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【エスピノーサCEOに聞く】日産は本当に復活できるのか?(字幕)
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2026年10月5日

イヴァン・エスピノーサ氏が日産のCEOに就任して1年半が経過した。再建計画はどこまで進んでいるのか?日米中の各市場で競合に勝てるのか?自動運転のパイオニアになれるのか?経済ジャーナリストの井上久男氏と共に聞いた。 <ゲスト> 井上久男|ジャーナリスト 九州大卒。大手電機メーカーを経て、朝日新聞社に...
日産は再成長できるのか。低PBR脱却とフリート依存脱却、ホンダ協業の真意
日産自動車が8四半期ぶりの最終黒字を確保したものの、株式市場からの評価は依然として厳しい状態が続いている。
株価純資産倍率(PBR)は0.2倍台に沈み、市場は日産の構造改革が真の反転につながるのかを懐疑的な視線で見つめている。
中国新興EV勢の猛追や米国市場での販売構造など、自動車業界全体が激変期を迎える中、かつての名門はいかにして生き残りを図るのか。
執行体制のスリム化から開発期間の半減、北米工場の稼働率改善に向けたホンダとの協業模索まで、日産が直面する課題と再建への青写真を解き明かす。


Q. 8四半期ぶりの最終黒字を達成しながらも市場評価が低迷し続けている根本的な要因はどこにあるのか?
日産は第1四半期決算で38億円の最終利益を計上し、8四半期ぶりに黒字へ浮上した。
しかし、この利益水準はグローバル自動車メーカーとして極めて低く、持続的な回復軌道に乗ったと判断するには程遠い。
PBRが0.2倍台にとどまる現実は、自動車産業全体の構造転換に対する不安に加え、日産特有の収益回復力への不信感を映し出している。
市場が真に求めているのは、営業利益率7%の達成と安定的かつ潤沢なフリーキャッシュフローの創出である。
固定費削減などの対症療法的なリストラにとどまらず、稼ぐ力を一貫して実証できなければ株価の抜本的反転は望めない。
さらに、稼ぎ頭であった中国市場の急速な冷え込みが全社業績の下押し圧力となっており、外的リスクを跳ね返す強靭な事業基盤の提示が不可欠となっている。
Q. 激変する世界市場に対応するため経営体制のスリム化と商品開発スピードをどう刷新したのか?
市場環境の激変に追従するため、日産は意思決定プロセスの劇的な迅速化へと舵を切った。
かつて執行役員を含めて55人規模に肥大化していた執行体制をわずか12人にまで絞り込み、官僚的な手続きを排除した。
これにより、経営課題に対する意思決定と現場でのアクションをタイムラグなく直結させるガバナンス体制を構築した。
この組織改革の成果は、商品開発サイクルの大幅な短縮という目に見える形で現れ始めている。
従来の開発工程を根本から見直すことで、日本市場においては12か月間で7車種もの新車や改良モデルを矢継ぎ早に投入する体制を整えた。
新型セレナなどを筆頭に市場からの初期反応は堅調であり、開発スピードの加速が国内市場での信頼回復を支える原動力となっている。

Q. 地場EV勢が台頭する中国市場で競争力を取り戻すための打開策とは何か?
かつて高い収益を誇った中国事業は、地場系新興メーカーによる低価格EVの乱立と急速な新陳代謝によって深刻な苦戦を強いられている。
毎月のように新興ブランドや新技術が登場する過密市場において、日本本社の決裁を仰ぐ旧来の手法では勝負にならない。
生き残りのための最大の条件は、現地責任者への大幅な権限移譲を進め、中国独自の開発スピードに同期することである。
具体的には、現地パートナーである東風汽車との連携を深め、現地の需要に即した新エネルギー車を迅速に投入する体制を急ピッチで進めている。
単なる消耗戦となる価格競争に巻き込まれるのではなく、日産が長年培ってきた品質基準、安全性、そして耐久性という強みを再定義する戦略をとる。
5000万人規模の既存保有顧客基盤を守り抜きながら、安心感という差別化要素を打ち出すことが中国市場反転の生命線となる。
Q. 北米市場で長年繰り返されてきたフリート販売依存という負の循環をいかにして断ち切るのか?
日産の経営史において、北米市場での販売不振は幾度となく経営危機の引き金となってきた。
レンタカー会社や法人向けに大量値引きで卸すフリート販売への過度な依存は、表面的な台数を稼ぐ一方で中古車相場の暴落とブランド価値の毀損を招く。
小売を強化すると宣言しながら結局は稼働率維持のためにフリートへ逃げるという負のスパイラルを、今度こそ断ち切らなければならない。
新体制が打ち出した方針は、台数至上主義を捨て去り、エンドユーザーが自発的に選ぶ一般小売を中心とした自律的成長への転換である。
販売報奨金で無理やり押し込む手法を廃し、製品そのものの魅力と適正な価格設定によって1台あたりの利益率を最大化するモデルを目指す。
数字上の規模を追う誘惑を断ち切り、健全な小売比率を長期的に維持できるかどうかが北米事業の構造転換を決定づける。
Q. 北米工場の深刻な稼働率低迷に対しホンダとの協業を含めどのような具体策を描いているのか?
小売中心の戦略へ舵を切った結果、直面しているのが北米における生産能力の余剰問題である。
過剰な設備を抱えたままでは固定費負担が重くのしかかり、工場稼働率の低下が収益性を直接圧迫する。
日産はこの課題を解決するため、自社製インフィニティなどの高付加価値モデル投入に加え、他社とのアライアンスを柔軟に活用する方針を打ち出した。
その最大の選択肢として浮上しているのが、戦略的協業を結ぶホンダとの生産受託連携である。
ホンダは北米で堅調な需要を抱えながら現地生産能力の不足に直面しており、日産の余剰設備でホンダ車を混流生産することは双方にとって利害が一致する。
過去のライバル意識に囚われず、ウィンウィンの関係で工場の操業度を引き上げる現実的な解決策を日産経営陣は排除していない。

Q. かつての拡大路線の歪みを清算し国内生産拠点の再編をどう進めているのか?
カルロス・ゴーン体制下で掲げられた世界販売1000万台構想は、新興国を中心とする世界各地に過大な生産設備をばら撒く結果となった。
同一の部品やプラットフォームを世界各地の工場へ無秩序に分散配備したことで、製造ラインの複雑性と管理コストは限界に達していた。
現在の日産が進めるのは、世界一の規模を追う虚飾を捨て、拠点ごとの役割を明確化して複雑性を極限まで削ぎ落とすモノづくりの原点回帰である。
国内では、エルグランドなどの高級ミニバン生産を栃木工場へ集約移管するなど、車種特性に応じた生産配置の見直しを断行している。
さらに、将来的に米国市場へ中国製EVが進出してくる地政学リスクを視野に入れ、国内生産の一定割合を輸出へ振り向ける仕組みを整えた。
国内販売と輸出のバランスを最適化することは、激しい為替変動から収益を守る強固なヘッジとして機能する。