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トレンド分析:オニツカタイガーはなぜ世界で人気なのか?
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2026年9月21日

訪日客に人気のオニツカタイガー。なぜこれほどまでに世界の人々を惹きつけ、熱狂的な支持を集めているのか?アシックスの奇跡的なV字回復を牽引するオニツカタイガー躍進の深層と、日本企業が世界市場で勝つための逆輸入ブランド戦略を経済ジャーナリスト財部誠一氏が徹底分析。 <ゲスト> 財部誠一|経済ジャーナ...
オニツカタイガー世界席巻の深層:営業利益率40%に迫る高収益ブランドの再生劇
街を歩けば、オニツカタイガーの黒い袋を手にした外国人観光客の姿が至る所で目に入る。
かつて学校指定の校内履きや懐かしい運動靴として認知されていたこのブランドは、今や世界中のファッショニスタを虜にするグローバルアイコンへと驚異的な変貌を遂げた。
なぜこれほどまでに世界の人々を惹きつけ、熱狂的な支持を集めているのか。
その背景には、単なる一時的なレトロブームにとどまらない、緻密なブランド戦略と日本固有のものづくりへの再評価が存在する。
本稿では、アシックスの奇跡的なV字回復を牽引するオニツカタイガーの躍進の深層と、日本企業が世界市場で勝つための本質的な論理を解き明かす。

Q. なぜ今、オニツカタイガーが外国人観光客を中心に爆発的な人気を博しているのか?
オニツカタイガーの世界的な熱狂は、アニメなどに続く日本固有の文化的価値やものづくりへの再評価という、巨大なグローバルムーブメントの象徴である。
多くの外国人観光客にとって、このシューズは単なる歩行のための道具ではなく、洗練されたデザインと独自の歴史的ストーリーを纏う特別なステータスシンボルとなっている。
日本人は自らの魅力や強みを直接アピールすることに不得手な傾向があるが、オニツカタイガーは海外でまず評価を確立し、それを国内へ逆輸入する形で巨大な潮流を作り上げた。
国内市場の縮小を前に多くの企業が内向きな事業展開に終始する中、オニツカタイガーは全世界を巻き込みながら、その中核に日本発の価値を据え続けている。
日本の製造業が得意とする精緻なディテールとファッションカルチャーの融合こそが、世界中の消費者の心を捉えて離さない最大の原動力である。

Q. 一度は姿を消したオニツカタイガーブランドは、いかにして欧州から奇跡の復活を遂げたのか?
オニツカタイガーの復活劇の根底には、創業者の卓越した先見の明が存在していた。
1977年に他2社と対等合併してアシックスが誕生した際、社内融和と総合スポーツメーカーへの転換を期して、最も知名度の高かったオニツカブランドは一度完全に封印された。
しかし創業者の鬼塚喜八郎は、将来再びこのブランドが必要になる日が訪れることを見越し、多額の費用を支払いながら10年ごとに国際商標登録を更新し続けた。
転機が訪れたのは2001年の欧州である。
ミレニアム期に欧州で巻き起こったレトロブームに際し、現地法人のスタッフがスポーツ用品展示会ではなくイタリアの男性ファッション見本市にオニツカタイガーを出展した。
薄底のクラシックなシルエットがファッション関係者に絶賛され、さらに2003年の映画『キル・ビル』で主人公が着用したことで世界的なブレイクへ発展した。
スポーツ用品の枠から脱却し、純然たるファッション領域へと舵を切った判断が、奇跡の再生を決定づけたのである。

Q. 営業利益率40%に迫る驚異的な高収益を生み出すビジネス構造の秘密とは何か?
アシックスが史上最高益を更新し続け、連結売上高1兆円規模へと躍進する最大の推進力となっているのが、オニツカタイガーの並外れた収益性である。
一般的な製造業の売上高営業利益率が5%前後に留まり、製造小売の優等生とされる企業でも十数%である中、オニツカタイガー単体の営業利益率は約40%という驚異的な水準に達している。
この超高収益体質を可能にしているのは、直営店展開による緻密なブランドコントロールと、インバウンド需要を取り込んだプレミアム価格戦略である。
安売り競争に陥ることなく、独自の世界観を体感できる店舗体験を提供することで、圧倒的な粗利益率を維持し続けている。
米国が覇権を握る金融やデジタル分野を盲目的に模倣するのではなく、日本人が本来強みを持つ製造業のすり合わせ技術とブランドの付加価値化を徹底したことが、この唯一無二の利益構造を結実させた。

Q. プロ経営者・廣田氏が断行したスポーツとファッションの完全分離と組織改革の真意とは何か?
三菱商事出身のプロ経営者である廣田康人氏の参画により、アシックスの構造改革は一気に加速した。
廣田氏が着手した最大の変革は、従来のスポーツ用品業界に根深く存在した4年に1度のオリンピック周期に縛られる開発体制を打破したことである。
箱根駅伝で着用率がゼロになるという壊滅的な屈辱を味わった際も、若手開発陣を抜擢して迅速に厚底レーシングシューズを開発させ、競技分野での復権を果たした。
さらに重要な決断が、オニツカタイガーの分社化によるスポーツギアとファッションの完全な組織的分離である。
機能性を極限まで追求する競技用具と、感性やライフスタイルを提示するファッションでは、求められる事業論理や速度感が根本的に異なる。
両者の混同を防ぎ、ファッションブランドとしての独自性を極限まで高めるため、東京・新宿には単なる靴売り場を超えた巨大な旗艦店を開設した。
そこではシューズのみならず雪駄や香水、アパレルまでを網羅し、日本文化の洗練された美意識を総合的に体験できる情報発信基地としての役割を担わせている。
Q. 創業者のきりもみ経営から世界一を狙う頂上作戦へ、ブランドが目指す未来とは何か?
オニツカの創業精神は、太平洋戦争の焦土から立ち上がり、国と社会の復興を誓った創業世代の強烈な気概に根ざしている。
持たざる弱者として一点集中突破を図った創業期のニッチ戦略「きりもみ経営」は、現代において世界最高峰の市場を正面から制覇する「頂上作戦(C Project)」へと昇華された。

現在、ブランドの新たな象徴として、創業者ゆかりの地である鳥取にオニツカタイガー専用の製造ラインが新設されている。
漢字で「日本製」と刻まれたプロダクトは、妥協なき品質の証として世界の富裕層やスニーカーファンから絶大な信頼を集めている。
特定のカリスマ経営者の手腕に依存する段階を脱し、分社化によって確立された自律的組織のもと、真のグローバルプレミアムブランドとして自走する基盤が整った。
日本文化の再評価という歴史的な追い風を捉え、独自の美意識を世界へ発信し続けるオニツカタイガーの歩みは、成熟した日本経済が再び世界へ雄飛するための確かな道標を示している。