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激動 証券業界の最新分析
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2026年9月12日

株高もあり業績好調の証券業界だが、競争は激しさを増している。勝ち抜くのはどの会社か。 ・生き残るための事業戦略は? ・証券業は消滅する? ・外資系と国内大手、優位なのは? 『野村證券 消滅』著者の森本紀行氏、日本資産運用基盤社長の大原啓一氏による徹底解説。 <ゲスト> 森本紀行|HCアセットマネジ...
証券業界大再編時代の到来:手数料ゼロの先にある生き残り戦略とは?
史上最高値を更新した日経平均株価を背景に、「貯蓄から投資へ」の流れが加速し、日本の金融市場は大きな変革期を迎えている。
一見すると好景気に沸く証券業界であるが、その内部ではかつてない構造的変化が進行しており、「証券」という言葉自体の意味が再定義される時代に突入していると専門家は指摘する。
本記事では、この激変する証券業界の現状と未来、そしてそこで働く個人に求められる視点について、多角的に考察する。


Q. 日本の証券業界で現在どのような変革が起きているか?
現在の証券業界における変化は、過去のバブル崩壊やシステム変化といった表面的なものとは異なる。
HCアセットマネジメント社長の森本典之氏は、「野村證券の『証券』が消滅する」と警鐘を鳴らす。
これは野村がなくなることを指すのではなく、証券サービスという概念自体が他の金融形態やサービスに吸収・統合され、その本質的な役割が大きく変化するという指摘である。
日本の戦後経済において、このような根本的なビジネスモデルの変革は初めての事態であり、業界全体が「未だかつてない変化の過程」にあると専門家は見ている。
Q. 証券業界の収益構造はどのように変化したか?

証券業界の市場規模は回復し6.9兆円に達しているが、その中身は大きく変わった。
かつて収益の大部分を占めていた株の売買手数料収入は、現在全体の12%にも満たない割合である。
この手数料収入の激減はネット証券の登場と手数料無料化の流れによって引き起こされた構造的な変化に他ならない。
現在の主要な収益源は、投資信託の販売手数料や運用報酬、M&Aアドバイザリー業務の手数料など、より付加価値の高いサービスへとシフトしているのだ。
このため、足元の株高が即座に持続可能な収益増に繋がるとは限らず、業界は新たなビジネスモデルの構築を迫られている。
Q. 現在の主要プレイヤーとその強み、課題は何か?
証券業界のプレイヤーは主に外資系、メガバンク系、独立系大手、ネット系に分類される。
外資系はグローバルな市場アクセスやドル建て資金調達、自己勘定取引といった法人取引において圧倒的な強みを持つ。
メガバンク系は、銀行が持つ強固な顧客基盤(個人預金や法人融資)とのシナジーを活かし、広範な金融サービスを提供する。
ネット系証券は、手数料無料化によって圧倒的な顧客数(口座数)を獲得したが、顧客をどのようにマネタイズするかが課題である。
大手独立系、特に野村證券や大和証券は、多様な事業を持つがゆえに個別の突出した強みが見えにくく、変革期における競争優位性の再構築が喫緊の課題となっている。
Q. 大手独立系証券、特に野村證券が直面する「消滅」の危機とは具体的に何を指すのか?
野村證券は依然として営業収益で業界をリードしているが、その株価は好業績に比して低迷している。
これは市場が、野村の収益が持続可能なビジネスモデル構築への戦略的な再投資に結びついていないと評価している証拠である。
単に儲かるところへ経営資源を集中させるだけでは、目の前の利益は上がるものの、長期的な視点での事業基盤の構築には繋がらない。
森本氏は、「預金から投資信託、国債といった資金の流れを機能的に繋ぐ仕組みを整備するなど、顧客の利便性を高める戦略的努力を怠ってきた」と指摘する。
また、野村ホールディングスが有価証券を「売る」証券部門と、投資家の代わりに「買う」アセットマネジメント部門の両方を抱える構造は、グローバルで見ると極めて少数派である。
この「売りと買い」の二律背反を抱えたビジネスモデルが、劇的な経営判断を遅らせる要因になっている可能性も指摘される。
Q. インターネット証券の将来の方向性はどうなるのか?

インターネット証券による顧客獲得競争の時代は終焉した。
今は、顧客の数を「いかにマネタイズするか」のフェーズへと移行している。
その結果、ネット証券は通信キャリアやEコマース、流通業といった金融以外の巨大なインフラ企業との連携を模索している。
楽天証券とみずほ、マネックス証券とドコモのような結合はその典型例である。
SBI証券は新生銀行を買収し、「ハイブリッド預金」のような形で銀行預金と証券決済口座を結合させ、資金の滞留を促すことで収益を上げる複雑な構造を設計した。
これは、手数料ゼロでも他の経済圏から収益を生み出す多角的なビジネスモデルなしには生き残れないことを意味している。
Q. 「証券業界」という概念が消滅すると言われる背景は何なのか?
今後は銀行や証券といった金融機関の伝統的な垣根は事実上消滅し、より広範な「総合金融サービス」の一部として、各機能が提供されるようになるだろう。
例えば、メガバンクが傘下の証券会社を持つことで、融資から社債引受へといった顧客の資金調達方法が銀行グループ内で円滑に移行できるようになる。
また、JR東日本がSuicaで預かる資金を活かすために銀行事業に参入したように、日常生活における決済や情報プラットフォームに紐づいた金融サービスが台頭している。
単品の金融ビジネスは存続が困難になり、他産業と結合した巨大な金融・生活インフラサービスグループの一部となるか、ニッチな専門性で高収益を上げるかという二極化が進む見込みだ。
松井証券が金融情報メディアとして成長しているのも、この変革期における生存戦略の一環とみることができる。
Q. 変革期の証券業界で、働く個人は何に焦点を当てるべきか?
「証券業界」という言葉が形骸化する中、企業名や業界のイメージに囚われすぎることなく、自身のキャリアを構築する必要がある。
重要なのは、資本市場において「何の仕事をするか」という点である。
具体的には、有価証券の引受(売り)や投資運用(買い)といった資本市場の本質的な機能における専門性を磨くことが、個人の人材価値を高める道となる。
従来の目標達成型の「根性」よりも、高度な「クリエイティビティ」や戦略的なビジネスモデル構築への貢献が求められる時代へとシフトしているのだ。
日系企業における安定性を保ちつつも、グローバルな視点と変化に対応する能力を持つことが、これからの金融業界で生き抜く鍵となるだろう。