を起こせない根本的な理由は何なのか?
統計上、転職を希望する人が1000万人を超える一方で、実際に転職へ踏み切る人は約3割にとどまっている。
大半の人が行動を起こせない背景には、人間の本能的な変化に対する恐怖と、無意識による引き留め願望が存在する。
人生を好転させていく人間は、重大な決断を下す際に他人に相談せず、自らの意志で決定を下す傾向が強い。
一方で、同僚や上司に進路を相談してしまう行為の裏には、変化を恐れて引き留めてほしいという心理が潜んでいる。
同じ組織にいる同僚に転職の相談を持ちかければ、相手は現状の自分たちを肯定するためにも引き留める行動に出るのが自然である。
つまり、無意識のうちに自分の挑戦を止めてくれる相手を選んで相談を持ちかけ、留まる口実を作っているに過ぎない。
現状維持の罠から抜け出して前進するためには、他人に意見を求めて安心感を得ようとする姿勢を断ち切る必要がある。
相談を持ちかけるのであれば、無条件に背中を押してくれる一部のメンターだけに限定し、最後は自己責任で退路を断つ覚悟が不可欠である。
Q. 転職すべきか現職に残留すべきかを判断する最も決定的な基準はどこにあるのか?

転職するか残留するかという選択において、最も重視すべき基準は直属の上司が誰であるかという一点に尽きる。
若手時代に裁量を与え、他部署や組織の理不尽な反発から盾となって守ってくれる上司に出会えるかどうかが、キャリアの命運を左右する。
悪質なパワハラ上司の下にいれば心身を摩耗させて再起不能に陥る危険がある一方、良質な指導者の下では能力が飛躍的に開花する。
生涯の中で心から信用できる大人に1人でも出会えるかどうかが、個人の人生全体を大きく変える決定打となる。
尊敬に値する上司が現職にいるのであれば、無理に転職を急ぐ必要はなく、その環境に留まって学び尽くす価値は十分にある。
しかし、現在の上司に恵まれていないと感じるならば、躊躇なく環境を変える決断を下すべきである。
また、社内の固定された人間としか関わらない内勤業務では、優れた指導者やメンターに偶然出会える確率が極めて低い。
社外の多種多様な関係者と協働するクリエイティブ職や営業職など、外部接点が多い環境を選ぶことこそが、良質な出会いを引き寄せる鍵となる。
Q. 20代や30代前半のキャリアにおいて年収を最優先の判断基準にしてはいけない理由とは何か?

人生を構築する資産には時間、能力、人間関係、お金という4つの明確な階層が存在する。
人生を攻略するためには、まず時間を投下して能力を磨き、その能力で他者に貢献して人間関係を築き、最後に対価としてお金を得るという順番を遵守しなければならない。
この法則を無視して若手の段階からお金を先に取りに行こうとすると、甘い話に惑わされて詐欺に遭うなど手痛い失敗を招くことになる。
20代から30代前半の時期は、目先の年収の多寡ではなく、どんな能力が身につき誰と出会えるかを最優先すべきである。
有益な一次情報や好機は、情に報いると書くように、強固な信頼関係が存在する場所にしか流れてこない。
信頼できる人間関係がない状態で高収入のポストを狙っても、長期的なキャリアの基盤にはなり得ない。
また、自分の過去の狭い価値観に基づく好き嫌いだけで仕事を選ぶ姿勢も成長を阻害する。
食わず嫌いしていた分野にあえて飛び込み、未知の経験を積み重ねる過程でこそ、将来にわたって大きな価値を生む本物の能力が培われる。
Q. 人生の4大資産を正しく攻略しキャリアを飛躍させるにはどのような時間投資が必要なのか?
人間が自らの意志で直接コントロールできる唯一無二の経営資源は、今この瞬間の時間だけである。
20代のうちは多様な経験に時間を惜しみなく注ぎ込み、自分が心底没頭できる対象や尊敬できる上司を泥臭く探索すべきである。
過去の放蕩や雑多な経験であっても、熱量を持って向き合った時間は後に独自の魅力や人間的厚みへと昇華される。
もし現在の仕事が自分に向いているか迷いが生じた場合は、最長1年という明確な撤退期限をあらかじめ設定するのが賢明である。
石の上にも3年という旧来の価値観に縛られて漫然と過ごすには、若手時代の時間はあまりにも貴重である。
1年と期限を定めた上で、この分野で自分以上に考えている人間はいないと言い切れる狂気的な熱量を持って365日仕事に没頭してみる姿勢が求められる。
徹底的な行動量を投下して圧倒的な成果を残せば、その業界における実績と人間関係は後から自然とついてくる。
さらに金銭的見返りを求めない社会貢献活動などを意識的に組み込むことで、利害を超えた強固な人脈が築かれ、キャリアの持続性が高まる。
Q. 意志の強さに頼るのではなく環境の力を使って行動と人生を変えるにはどうすればよいのか?

人間の行動を決定づける本質的な順序は、環境から感情が生じ、その感情が行動を引き起こすという流れである。
多くの人が自らの意志やメンタルを直接操作して行動を変えようとするが、その試みは大半が挫折に終わる。
気温が上がれば自然と涼しい場所へ移動するように、人間は身を置く物理的な環境に応じて行動が自動的に規定される生き物である。
自らの行動や成果を変えたいのであれば、意志の力に頼るのをやめ、付き合う人間や働く環境そのものを強制的に移行させるべきである。
転職先の人間関係や社風が本当に自分に合うかどうかは、入社してみるまで誰にも予測できないくじ引きのようなものである。
人生は本質的に不確実なギャンブルであると割り切り、完璧な安全を求めて立ち止まる悪循環を断たねばならない。
たとえ不遇な環境や面倒なトラブルに直面したとしても、すべてを自身の経験値として蓄積し、次のアウトプットの糧へと変換する覚悟が重要である。
目先の損得勘定を捨て、上司をはじめとする良質な人間関係を軸に環境を選び取ることこそが、長期的な成功を掴み取る最短ルートである。